アウトなどのデータから示唆されるインサイト(遊技者の隠れた本音)に従ってどのように戦略を走らせているだろうか。アウトは「台あたり人数×1人あたりアウト」 という要素構造によって構成されているが、アウトを中心に議論されることがあったとしても細かく要素が分解された状態での議論はあまり耳にしない。本稿では、このあたりの要素分解の実践を行いつつ、課題の分析と問題特定までの手法をまとめることとする(文=𠮷元一夢/株式会社THINX 代表取締役)。
例えば、本稿執筆は10月23日で『スマスロ転スラ』が現在は好調である。そこで、同機を中心に遊技時間というデータを中心にインサイト(遊技者の隠れた本音)を引出してみる。
実は、導入から3週が経過して遊技時間が90分を超えたスマスロは、『スマスロ北斗』と『スマスロ転スラ』だけである。つまり、「長く粘り込むまでの魅力がある」ことが示唆されている。これだけを切り取ると、本機は『スマスロ北斗』レベルで高く評価できそうではあるものの実態はそこまでではない。
では次に、当社独自の分析である「稼働構造を表すバランスシート」(※図参照)でアウトを要素分解し、構造を分析していく。すると、1人あたりアウト(遊技時間)は『スマスロ北斗』に劣らないレベルであるものの、台あたり人数はおおよそ2名の違いが生じている。その結果、バブルのサイズで表されたアウト平均は低くなり『スマスロ北斗』との決定的な違いとして表れている。
つまり、本機はマスウケする商品ではないが支持するファンの粘りは高いので欠品は避けた方が良いバラエティ向きの機種だと考えられる。同時に、バランスシートからは適正台数の示唆を得ることもできる。
例えば、『スマスロ転スラ』を4台設置しているホールで導入2週目の稼働を維持させようと思えば、4台×5人(導入2週目の台あたり人数)で20人を集め続けなければならない。しかし、導入3週目になり台あたり人数は4人程度の人数に縮小しているので、4台×4人で16人のプレイヤーしか集められない状態が現状であると読み取れる。
したがって導入2週目の稼働を維持させるには、16人÷5人で3台程度の運用が適正であると考えられ、あとは出玉率のコントロールで1人あたりアウトの維持に努められれば大体の目算はたつ。このようにして、要素分解しておけば戦略構想にJOIN(結合)させやすく、正しいアクションを導きやすくなる。
最後に、問題解決は総合芸術だと語られることがあるが、そこにはさまざまな要素があり、さまざまな能力が求められる。大別すれば、「分析力」と「構築力」とされているが、本稿では「分析力」について文字を走らせた。丸ごとでは処理できない病原(課題の本質)を、どんどん要素分解し、問題の本質に迫ることが真理に近づける近道だと考えている。
◆プロフィール
𠮷元 一夢 よしもと・ひとむ
株式会社THINX 代表取締役。データアナリスト・統計士・BIコンサルタント・BIエンジニア。文部科学省認定統計士過程修了。現在は、IT企業のシステム開発やソフトウェア開発にアドバイザリーとして従事しながら、パチンコホール・戦略系コンサルタントとして活動。