新型コロナ感染者の急増を受け、政府は1月8日、1都3県を対象に2度目となる緊急事態宣言を出した(対象はその後、11都府県に拡大)。ホール営業に与えた影響を統計データ等をもとに調べてみた。
政府や自治体による「時短営業」要請の対象にならなかったパチンコホールだが、マイナス影響を免れたわけではなかった。
緊急事態宣言の対象地域となった都府県遊協が取った主な対応方針は、次の3点。
・「パチンコ・パチスロ店営業における新型コロナウイルス感染症の拡大予防ガイドライン」の遵守
・集客を目的とした各種告知広告宣伝の自粛
・20時以降のネオン、看板照明の消灯※保安上、必要な場合を除く。
自主的に時短営業に踏み切った極一部のホールをのぞき、大方のホールは緊急事態宣言前とほぼ同等レベルの営業を実施したわけだが、客数の減少に拍車が掛かったと感じるホール関係者が多かったようだ。
都内のあるホール関係者は「緊急事態宣言直後は、特に中高年層を中心にお客さんが減った。体感的には10%減といったところ。さらにお客さん1人当たりの滞在時間が減ったことから、客数以上に粗利の減少率が高くなった。新台入替などの手を打っても全く響かない。集客するための投資という点で有効策がないことから、光触媒の施工や無人賞品カウンターの導入など、消去法的にコロナ対策を強化しているのが正直なところ」と話す。
また、関東圏で20店舗弱を展開するホール企業の営業部長は「客数の回帰率が8割程度だったところ、さらに1割ほど落ちた。具体的には、レートが低くなるほど、お客さんが減っている。見方を変えると、長く遊ぶより、短い時間で勝負するお客さんが増えたということなのかもしれない。長く店内にいたら危ないと思っている人もいれば、夜は外出してはいけないと言われている人もおり、どうしても遊技時間が短くなる。何れにしても、低貸しは想定より(稼働が)下がっている」と影響を説明した。
緊急事態宣言前より5%以上ダウン
緊急事態宣言に伴うホール営業へのマイナス影響は、統計データにも表れている。全国パチンコホールの客数・稼働データを集約した「エンタープライズ」(メディアシステム運営)による1都3県(東京、神奈川、千葉、埼玉)の緊急事態宣言期間中(1月8日~1月21日)の客数データは、下表の通りだ。全体平均ほか、パチンコ・パチスロ別、貸し玉料金別、時間帯別などの項目において、コロナ禍前となる昨年同期と比較してみた。
全体平均の客数の回帰率は73.5%。緊急事態宣言前は、一般的にホール営業における回帰率はおおむね8割と言われていただけに、さらなる客数の落ち込みがうかがえる。実際、「エンタープライズ」においても、緊急事態宣言前となる2020年12月の客数回帰率は79.6%だった。「おおむね8割」だった客数の回帰率が、5%以上の客数の落ち込みを見せる結果となっている。
データを詳細に見ていくと、幾つか客数減の傾向が浮き彫りになってくる。客数の落ち込みがより顕著な点は次の通り。
・パチスロよりパチンコ
・通常貸しより低貸し
・時間帯別では夜の稼働
特に客数の落ち込みが激しいのがパチンコの夜の稼働(19時以降)と低貸し部門。パチンコの夜の稼働は昨年同期比で64.4%。3人に1人以上がホールから足が遠のいている。またパチンコの低貸し部門も同様で、全体平均で68.1%、さらに低貸しの夜の稼働に至っては59.5%まで客数が落ち込んだ。
ただし、これらの傾向は既に知られていることでもある。つまり、中高年層の離脱という現象が、緊急事態宣言でより加速したと考えられる。ちなみにパチスロのタイプ別で、ATのみ客数の大幅な落ち込みが見られるが、これはコロナ禍の影響というよりも、単純に高射幸性パチスロ機の撤去などの影響が大きいと考えて良い。
不振店ほど影響大
もう一点、「エンタープライズ」のデータから分かったことがある。それは、緊急事態宣言のマイナス影響は、繁盛店よりも不振店のほうが大きいということだ。
「エンタープライズ」に登録している全国のホールの中から稼働率で見た上位200店舗と下位200店舗における、今年1月の客数の回帰率(※昨年同期との比較)は次の通りだ。
・上位200店舗
→86.8%
・下位200店舗
→68.5%
上位と下位のホールでは回帰率において約20%もの開きが見られた。コロナ禍や緊急事態宣言によるマイナス影響は、残念ながら不振店に、より重くのしかかっている。そのため地域内における店舗間格差は、平時よりもさらに広がりやすい現状にあると言えるだろう。
政府は2月2日、10都府県を対象に、緊急事態宣言の3月7日までの延長を表明した。これまで同様、パチンコホールに対する直接的な要請はないが、あるホール関係者は「失業者の増大や、所得減により、ますますホールから足が遠のくのではないだろうか」と見通す。間接的な影響が長期化することで、ホール営業は引き続き、我慢の展開が続きそうだ。
「今、考えることは儲けることではない。満台にすることでもない。状況は厳しいが、飲食店など他業種よりはマシという状況を歓迎すべきとも思う。8割、あるいは7割に減ったお客さんを、今すぐに戻すことは無理だろう。2~3年かけて9割程度になればと思う。状況に合わせたビジネス規模のスモール化が大切であり、良い機械が出るなど状況が好転すれば、また儲けるための手を打てば良い」(ホール関係者)。