【コラム】外部リスクを可視化する顔認証AI

投稿日:2026年7月31日 更新日:

顔認証AIは、来店履歴や行動傾向を可視化し、販促効果の検証やセキュリティ対策を支援します。その効果を得る上で大切なことは、技術の精度だけでなく、現場の判断基準をどこまでシステムに反映できるかにあります(文=髙橋和輝/株式会社ピーメディアジャパン代表取締役)。

この記事のポイント

  • イベント新規客の再来店率などを可視化し、販促効果の検証に活用できる。
  • 来店履歴やグループ行動から、ブラックリスト対象者や軍団候補を早期に把握できる。
  • 導入効果を左右するのは、認証精度だけでなく現場の判断基準をAIへ反映する設計である。

来店イベントや取材企画、強い営業日など、期待値の高い日だけを選んで来店するユーザーの存在は、ホール営業において無視できない課題です。集客にはつながる一方で、継続的なファン化につながっているのかを見極めることは、これまで容易ではありませんでした。

一般的に、都合のよい条件だけを選び取る人は「チェリーピッカー」と呼ばれます。ホール営業に置き換えれば、期待値の高い日だけ来店し、平常営業日の来店につながりにくいユーザーがそれにあたります。

こうしたチェリーピッカー対策を含めて現在、当社では顔認証AIの活用・開発を進めています。顔認証で来店履歴を長期的に蓄積すれば、個別には通常の遊技客と区別しにくくても、行動パターンとして把握できるようになります。

例えば、「先月の取材イベントに新規来店した客のうち、その後30日以内に再来店した割合は何%か」。こうした数値を把握できれば、これまで現場の感覚として語られてきた「イベントは盛り上がるが、リピートにはつながっていない」などの課題を、数字として可視化できます。販促費の使い方を見直す材料になり、リピーターを生んでいるイベントであれば、継続する判断も可能になります。

顔認証AIは、ブラックリスト対応や軍団候補の検知にも活用できます。入店時に登録済みの顔データと照合し、責任者の端末にアラートを飛ばせるほか、「過去に同じ時間帯にそろって来店したメンバー」や「特定日に集中して現れるグループ」を機械的に抽出できます。店長が経験的に気づくより早く、客観的に把握できる可能性があります。

ただし、本質は単なる自動化ではありません。先に挙げた例は技術的にはすでにそれほど難しいものではありません。本当に価値があるのは、各ホールが長年培ってきた「軍団対策の哲学」をAIに移植する部分です。

ある店長から以前、「開店1時間前のコンビニにたむろしていて、開店と同時に入店してくる客は、軍団候補として一旦マークする」という話を聞いたことがあります。もちろん、本当にただの常連客かもしれません。それでも、この「グレーゾーンを一旦マークしておく」という判断こそ、ベテラン店長の経験に基づく重要なノウハウです。

こうした判定ロジックは、教科書にもマニュアルにも書かれていません。しかし、顔認証データに加え、来店時刻、近隣カメラの映像、過去の来店履歴などを組み合わせれば、この「店長の勘」をルール化し、AIに学習させることができます。

つまり、顔認証セキュリティにおける競争力は、カメラの性能や認証エンジンの精度だけにあるのではありません。出禁客、軍団、チェリーピッカーといった外側の脅威に対し、顔認証AIを実効性のある武器にできるかどうかは、現場の哲学をどれだけ深く拾い上げ、システムに反映できるかにかかっています。今後のホールセキュリティでは、技術そのものよりも、現場ノウハウをAIに落とし込む力が問われることになるでしょう。

AI導入で押さえたい点


顔認証AIはカメラ性能だけで判断せず、どの行動をマークし、誰にどうアラートするかという現場の判断基準まで設計することが重要です。

◆プロフィール
髙橋和輝
株式会社ピーメディアジャパン代表取締役。大前研一ビジネススクール出身。18歳から現場一筋で、ホール企業勤務を経て、コンサルタントとして独立。業界初のホール企業向けサブスクサービスを12年運営。現在はパチンコ特化型BtoBプラットフォームを展開(2024年取引額約6.5億円)し、ホール営業×AIを開発中。

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