【コラム】パチスロBT機の賞味期限~話題性の先に、未来はあるか~

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近年、注目を集めるボーナストリガー搭載機(以下、BT機)のなかでも、「LBアレックス」および「LBエヴァ」は、導入初週における複数の遊技体験指標において、従来のAタイプ機と比較して相対的に高い数値を記録した(文=𠮷元一夢/㈱THINX 代表取締役)。

たとえば平均遊技時間は「LBアレックス」で76.5分、「LBエヴァ」で72.3分と、いずれも既存のAタイプ機種を上回る水準であり、プレイヤーが一定時間、滞在していたことが読み取れる。

この結果は、BT機という新構造がプレイヤーの興味関心を引き寄せ、遊技満足につながる余地を持つことを示唆している。従来のAタイプでは得られにくかった一種の“手応え”や“新しさ”が、プレイヤーの滞在行動に現れたとも読み取れる。

だが一方で、こうした初動データを評価するにあたっては、“導入初期バイアス”の影響を慎重に考慮すべきである。特に今回は、BT機という新仕様のローンチによって、メディア露出やSNSでの話題性が高まり、それがプレイヤーの期待感を増幅させたことで、「一度は試してみたい」といった好奇心によるプレイ行動が活性化し、短期的に数値を押し上げた構造的偏りが発生しやすい状況だったといえる。

実際、導入2週目に入ると「LBアレックス」の平均遊技時間は60.8分、「LBエヴァ」は53.8分へと低下(図参照)しており、初週比で15分以上の減少が観測された。これは単なる離脱ではなく、プレイヤーが仕様を理解したうえで継続を選択しなかった可能性を示している。

また、60分以上の長時間遊技者の割合についても、2機種ともに導入初週から2週目にかけて10ポイント前後の急落が見られた。このようなプレイヤー滞在構造の不安定性は、BT機が必ずしも“定着する遊技体験”を形成できていないことを示唆している。

こうした傾向を踏まえると、BT機は現時点で「Aタイプの新たな柱」として市場全体を牽引するまでには至っておらず、あくまで個別機種における戦術的な採用にとどまると評価すべきである。もちろん、「LBアレックス」のように好スタートを切った機種が登場した意義は小さくないが、それがカテゴリ全体の地位を底上げするには、なお多くの課題が横たわっている。

特に留意すべきは、Aタイプ市場そのものが構造的に限定された規模にあるという点である。ジャグラー系を除いた場合、Aタイプによるプレイヤー創出比率は全体の8%にとどまっており、こうした母集団の小さな市場環境においては、BT機が及ぼし得る影響も自ずと限られてくる。

BT機が継続的な営業貢献を担うには、設計.演出.プレイヤー理解すべてにおいて、より深い戦略が求められる段階にある。

今後の導入においては、後継シリーズや強力な版権背景を持つ機種以外については、慎重な判断も視野に入れつつ、推移を見守るべきだろう。

◆プロフィール
𠮷元 一夢 よしもと・ひとむ
株式会社THINX 代表取締役。データアナリスト・統計士・BIコンサルタント・BIエンジニア。文部科学省認定統計士過程修了。現在は、IT企業のシステム開発やソフトウェア開発にアドバイザリーとして従事しながら、パチンコホール・戦略系コンサルタントとして活動。

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