【インタビュー/私の道】
パチンコ店への来店動機を刺激する 「 付加価値創出 」 に全力
~『やたい劇場』創始者 ビート・アップ井芹洋之社長

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屋台サービス『やたい劇場』を全国でFC展開するビート・アップ。こだわるのは来店客に対する「ワクワク感」の提供だ。屋台を通じて業界の活性化に力を注いできた、創始者の井芹洋之社長にこれまでの足跡を聞いた。

PROFILE●いせり・ひろゆき
1971年5月生まれの51歳。ホール、遊技機販売商社勤務を経て、2005年中古機を取り扱う株式会社ビート・アップを設立。2008年に新たな事業として『やたい劇場』を立ち上げた。熊本県出身。趣味は史跡巡り。数十年来の矢沢永吉ファンでもある。

大きな人生の岐路は2回あった。

一つは、ホールから販売商社への転職。そしてもう一つが今に至る独立起業だ。

パチンコ業界との最初の接点は、それまで教官を務めていた自動車教習所勤務を辞め、地元・熊本の大手ホール企業へ就職した23歳の頃。その後およそ4年に渡って、4店舗を渡り歩いた。最終的には、新店を任されるポジションに昇格。会社の期待に応えようと、今ではあまり聞かなくなった、いわゆる通し勤務が、数ヵ月に渡って続く。文字通り、寝る間も惜しんで業績向上に全精力を傾けた。

その頃、入替の立ち会いで店を訪れたメーカー関係者にたまたま目が留まる。

「1時間かそこらで、また別の店舗の立ち会いに行くわけです。その頃の自分はというと、毎日が店と寮との往復。すごく羨ましく感じたことを覚えています」。

寮の部屋に帰って自分に問いかけた。

「このままでいいのだろうか。もっと幅広い仕事がしたい」。

意を決し門を叩いたのは、九州の大手販売商社。ホール経験を活かした顧客対応と持ち前のバイタリティを武器に、順調にキャリアを積み重ねていった。

しかし、8年ほどがたったある日。第一線で働ける気力や体力のリミットを意識するようになった。35歳の頃だ。

「全力で仕事ができるのは何歳までかを考え、逆算すると、残り20年も無いのではないか」と焦燥感にさいなまれる。

とはいえ、会社務めは順調。さらに上を目指せるレールも見えてきていた。待遇も満足のいくものだった。

それでも、一度心に宿った想いは、消えるどころか激しさを増す。

「自分の賞味期限を考えるなら、残り20年。勝負するなら今しかない」と、安定した仕事や生活、全てを置いて、株式会社ビート・アップを立ち上げた。

業種は前職同様、販売商社。勤務していた会社とバッティングを避けるため、ゼロからというよりも、むしろマイナスからのスタートだった。

しかも、当時は4号機から5号機への移行期。先行きの不透明感が漂っており、周りは懐疑的な見方が大半だった。

「多くの人に、今から業者をやっても上手くいくわけがないと言われました。機械の販売以外にも、端玉賞品の提案など、色々試行錯誤しましたが、実際、1年目は赤字でしたし、厳しい状況でしたね」と振り返る。

きっかけは新台入替+α
来店客に付加価値を提供

ターニングポイントとなったのは、訪れたホールで交わした会話からだ。

「大手と同じ新台を買っても、導入規模の違いで勝負にならない。新台プラスアルファの付加価値が必要であることは認識しているが、それが何なのか分からない」という悩みだった。

季節は祭りがあちこちで行われていた夏真っ盛り。ふと頭によぎった。

「屋台でもやってみましょうか」。

いつも機械を買ってもらっているというお礼で、1回限りという気持ちだった。

「経験はありましたが、学園祭の出店みたいなレベルです。ただ、安くすることで、喜ばれることは理解していました」。

そこで、ホールに費用を負担してもらい、一般的な相場よりも安く提供。肉巻きおにぎりを1個100円で売った。

これが来店客にすこぶる好評で、稼働向上にも繋がっていく。

「手広くやってみようかとDMを撒いたところ、問い合わせが殺到しました」。

副次的な効果も生んだ。

それまでライバル関係にあった販売会社などが、面白い商材だということで、様々なホールに引き合わせてくれるようになり、熊本から、九州、そしてFCを通じ一気に全国規模に普及していく。

『やたい劇場』の販売商品は、たこ焼き、焼きそば、焼き鳥など、6種類のメニューから一つ、さらに、唐揚げ、ホットドック、カレーなど、13種類のメニューから一つの計2種類を選ぶ形。提供メニューは開催のたびに変えることができるので、毎回新鮮な来店動機を刺激している。常連客からの口コミによって、地域住民による行列ができる時もあり、地域貢献としての役割も果たせそうだ。

パチンコ店との高い親和性が見込めそうな『祈願屋台』。開運祈願と疫病退散をお祈りする験担ぎエリアが、『やたい劇場』とコラボレーションした。すでに多くのホールから依頼が相次いでいるという。面白い企画を常に考え、形にしていくことをモットーにしている井芹社長ならではの、遊び心あふれる新たな付加価値の提案といえそうだ。

「この事業を長年継続していることが信頼となり、採用してもらえることもあります。遊技機と違って、一度駄目だと思われたら、もう二度と呼ばれることはありません。ですので、提供する食材や調理方法には妥協はしませんし、接客を含め、店が嫌だなと感じることはしません。業界特有の暗黙の了解も承知しています」と業界慣習を熟知する強みがある。

そして、来店客から人気を集める大きな理由の一つは、他の追随を許さない価格と味のバランス。ホール負担が管理者裁量で可能な水準で済む点も売りだ。

今後について井芹社長は、「店舗にどんな付加価値を提案できるかが大事だと思います。食べ物だけでなく、周辺住民の方々の利便性に繋がる移動販売店を複数揃えるようなアイデアを模索しています。地域の人に喜ばれて、結果として来店客も増加するという流れをお手伝いできればと考えています」。

コロナ禍を経て、店に足を運ぶ理由になる同社の商材は、既存客のみならず、新規ファン獲得という意味でも、存在価値が高まっているのかもしれない。

2020年7月の九州豪雨では、とくに被害が大きかった熊本・芦北町を訪問して、
地域住民にたこ焼きを無料で提供するボランティア活動を行った。
避難所では、「つよい熊本!頑張れ芦北!まけない芦北」という
応援メッセージを記した垂れ幕を掲げたキッチンカー2台が出動。
1パック6個入りのたこ焼き300パック分と
ペットボトルのお茶300本を被災した町民に無料で提供した。

株式会社ビート・アップ
https://www.yataigekijo.com/
【所在地】熊本県熊本市東区健軍1-5-5
【設立】2005年5月
【事業内容】飲食店の経営『やたい劇場』、派遣事業『劇場ガール』、自然食品の販売『やたいメニュー』

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