【コラム】平成の名機が、令和の名機となり得るか?【音声解説あり】

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今回は、平成のプレイヤーと令和のプレイヤーの心理の違いについて、解説したいと思います。

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2003年、大都技研が世に送り出した『吉宗』は、711枚獲得のBIGボーナスと1G連チャンによる強烈な爆発力を武器に、20万台を超える大ヒットを記録しました。

「平成」の4号機時代を象徴する一台であり、当時のホール市場においても、長期稼働と高収益を支えた存在といえるでしょう。

そして令和の時代、スマートパチスロ(スマスロ)として復活した『L吉宗』は、711枚BIGと1G連チャンという、かつてのゲーム性を、現代に合わせて丁寧に再現し、当時の熱狂を新たな形で甦らせることに成功しました。

規制環境や技術的制約が大きく変わる中で、「吉宗らしさ」 をこれだけ違和感なく表現した点には、開発陣の高い技術力もうかがえます。

スマスロ吉宗が直面する市場と
プレイヤーの変容

それでは、今後同機が、かつてのように、パチスロ市場を席巻するような存在になっていくかといえば、導入台数から考えても簡単ではないと思います。しかし、その理由は決して開発側の努力不足ではありません。

むしろ、問題はプレイヤー心理と市場構造の大きな変化にあると思います。20年前、パチスロ市場を支えていたのは、「長時間遊技を楽しみ、耐えた先にある爆発を求める」プレイヤー層でした。彼らにとって、最大1,921Gの天井も、長い時間をかけて得られる勝利の美酒の一部であり、喜びを増幅させるスパイスでした。

しかし現代は違います。スマートフォンの普及により可処分時間の競争は激化し、パチスロもまた、他のエンターテインメントと「時間消費効率」を競わなければならなくなりました。

現代のプレイヤーは、短時間で結果が見えない遊技には耐性を持たず、より速く、より確実な快感を求める傾向を強めています。

加えて、遊技そのものにも効率化や期待値の最大化を重視する考え方が浸透し、「待つことに価値を見いだす」スタイルは次第に姿を消しつつあるのが現状です。

長時間耐久型ゲーム性は
市場ニーズに合致するか

スマスロ吉宗では、天井が1,921Gから999Gに短縮されたことにより、天国の192G以内で当選しなければ、その後はほぼ天井到達まで一直線という流れに変わりました。192Gから遊技しても、初当たりはBIGとREGは1:1、BIGボーナスでの1G連確率も20%程度となっているため、短期スパンで考えると、期待値が割に合いません。

「爆発すれば大きいが、爆発しなければ厳しい」というリスクを許容できるプレイヤー層は、かつてに比べ、著しく縮小しているように思われます。すなわち、スマスロ吉宗は、マス層(広範なプレイヤー層)よりも、ターゲットが絞られていると考えられます。

「耐える遊技スタイルに価値を見いだす限られた層」

スマスロ吉宗は、4号機時代のゲーム性を忠実に再現し、開発側としては理想的な機種を完成させました。それでもなお、当時とユーザーの受け止められたかに変化が生じた可能性があるとすれば、それは台の完成度の問題ではありません。変わったのは、プレイヤーの意識そのものです。

長時間耐久型の爆発待ち──。 かつては当たり前だった遊技スタイルは、今や一部プレイヤーにのみ受け継がれる「趣向」となりつつあります。すなわち、スマスロ吉宗は、「平成」と「令和」、二つの時代をまたいで変わりゆくプレイヤー心理を映し出す、鏡のような存在であるともいえるのではないでしょうか。

◆プロフィール
小島信之(こじまのぶゆき)
トビラアケル代表取締役

2018年まで首都圏、静岡、大阪に展開するホール企業で機種選定を担当。2019年に独立し、その分析力を活かしエンタープライズの全国機種評価等を開発。現在はメーカーの遊技機開発、ホールコンピュータの機能開発など、幅広い分野に携わり、変態的なアイディアを提供している。馬と酒とスワローズをこよなく愛する。

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