当サイトでも記事になっておりますが3月30日、警察庁保安課は「技術上の規格解釈基準」を改正し、同日から施行することを通知しました。これは警察庁のHPにも公開されている内容なので、誰でも閲覧することが可能です。
興味のある方は上記リンクより原文を確認してもらえればと思いますが、前回の解釈基準から変更及び追加になった部分は下記の2点です。
<追加>
30P及び51P
遊技中に遊技を停止することを可能とする性能であって、あらかじめ定められた遊技を停止させる条件に達する前に、その条件に達するまでの定量的な変化を遊技者の 遊技の公正を害さないように報知する措置が講じられているものは、本規定に抵触しない。
<変更>
19P
b 条件装置の作動確率が低い値となっている間に、条件装置の作動に係る抽せんの結果につき、設定ごとにあらかじめ定められた回数連続して(1/MLの1.5倍以上3.0倍以下の回数に限る。)
追加の部分は、当サイトや様々なところでも語られている一定の出玉量に応じて打ち止め機能を発動させる「コンプリート機能」や「安全装置」と言われるモノです。これは、行き過ぎた射幸性を抑制するものであり、その一つの目安となるラインが以前からも各所で話題に上がっていた「ぱちんこ10万発、パチスロ20,000枚=40万円」というラインを基準にしているため、安全装置が発動する出玉が「ぱちんこ95,000発、パチスロ19,000枚」ということになっているわけです。
コンプリート機能は、ぱちんこ機は令和4年11月申請分より、パチスロ機は令和4年7月分より全機種に搭載が必須となります。特にこのコンプリート機能に関しては、ユーザー、ホールともに賛否というより否定的な意見が少なくないと思われます。しかしながら、行き過ぎた射幸性を自主的に抑制することで、その認められた出玉性能内においてスペック設計や出玉性能に幅を持たせてもらえる可能性は十分あり得る話なわけです。
勿論、その場合は「緩和」が先行するわけではなく、まずは「規制」を行い、問題が無いことを確認したのち、徐々に自由度を高める方策を探るというのが必要となってくるわけでございます。パチンコ業界をより良くするための前向きな施策としてユーザー、ホールともに受け入れていきたい内容だと思っております。
もう一つの変更になったものは、b時短いわゆる「遊タイム」の発動回転数の変更になります。以前は、確率分母の2.5倍~3倍だったのに対し、新基準では確率分母の1.5倍~3倍となります。ざっくりまとめると下記のようになります。
確率 1/319の場合
遊タイム発動回転数
・旧基準 798回転 ~ 957回転
・新基準 479回転 ~ 957回転
確率 1/199の場合
遊タイム発動回転数
・旧基準 498回転 ~ 597回転
・新基準 299回転 ~ 597回転
確率 1/99の場合
遊タイム発動回転数
・旧基準 248回転 ~ 297回転
・新基準 149回転 ~ 297回転
ざっくりですが、このようになり遊タイムの発動回転数に幅が出るようになるということです。発動までの回転数が大幅に近くなった印象ですが、到達率でみると、下記のような形になります。
・旧基準 0回転から打ち始めた場合の遊タイムまでの到達率
約5% ~ 約8%
・新基準 0回転から打ち始めた場合の遊タイムまでの到達率
約5% ~ 約22%
どの確率帯においても、確率分母の1.5倍で遊タイム発動と設計した場合の到達率は、今までのスペックよりも3倍ほど到達しやすくすることが可能となるわけです。勿論、今までよりも発動の回転数に幅が出たこと、また到達率を高めることが可能になったことで、スペックだけではなくゲーム性や演出により幅を持たせることが可能となりました。
遊タイムについて、ユーザーやホールの中には「ハイエナ狙いの機械」「年配層に優しくない」などと揶揄されることも少なからずありますが、似たような機能であるパチスロの天井に関してはあまりそこまで言われない側面があります。
それは過去の歴史や周知状況、機械特性やターゲット層など、様々な理由が挙げられますが、ぱちんこ機において、それらに近しい機能が受け入れられないという理由にはなりません。また、到達率が上がったことにより可能となるスペックがいくつかありますので、その具体例を今回、軽く紹介したいと思います。
<史上初?大当りを目指さないぱちんこ機>
(例)確率1/99 遊タイム発動回転数150回
このような機械で、大当り=単発(小出玉)確定、遊タイム突入でRUSH突入濃厚というスペックであれば通常中においては大当りをするとむしろ困るというゲーム性になります。
嬉しいはずの大当りがむしろ嬉しくないというスペックは、今までよりゲーム性や演出の幅がかなり広がりそうな気がします。そして、1/99の機械を150回転までハマったらOKというスペックは、ヒキ弱の私ならすぐにRUSH突入できそうな気がします(笑)。ですが、RUSH突入までの実質的な確率は、約1/449と思ったより辛い確率なので、しっかりとした出玉性能を有することもできそうなスペックとなっています。
今回のモノは簡単な一例ではありますが、このようにスペックの幅が広がるということは、ゲーム性の幅が格段に広がり、面白くなる可能性が高まるということに他なりません。規律を守ることで、ぱちんこ機パチスロ機は今後、益々面白くなっていくのは間違いなさそうな気がいたします。
◆プロフィール
荒井孝太
㈱チャンスメイト 代表取締役
パチンコメーカー営業、開発を歴任後、遊技機開発会社チャンスメイト(https://chancemate.jp/)を設立。パチンコ業界をより良く、もっと面白くするために、遊技機開発業務の傍ら、ホール向け勉強会や全国ホール団体等の講演会業務など広く引き受ける。