
『ディスクアップ ULTRAREMIX』
今回は、パチスロ『ディスクアップ』を例に、脳の反応を刺激する聴覚情報のメカニズムを解説したいと思います。
1月に導入されたパチスロ『ディスクアップ ULTRAREMIX』は、その高い稼働率により、2018年に5.9号機として復活したディスクアップが、これで3作連続で実績を積み上げることになりそうです。今回は、このディスクアップシリーズについて考察したいと思います。
当初は注目されていなかった
2018年に復活したディスクアップは、販売当初、あまり注目されていませんでした。前職で機種選定を担当していた私も、サミーのショールームで実機を見ましたが、他の注目機種が目当てで訪れており、担当営業から「もしお時間があればこちらもご覧ください」と勧められて初めて知った機種です。
しかし、試打後には、この機種が当たる可能性が高いと確信しました。ディスクアップは高い機械割や技術介入が人気の要因だと言われますが、私が評価するポイントは「音の完成度の高さ」です。効果音やBGMのリズム感が非常に優れています。
音がもたらす感情への影響
私は機種選定において「音」を重視しています。それは人間の脳の特性に関係しています。心理学や神経科学の観点から、聴覚的な刺激が感情的な反応を引き起こすことがわかっています。
音楽や声のトーンは、脳内で感情を処理する「扁桃体」を活性化させ、感情に直結しやすいのです。また、聴覚は視覚情報よりも速く反応し、音は空間的な制約を受けにくいため、常に私たちの注意を引きつけます。
聴覚情報は視覚情報よりも感情的な影響を与えやすく、記憶とも強く結びつきます。たとえば、思い出の音楽を聴くことで、その時の感情がよみがえり涙することがあります。
このように音は感情と密接に関わっており、それが遊技機にも大きな影響を与えます。音楽や効果音はその場での感情的な反応を引き起こすだけでなく、プレイヤーにとって強い記憶として残るのです。
『ディスクアップ』の音楽的魅力
『ディスクアップ』の音楽や効果音が特に優れている点は、その感情的な影響力にあります。
ゲームの進行に伴い、リールの回転音やリーチ演出の音、ボーナス確定音などが次々に展開し、プレイヤーは興奮や期待感を抱きます。これらの音響的な体験が、単なるゲームプレイを超えて、プレイヤーの感情に深く訴えかける要素となっています。
また、『ディスクアップ』の音楽はリズム感に特徴があり、プレイヤーを次のアクションへと自然に導きます。このリズム感は、次に何かが起こるかもしれないという期待感を生み出し、音楽と効果音が巧妙に組み合わさることで、プレイヤーは無意識のうちに感情的な高揚を感じます。リズムが心地よく、プレイヤーの期待感を引き出し、次の展開へと導いてくれるのです。
『ディスクアップ』シリーズの成功は、視覚的な演出やゲーム性だけでなく、音の完成度が大きな理由です。音楽と効果音がプレイヤーの記憶に深く刻まれ、これが高い稼働率を実現している要因の一つだと言えるでしょう。
音響が与える感情的な影響力が、ゲームプレイの楽しさを一層引き立て、プレイヤーを魅了し続けているのです。
◆プロフィール
小島信之(こじまのぶゆき)
トビラアケル代表取締役
2018年まで首都圏、静岡、大阪に展開するホール企業で機種選定を担当。2019年に独立し、その分析力を活かしエンタープライズの全国機種評価等を開発。現在はメーカーの遊技機開発、ホールコンピュータの機能開発など、幅広い分野に携わり、変態的なアイディアを提供している。馬と酒とスワローズをこよなく愛する。
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