新型コロナ第5波により、2年連続で厳しいお盆営業を強いられた8月ですが、6月以降好調に推移したパチンコミドルの新機種で業績を維持されたホール様も多いのではないでしょうか(文=三輪勝治/㈱エムシック代表取締役)。
新規則機への変更以後、『大工の源さん超韋駄天』や『とある魔術の禁書目録』など限られた数機種を除き苦戦してきたミドルですが、ユーザーから評価され始めたことは極めて明るい兆しと言えます。
パチスロでは6号機が未だ厳しい状況下、業績を支えるにはミドルの稼働維持は必要不可欠です。今回はミドルが好調な要因を顧客遊技データから検証し、今後の営業を考えていきたいと思います(文=三輪勝治/エムシック代表取締役)。
目次
主要3機種の顧客遊技データ
まず、この夏のミドルの好調を支えた『牙狼月虹ノ旅人』『スーパー海物語 IN 沖縄5』『F機動戦士ガンダムユニコーン』3機種のユーザー動向を導入時の顧客遊技データから検証したいと思います。
表①をご覧ください。3機種のアウト/1人はAI–CIS育成推奨基準6,000を大きく上回っており、ユーザーが粘って遊技している事が分かります。
このユーザーの粘りが勝金額を上昇させ、『牙狼』『ガンダムユニコーン』の2機種では勝金額平均が36,000円を超える結果に繋がり、この値は『真・北斗無双』と同レベルです。勝金額重視派が満足する値である3万円を超えた事は、ユーザーの粘りを引き出す事が出来れば勝金額が高まる機械の方向性が見え、今後の機械にも期待が持てるのではないでしょうか。
一方『沖縄5』ですが、勝金額平均は約23,000円と新規則機でも標準的な数値ですが、一定の評価を得た『大海物語4スペシャル』より約3,000円高く、勝率も30%超えと育成推奨値を上回り、勝率重視派ユーザーに支持される値の機種となりました。
5号機ユーザーの呼び戻し
次に、表②をご覧ください。3機種の導入月に各機種をメインに遊技したユーザーの昨年10月の来店有無、そして来店のあったユーザーが何を遊技していたか、その比率を表しています。
3機種とも「来店無し」ユーザーの比率が50%超となっており、10月単月とは言え、来店の無かった多くのユーザーを呼び戻していることが確認できます。この数値は大型話題機として見れば際立って大きな数値とは言えませんが、今回挙げた3機種の様にユーザーの満足感を引き出せる機種で呼び戻しが出来れば、ユーザーを呼び戻した上で来店・遊技のリピートも可能にし、業績の向上に繋がります。
更に来店者の5号機の比率にご注目下さい。『牙狼』『ガンダムユニコーン』両機種メインユーザーの約15%が昨年10月には5号機をメインに遊技していた事が分かります。この元5号機ユーザーの中には昨年11月以降の『ゴッド凱旋』『沖ドキ』撤去後に店舗離反していたユーザーも多く、それらのユーザーを呼び戻していた可能性が高いのです。
この元5号機ユーザーはパチスロの勝金額重視派であり、高い投資金額でハイリスクハイリターンの遊技を好む為、店舗業績に大きく寄与する事は言うまでもありません。
6号機ユーザーの回遊選択肢としての運用
『沖縄5』に関しましては、多少低めとは言え8.3%あり、元5号機ユーザーの移動先として注意深く運用する必要があります。更に同機種の活用にはもう一つの可能性があります。
図③をご覧ください。図①は7月にセブン機をメインに遊技したユーザーのセブン機内の回遊状況を表しています。ここで『とある魔術の禁書目録』から『沖縄5』に破線矢印(第2サブ機種)が向かっている事に注目です。
この破線矢印は『とある魔術の禁書目録』メインユーザーの内、『沖縄5』をサブ機種として2番目に遊技したユーザーが多かった事を示しています。月半ばでは『緋弾のアリア』の第一サブ機種としても遊技されていました。両機種ともに高い勝率が評価され、6号機ユーザーが多く回遊する機種です。
6号機ユーザーは先の5号機ユーザーとは異なり、勝率重視派であり、前述2機種の様な勝金額重視機種では、導入期に回遊しても辛く運用されれば離反する傾向が強くなりますが、『沖縄5』は勝率重視機種であり、継続的に甘く運用される事と思われます。
ワクチン接種が進んでいるとは言え、依然として中高年齢海ユーザーの店舗への戻りが遅い状況下、盛況感のある海コーナーを見せられるかどうかは、勝率重視派6号機ユーザーが『沖縄5』を回遊先として継続的に選択する営業施策が必要となるでしょう。
まとめ
コロナ禍の現在、店舗の業績維持の為には若年齢層を如何に店舗に定着させるかが重要課題となります。同時に、パチスロ6号機の見通しが立たない状況では、パチンコを強化し若年齢パチスロユーザーのパチンコへの回遊・定着が重要である事は、これまでの連載でお話してきた通りです。
この状況下で、6号機ユーザーだけでなく5号機ユーザーを回遊させられるミドル機種が複数登場してきたのは大チャンスと言えます。一方、ミドルは厳しい環境の中、利益確保の中心となっている事と思います。
今後の導入機種も含め、若年齢パチスロユーザーが回遊・定着するミドル機を早期に見極め、回遊促進と同時にユーザーを離反させない利益運用でミドル部門の強化が求められます。
三輪 勝治
㈱エムシック代表取締役
1985年立教大学法学部卒業。パチンコ業界大手周辺機器メーカーに勤務。遊技台情報公開システム、情報ネットワークシステムの開発に携わる。退職後、One To One顧客管理システムの開発・販売会社設立に参加。業界初の顧客遊技履歴データネットワークシステムを立ち上げる。システム開発、セミナー講師、等幅広く活動。2016年10 月株式会社エムシック設立。