余暇進では、新型コロナの影響を考慮し、毎年実施している秋季セミナーを中止。恒例の行政講話については、警察庁生活安全局保安課の池田雄一課長補佐から文書(11月10日付け)にて寄せられた。以下、全文を掲載する。
目次
一般社団法人余暇環境整備推進協議会
令和2年度課長補佐講話
皆様方には、平素から警察行政の各般にわたり深い御理解と御協力を賜っているところであり、この場をお借りして御礼申し上げます。
本年7月に保安課課長補佐に着任し、貴協議会の皆様の前でお話できることを楽しみにしていましたが、残念ながらそれが叶わず、書面にてご挨拶を申し上げます。
新型コロナウイルス感染症がいまだ終息せず、ぱちんこ業界の皆様におかれましても、今なお厳しい状況が続いているものと思います。しかし、そのような中において、これまでぱちんこ店では、クラスターが発生したという事実は聞いておりません。
これは、ぱちんこ店の皆様が、業界で策定したガイドラインに沿って、あるいはそれ以上の工夫をして、対策を講じている結果だと考えており、皆様方の努力に改めて敬意を表する次第です。
また、製造業者、販売業者等の皆様におかれましても、それぞれの業務に応じた対策を講じているところと思います。引き続き、感染症防止対策に万全を期していただき、この危機を乗り切っていただくことを願っています。
さて、本日は、せっかくの機会ですので、ぱちんこ営業の健全化を推進する上で特に必要であると考えていることについて、何点かお話をさせていただきます。
ぱちんこへの依存防止対策について
まず、ぱちんこへの依存防止対策についてお話しします。
昨年4月に閣議決定された基本計画に従い、昨年12月に「パチンコ依存問題対策基本要綱」及び「パチンコ・パチスロ産業依存問題対策要綱」が、本年3月には同要綱に基づく「パチンコ店における依存問題対策ガイドライン」と付属マニュアル等が、それぞれ制定・公表されています。貴協議会におかれましても、引き続き、この要綱等に基づき、依存防止対策に取り組んでいただきたいと思います。
具体的に、まず、広告・宣伝については、広告・宣伝に関する共通標語とそのデザイン、大きさ等の具体的活用方法がガイドライン等に示されたと承知しています。広告・宣伝は、多くの方の目に触れる性質のものでありますので、その中で依存防止対策が適切にとられていることは重要です。
また、広告・宣伝の内容が射幸心をそそるおそれのあるものでないことも当然必要です。したがいまして、こうした点を十分認識していただき、取組に遺漏のないようにお願いします。
また、18歳未満の者の営業所への立ち入らせについても、ガイドライン等において、18歳未満の可能性があると認められる者に対する年齢確認書類による年齢確認の実施が原則とされ、年齢確認に応じない場合や年齢確認書類を不携帯だった場合には遊技させないなどの対応例が示されました。こうした取組についても、引き続き徹底をお願いします。
次に、自己申告・家族申告プログラムについては、本年9月末現在で約4,500店舗が導入していると承知しています。同プログラムの導入店舗数をより一層拡大することが重要でありますが、いまだ同プログラムを導入していない店舗が多く存在しています。業界としての取組姿勢が問われるところであり、同プログラムの更なる普及をお願いします。
加えて、本人の同意のない家族申告による入店制限についても、業界において策定されたマニュアルにその導入・運用方法が示されましたが、こちらも普及が進んでいないように見受けられます。
ぱちんこへののめり込み・依存問題に対して家族が助けを求めてきたときに、その声に業界として応える、そのための受け皿が準備されているかどうかということは極めて重要なことであると考えています。各営業所において、こうした切実な家族からの願いに誠実な対応がなされるよう、同プログラムの更なる普及をお願いします。
同プログラムの導入店舗情報については、今年度からウェブサイト上で公表されているところ、同プログラムを導入していない営業所はのめり込み・依存問題対策に消極なところであると見られ得るということを十分に認識し、こうした営業所が少しでもなくなるようにしていただきたいと思います。
また、同プログラムの運用に当たっては、顔認証の活用に係るモデル事業を実施しているなどの企業もあり、先進的な取組を実施しているものと評価しています。こうした取組を含め、同プログラムをより充実させ、そして同プログラムの実効性をより高める取組を進められることを期待しています。
次に、営業所のATM等の撤去等については、基本計画において、ぱちんこ業界が昨年度中に、ATM及びデビットカードシステムの撤去等に向けた検討に着手し、その結果に基づき順次、撤去等を推進することとされており、業界のガイドライン等においてもその旨盛り込まれたと承知しています。
基本法により設置されたギャンブル等依存症対策推進関係者会議では、複数の委員からATMに対して厳しい意見が出され、また、引き続き順次撤去することを期待する旨の指摘もされているところ、このような状況において、同会議等において賛同が得られるかという視点も考慮した上で、業界として基本計画に基づく取組を推進するようお願いします。
この点、日本遊技関連事業協会の会員である複数の企業が、現在営業所に設置しているATMについて順次撤去していくこととし、また、和歌山県で策定・公表された「和歌山県ギャンブル等依存症対策推進計画」においては、「現在、ATMを設置しているぱちんこ営業所はないものの、一部のパチンコ営業所では、デビットカードによりぱちんこができるシステムが導入」されていることを受け、「全てのぱちんこ営業所のデビットカードシステムの撤去を推進」する旨が盛り込まれていると承知しています。このような情勢を踏まえ、着実に取組を推進されることを期待しています。
次に、依存症対策にかかる連携協力体制の構築については、昨年、厚生労働省から各自治体に発出された通知を受けて、すでに連携会議が設置された自治体もあり、業界の中でも、これら連携会議等へ参画しているところがあると承知しています。
引き続き、連携会議等への積極的な参画を通じるなどして、他の関係機関との円滑な連携を確保するとともに、情報共有等を図ることで、依存症に苦しむ本人や家族のためにより有効な支援がなされるよう、取組を進めていただきたいと思います。
次に、ぱちんこへの依存問題やその対策に関する普及啓発については、本年5月のギャンブル等依存症問題啓発週間において開催が予定されていた「パチンコ・パチスロ依存問題フォーラム」が、新型コロナウイルス感染症の影響により中止となったと承知しています。
しかしながら、こうした依存問題に関する普及啓発活動は、こうした機会に限られるものではありません。是非年間を通じた活動の推進をお願いしたいと思います。また、昨年と同様に、来年以降も、ギャンブル等依存症問題に関する関心と理解を深めるという啓発週間の趣旨にふさわしい取組がなされることも期待しています。
次に、自助グループをはじめとする民間団体等に対する経済的支援については、昨年11月に「パチンコ・パチスロ社会貢献機構」が設立され、本年度は6団体に対して助成を行うものと承知しています。引き続き、ぱちんこへの依存問題の予防と解決に取り組む団体等に対する積極的な支援をお願いします。
また、リカバリーサポート・ネットワークについても、ぱちんこ依存の問題を抱える本人及び家族に対する個別相談事業を継続的に行っているところ、ぱちんこ業界全体で継続的にその活動を支えていただくよう、お願いしたいと思います。
さて、今申し上げたようなギャンブル等依存症対策の実効性を最大限に確保するためには、徹底したPDCAサイクルにより計画的な取組を推進することが重要であるとされています。
本年から開始されている一般社団法人遊技産業健全化推進機構による依存防止対策の実施状況調査等を通じて、各ぱちんこ営業所における取組の進捗状況を把握するなどして、適宜改善を促進してもらいたいと思います。
以上、ぱちんこへの依存問題への対策についてお話ししてきましたが、この依存問題については、多くの方の高い関心が集まり、業界としての取組が注目されています。厳しい状況が続きますが、今一度、ぱちんこ遊技が潜在的に持つ負の側面から目を背けることなく、問題解決に向けて業界全体で真摯に取り組んでいただくことをお願いします。
旧規則機の撤去について
次に、旧規則機の撤去についてお話しします。
既にご存じのとおり、本年5月20日に国家公安委員会規則を改正し、旧規則機の撤去に係る経過措置期間を1年延長しました。
これは、新型コロナウイルス感染症の影響により、メーカーにおいて海外からの部材調達が不安定化するなどにより、新規則機への入替が困難となっていること、また、このままの期限で遊技機の入替を求めた場合、短期間に大量の遊技機の入替を行うことにより、入替作業等に伴う感染リスクを増大させるおそれもあることから、遊技機の入替時期を分散化させる必要があるとの判断の下、行ったものです。
したがいまして、撤去時期がそのまま1年後ろ倒しになり、結局、経過措置期間満了間近になって撤去が集中してしまうという事態は絶対に避ける必要があります。また、経過措置期間の延長により、射幸性の抑制という命題が後退したと社会一般の視点から受け取られてもいけません。
こうしたことを受け、パチンコ・パチスロ産業21世紀会において決議が行われ、具体的な数値目標を示して遊技機の計画的な撤去を行うほか、「特に高い射幸性を有すると区分した回胴式遊技機」についてはこれまで通りの満了日までに撤去することとされており、これら決議に基づく取組の実効性を担保するため、ぱちんこ営業者、遊技機製造業者、販売会社等の各団体が一致団結して様々な取組を行っているところと承知しています。引き続き、業界をあげて旧規則機が計画的に、着実に撤去されるようお願いします。
また、旧規則機の撤去に伴い懸念されるのが、遊技機の廃棄問題です。現状においてもホールの倉庫等に今後設置することのない遊技機が大量に保管されているという話が継続的に聞こえるところ、過去のように、遊技機の野積みといった形で問題を繰り返さないことが求められます。
一部地域においては、関係団体と調整した上で、計画的な廃棄処理に向け動いているところもあり、過去の反省が活かされた取組であると評価しています。計画的な旧規則機の撤去で入替を分散していただくことはもちろん、旧規則機の適正かつ計画的な廃棄処理についても遺漏のないようお願いします。
遊技機の不正改造事犯等の絶無について
次に、遊技機の不正改造事犯等の絶無についてお話しします。
誠に残念なことですが、ぱちんこ営業所において遊技くぎを曲げて検定機と異なる性能を創出する事案は、いまだに継続して発生しており、本年も複数の検挙事例の報告を受けているところです。これまでにも、そのような事案は射幸性の適正管理を侵害する悪質な不正改造事案であると繰り返し申し上げていますが、依然として、客寄せ等の営業者の都合により、くぎを曲げる事案が後を絶ちません。
くぎ曲げについては、引き続き厳しく取締り等を行っていきますが、貴協議会におかれましては、引き続き正しい認識を全国の会員に理解していただくよう周知徹底を図ることはもとより、業界全体をリードして、こうした問題の絶無に向けて取り組まれることを期待しています。
このほか、悪質巧妙化している不正改造については、これに対処するため、ぱちんこ営業者、製造業者という垣根を取り払い、事案の情報共有や有効な防止対策を業界全体で模索し、効果的な施策をより一層推進していただきたいと思います。
また、一般社団法人遊技産業健全化推進機構の活動については、業界の健全化に欠かせないものとして、その役割の大きさを皆様も実感していることと思います。推進機構は、活動開始以来、立入検査店舗数が昨年度末までに32,000店舗を超え、また、検査台数も約23万台を上回るなど、精力的な活動を継続しているところです。
他方、いまだに不正改造等の容疑が認められたとして都道府県警察に通報がなされた事案が散見されますので、業界として引き続き緊張感を持って不正改造の絶無に向けた取組の推進をお願いします。警察といたしましても、今後とも、推進機構と積極的に連携しつつ、不正改造事案に対しては、厳正な取締り等を推進していきたいと考えています。
また、推進機構においては、先ほども申し上げたとおり、本年からぱちんこ営業所における依存防止対策の実施状況調査を実施するなど、様々な面で業界の健全化に貢献していると考えられるところ、引き続き、業界全体で推進機構の活動への支援等をお願いしたいと思います。
遊技機の流通における業務の健全化について
次に遊技機の流通における業務の健全化についてお話しします。
遊技機の流通については、その過程において型式の同一性が担保されるよう「製造業者遊技機流通健全化要綱」等が制定されて以降、業界における制度の理解も促進されていると伺っています。引き続き、遊技機の流通に携わる関係者が正しく制度を理解するための取組を継続していただくとともに、取組の継続をお願いします。
ぱちんこ営業の賞品に関する問題について
次に、ぱちんこ営業の賞品に関する問題についてお話しします。
まずは賞品買取事犯の根絶についてです。
賞品買取行為の規制違反は、本年においても既に複数の事案の検挙が見られるところです。賞品買取行為の規制は、ぱちんこ営業と賭博の一線を画す上でも重要な規制であり、ぱちんこ営業の根幹に関わるものであることから、警察といたしましても、賞品買取事犯に対しては引き続き厳正な取締りを行っていくこととしていますが、貴協議会におかれましても、今一度、営業者一人一人にまで、賞品買取行為の規制の重要性について周知徹底していただきたいと思います。
次に、賞品の取りそろえの充実及び適切な賞品提供の徹底についてです。
平成18年にぱちんこ営業者関係5団体によりなされた「ぱちんこ営業に係る賞品の取りそろえの充実に関する決議」について、今一度、この決議の重要性を認識し、そうした意識が業界の共通認識となるよう貴協議会が業界をリードすることを強く期待しています。
次に、適切な賞品提供の徹底についてです。
ぱちんこ店における賞品の提供については、等価交換規制が設けられていることは皆様も当然ご承知のことと思いますが、今一度、各ぱちんこ営業者にあっては、自身の営業所の賞品が等価交換規制を遵守したものとなっているか確認し、遵守できていない疑いのあるものは排除していただくようお願いします。
広告・宣伝等の健全化の徹底について
最後に、広告・宣伝等の健全化の徹底についてお話しします。
広告・宣伝等の規制については、特定の日に特定の遊技機を示し、イベント開催を告知して射幸心をそそるものや、隠語を用いて規制の目をかいくぐろうとするような悪質な事案がいまだに発生しています。このような違法な広告・宣伝等については、今後も指導・取締りを行っていきますが、依存防止対策の観点からも広告・宣伝の在り方が問われていることを踏まえ、業界自らの取組によって健全化が進められるよう努めていただきたいと思います。
以上、ぱちんこ営業の健全化を推進する上で特に留意していただきたい点を申し述べました。
ぱちんこは、遊技人口が減少傾向にあるとはいえ、多くの方々に親しまれている娯楽です。一方で、ぱちんこへののめり込みや依存を始め、課題は山積しています。こうした課題の一つ一つに、業界が一丸となって、迅速かつ真摯に対応していただいてこそ、ぱちんこ営業の健全化が図られるものと考えます。
今後のぱちんこ業界の皆様のご努力に期待します。
結びに、貴協議会のますますの御発展と皆様方の御健勝、御多幸を祈念いたしまして、私の話を終わります。