AI がより身近になってきましたが、どれだけAIが進化しても、ワクワクとドキドキを生むのは人間の感性です。
AIがより身近になり、日常生活では様々な場面でAIを活用することが多くなってきました。パチンコ業界でもAIを活用したデータ分析の高度化が進んでいます。
大量の稼働実績や中古価格推移、地域ごとの差玉分布などを瞬時に処理できるAIは、従来の人手による分析を大幅に効率化しました。しかし、AIが苦手とする領域があります。それは「人間心理の読み解き」です。プレイヤーが感じる「ドキドキ」「簡単そう」「楽しそう」といった感覚は数値化できず、AIには理解できません。
機種選定は最終的に
プレイヤー心理を読む行為
機種選定の本質とは、最終的にプレイヤー心理を読み解くことにあります。どんなにスペックが優れていても、どんなに演出が派手でも、プレイヤーが「また打ちたい」と感じなければ稼働は続きません。
逆に、シンプルでも心を掴む要素があれば、長期稼働につながります。したがって、導入前の機種選定において最も重要なのは、未来のプレイヤー心理をどれだけ正確に予測できるかという点なのです。
新台を導入するかどうか、導入台数をいくらにするか。この判断は「プレイヤーがその機械をどう感じるか」を予測する行為です。過去のデータから導けるものではなく、音やリール制御の気持ちよさ、演出テンポの心地よさといった感覚的価値を見抜く必要があります。ここにこそ、人間ならではの直感や経験が活きるのです。AIはこの領域ではほとんど役立ちません。
一方で、導入後の営業数値はプレイヤー心理がそのまま反映されたものです。面白いと感じれば稼働が伸び、つまらないと感じれば稼働は落ちる。中古価格や粗利推移も、プレイヤー心理の集合的な痕跡といえます。だからこそ、この段階ではAIによる分析が有効なのです。AIは数値を整理し、稼働推移や撤去判断、増台判断などの意思決定をサポートすることができます。
導入前AIツールの限界
今後、AIによって導入前の機種選定を行えるツールが登場するでしょう。スペックや版権、販売台数などの多様なデータを学習させ、機械ごとの期待値を算出する仕組みです。
しかし、そこには決定的に欠けているものがあります。それは“人間の感覚”です。プレイヤーが面白いと感じる部分は、数値化されたスペックや版権の有無ではなく、演出や効果音、さらには「期待感」「満足感」といった心理的要素に根ざしています。これらはAIには学習できない領域であり、数値だけで機種の価値を判断してしまうと、プレイヤー体感との乖離が必ず生じてしまうのです。
結論として、AIは導入後の機種判断には強いが、導入前の機種選定には弱い。なぜなら導入前はプレイヤー心理を予測する必要があり、AIは過去データに依存して未来の感性変化までは読めないからです。だからこそ、最終的な審判は直感と経験を持つ人間が担うべきです。
人間の感性こそが武器
AI時代の機種選定で最も重要なのは、数字の奥にあるプレイヤー心理を見抜く力です。AIの分析を参考にしつつも、実際にプレイヤーがどう感じるかを想像し判断できるのは人間の感性だけです。
適正台数や稼働寿命を見極めるには「数字以上にワクワクさせるか」「長く打たれる余白があるか」という視点が欠かせません。AIは参考資料を提示するに過ぎず、最終的に決断するのは人間です。AIと人間が役割を分担することこそ、これからの機種選定の最適解といえるでしょう。
◆プロフィール
小島信之(こじまのぶゆき)
トビラアケル代表取締役
2018年まで首都圏、静岡、大阪に展開するホール企業で機種選定を担当。2019年に独立し、その分析力を活かしエンタープライズの全国機種評価等を開発。現在はメーカーの遊技機開発、ホールコンピュータの機能開発など、幅広い分野に携わり、変態的なアイディアを提供している。馬と酒とスワローズをこよなく愛する。



