【特集|業界ブランディングのススメ】PART1|せめぎ合う、〝理想〟と〝現実〟

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社会の目線が変化するなか、業界のブランディングは〝イメージアップ〟よりも、現時点では〝信頼損失の回避〟を軸とした戦略の模索が続いている状態にあるといえるだろう。そして現場では、理想を胸に抱きながらも、日々直面する現実との葛藤が続いている。

変わる社会の目線と揺れ動く業界内認識

パチンコ業界は、長らく「大衆娯楽」としてのポジションを保ちながらも、社会的にはグレーゾーンに置かれてきた。ホール営業が風営法の下にあるという事実が、外部からのネガティブな先入観を助長してきた側面は否定できない。あるホールの幹部は、「一般世間から見れば、基本“けしからん商売”と思われているということだ」と、自虐気味に語るが、この認識は現場を中心に根深く存在しているのも事実だろう。

東日本大震災後には、当時の石原都知事による「パチンコ店が電気を煌々とつけている」との発言を受け、パチンコバッシングが加速した。首都圏近郊のホールは、節電休業を訴求するなど対応に苦慮した。

 


コロナ禍に伴う緊急事態宣言で全国98%超のホールが長期に渡っての休業を余儀なくされた。しかし、営業を続けた一部ホールには、マスコミが殺到し、業界バッシングが引き起こされた。

しかし、近年はその風向きに変化も見られる。業界全体として、「法令遵守」や「透明性の確保」に舵を切る動きで、行政当局の理解を得ており、遊技機の開発においても、かつてのように“ルールの盲点”を突くのではなく、業界が行政と正面から対話することで、新たな開発ルールの構築にまでこぎつけている。

とはいえ、制度的な業界差別は依然として残る。

例えば、コロナ禍でパチンコホールが公的融資のセーフティネット対象業種に組み込まれたものの、昨年の能登半島地震による公的融資の対象業種からは除かれるなど、外部からの支援や理解は追いついていない。これはいまだ業界が「制度的に守られていない存在」であることを如実に物語っている。

ネット時代における〝誤解の拡散〟とリスク

情報流通の速度が劇的に上がった現代において、イメージリスクは一層深刻だ。著名なインフルエンサーが、パチンコ業界に対して根拠不明な非難を展開すると、それが即座に拡散される。コロナ禍で八代英輝弁護士がテレビで発した「反社の一歩手前」という差別的なコメントはその象徴的な事例だ。ホール幹部は、「一般に知識人だと思われている人が、誤解をもとに業界に批判的な発言をする場合が一番タチが悪い。鵜呑みにする人も多く、イメージ悪化の要因としてはかなり大きい」と憤る。

インフルエンサーイメージ

パチンコ好きを公言する人気YouTuberやタレントなどが出てきたことは、今後の業界にとって明るいニュースの一つといえるだろう。(イメージ)

加えて、「パチンコとカジノの市場規模比較」といったテーマでも、ネットとグロスの違いすら理解されず、業界が不当に槍玉に挙げられるケースが後を絶たない。そうした状況に対しホール関係者は、「悔しいが誤解を丁寧に一つずつ反論していく姿勢が不可欠」と訴える。いかにして誤解や偏見による“イメージの損失”を防ぐかが、現実的な課題だ。

カギは〝文化的接続〟と〝情報流通の制御〟

一方で、ポジティブな兆しもある。かつては「著名人があまり声高に好きと言いづらい娯楽」とされていたパチンコに対し、近年では一定数のタレントやユーチューバーなどの動画配信者が「パチンコ好きを公言する」ようになってきた。ホール関係者は、レア台などがSNSで取り上げられることで、「稼働上昇の影響は確かにある」と語るが、同時に「繁盛店を作れるほど甘くはない」と現実的な視点も忘れない。

また、SNSは、情報の拡散力が強い一方で、コントロール不可能な部分が多く、イメージ戦略として思った通りの結果を、想定しづらいというSNS活用の限界点も見える。

こうしたなかで、指摘されるのが、「漫画などを用いたストーリーによるブランディング」だ。サッカーの『キャプテン翼』や、バスケットボールの『スラムダンク』のように、パチンコにも“物語としての魅力”を表現できれば、文化的イメージの転換が図れるという視点だ。「遊技機開発の裏側などには、ストーリー性がある」(ホール関係者)とする意見は、今後のブランディング戦略において一考に値するのではないだろうか。

遊技環境に関しても、“遊びやすさの向上”を掲げ、社会への理解を得ようともがいてはいるが、当然ながら、現場の実情は多くのホールで異なっている。ホール関係者は、「低貸し営業も、採算が取れるからやっているだけ。遊べる環境を整えようという意識は薄い」という。理念と実務の乖離は否めないところだ。

とりわけパチンコ運用については、パチスロとの収益構造の違いが事態を難しくさせている。ホール関係者は、「利益コントロールしやすいのはパチンコ。店としてはなんとかしたい。しかし、パチスロは多少古くても設定で客を呼べるが、パチンコでそれはできない。出玉といっても、店側が極端な放出をすることは不可能だ。となれば、遊技機側で賞球を増やすなど、遊べる環境と言うなら、設計段階から強制的にでも変えるしかないと思う。もっとも作られることはないだろうが」と悲観的だ。

業界イメージに対するマイナスの印象という点では、朝の並びを上げる人も多いが、ホール関係者は、「朝の並びを蔑んだ目で見る人がいるのは事実だろう」としながらも、「“この店は出るのか”とインプットされればそれでよい」と語る。ネガティブな視線を無理に否定せず、マーケティング的な接点と割り切る現実対応型の姿勢といえるだろう。

理想と現実の狭間で折り合いどうつけるか

いずれにせよ、パチンコ業界のブランディングは、いまだ“理想と現実の狭間”に苦しんでいるといえるだろう。かつては、社会的評価にある程度目を瞑っても、業績向上を狙う考えがあったが、現代では業績向上とイメージの両立をどうバランスをとって実現するかが問われているのではないだろうか。

すなわち、安易なイメージ戦略ではなく、各方面から浴びせられる誤解に対する丁寧な説明と、文化的・物語的な接続で、社会との共存を実現していく。それが、これからの業界がとるべき“現実的なブランディング戦略”なのかもしれない。

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