日工組(筒井公久理事長)は4月1日から遊技機関連のTVCM解禁に舵を切った。2011年の東日本大震災後から継続していた自主規制を10年振りに終了することになる。その背景には何があるのか、パチンコメーカーはどう考えているのかをまとめた。
日工組は昨年12月22日に開催した役員会において、TV、ラジオ、新聞等におけるCM自粛を2021年3月31日で終了することを決議。これにより4月1日以降は、組合員の判断でTV等でのCMを行えるようになった。
CMを実施する際は、日工組が昨年の10月1日に制定した「遊技機製造業者の広告・宣伝に関する自主基準」を確実に遵守することを求めている。同自主基準は、表示する文言の内容や字体、のめり込み防止標語などの注意表示の方法などが定められている。また、18歳未満の遊技防止の観点から「午前5時~9時」「午後5時~9時」の間は遊技機関連のCMは行えないこととしている。ただし、現在も数社が放送している企業広告(企業理念や、行っている社会貢献活動を発信したイメージCMなど)や、マナー広告に関してはこの限りではないとのことだ。
遊技機関連のCMの歴史を遡ると、全盛期は2000年代、2007年には年間13,000回以上放送されていた。翌2008年も更に増加傾向にあったが、放送界の第三者機関「放送倫理・番組向上機構(BPO)」の青少年委員会において、遊技機関連のCMを問題視する声が浮上。さらに視聴者からも「子どもが見ている時間帯にふさわしくない」といった批判が高まったことから、日工組では2009年4月から午前5時~9時、午後5時~9時の間は、遊技機関連のテレビCMを自粛することを決定した。自主基準ではこの部分をそのまま反映させた形だ。
その後、2011年3月11日に東日本大震災が発生し、日工組ならび日電協は組合員各社にテレビ、ラジオCM等の自粛を要請。企業イメージCMについては協議の結果、解禁となったが、遊技機関連のCMについては社会的情勢を踏まえて適宜判断するとし、自主規制を継続していた。
今回解禁となった背景には、新規則機の販売低調や浸透率の低さがあるとみられる。現在の遊技機市場は、新規則機と旧規則機が混在している状況だ。そんな中、ホールやユーザーの関心は売上・稼働の貢献度や、出玉性能が高い旧規則機に向けられ、新規則機への移行が鈍化している感は否めない。
実際に、こうした事情からCM解禁を要望するメーカーもあったという。 CM解禁になることによって、新規則機が周知でき、販売促進による入れ替え・導入の活性化や、ユーザーに対する新機種の刷り込み、遊技意欲の向上などに期待が持てるようになるのではないだろうか。
しかし、あるメーカー関係者はこう嘆く。「旧規則機との混在や、コロナ禍の煽りを受けて、新規則機の販売計画をこなしていくが非常に厳しい状況。そうなると基本的に売れる台数しかつくらないため、1機種ごとにCMなどのプロモーションをしていく余力がない」。
別の関係者は「弊社では狙ったターゲットに直接リーチできるWEB広告に注力している。 CMも魅力ではあるが、費用対効果で見た場合、 WEB広告の方が効果を見込めるため、しばらく様子見する方針」と話す。近年、広告宣伝の主戦場はWEB広告と言われており、こちらにシフトするメーカーも多いと聞く。資金的なことも考えると、 CM解禁後に動きを見せるのは、しばらくの間は大手メーカーに限られそうだ。
とはいえ、今年11月末の旧規則機の完全撤去に向けては、明るい話題といっていい。果たしてどれだけのメーカーがCMを活用するのか。4月からのメーカーの動きに注目したい。