フード業界の企業間取引のデジタル化サービスでトップを走るインフォマート。紙の取引が多いパチンコ店のデジタル化に意欲を見せる中島社長にこれまでの歩みと遊技業界への想いを聞いた。

PROFILE●なかじま・けん
1966年生まれ、東京都出身。早稲田大学卒。三和銀行(現・三菱UFJ銀行)を経て、2010年インフォマート入社。取締役、経営企画本部長、常務取締役を経て、2022年代表取締役社長に就任。㈱ジェフグルメカード社外取締役(現任)。趣味は家族サービス。座右の銘は「心の裸族」(出会った時から本音で接すれば、信頼関係が生まれる)。
人生の60%はラグビー
「本気サイクル」を体現
「やんちゃで目立ちたがり」と自身の幼少期を振り返る。6歳から11歳まで、父親の仕事の関係で南アフリカで暮らした。異国の自然の中を裸足で駆け回った日々が、根っからの快活さと、のちの自らを突き動かす原動力となった。中学時代は水泳に打ち込み、50メートル自由形で全国9位。地元の東京・世田谷区の中学生記録を更新したこともある。
高校は早稲田実業へ。水泳部に入るつもりだったが、部の空気が緩かったことと、クラスメートの強い誘いを受けてラグビー部に転向した。
これが人生の転機となった。
「僕の人生の60%はラグビー。今あるのもそのおかげです」と言い切る。
早稲田大学に進学後も迷わず体育会ラグビー部へ入部した。
「毎年100人が入部し、1学年40人になるまでしぼられるのですが、4学年で部員は約160人。赤黒ユニフォームに1回も袖を通さないで卒業する人が8割でした」。
苛烈な競争の中、不断の努力の末にレギュラーの座を掴んだ。
そのラグビーが教えてくれたのが、「本気の素晴らしさ」だ。本気の努力が、真の感動・達成感を生み、もっと本気になれる――。このサイクルを回せる人間や組織は確実に成長する。
それを体現したのが、1987年12月の「雪の早明戦」。格上・明治大学を破ったとき、人生最大の感動を味わった。

中島社長が「本気サイクル」と呼ぶ成長サイクル。スポーツでもビジネスでも当てはまる。「本気で努力」すると、「上達する」 → 「試す」 → 「勝つ or 負ける」 → 「本気で感動する or 悔しさを知る」 → 「もっと勝ちたい or 二度と負けたくない」 → 「さらに本気になる」——というサイクルが出来あがる。このサイクルを回せる人間や組織は確実に成長し、成長スピードも速いと中島社長は熱弁する。
ビジネスの世界で
雪の早明戦を超える
大学卒業後は都市銀行に入行。ベンチャー企業との事業開発や出資案件を手掛けるなかで、創業間もないインフォマートと出会う。
「何百社とベンチャーをみてきましたが、インフォマートのBtoBプラットフォームは世の中を変えられると確信しました」。
10年に亘って関係を深め、2010年にインフォマートへ転職した。
印象に残っているのは2015年の請求書サービスの立ち上げという。「雪の早明戦」に匹敵する達成感をビジネスで得ようと「絶対に届かないノルマ」を掲げ、1年間奔走したが、結果は大失敗。翌年、幹部と激論を重ね、努力をすればギリギリ届く目標ラインに修正。チームの士気が再び高まり、見事に目標を達成した。チームはその年の社内MVPにも選ばれた。
すべての業界に
BtoBのデジタル化を
インフォマートは現在、フード業界の企業間取引のデジタル化サービスでトップを走る。次なる目標は、すべての業界にBtoBプラットフォームを広げること。なかでも紙の請求書や発注書が多く、業務が煩雑化している遊技業界に目を向けている。
「遊技業界は、功罪の“罪”の部分ばかり取り上げられていますが、本当は地域のコミュニティであり、健全な娯楽を提供し、地域の雇用・経済に貢献するなど、“功”の部分がすごく大きい。その価値をもっと高めていただくためにも、BtoBの業務をデジタル化し、無駄な作業、負担を減らしてもらいたいですね」。
BtoBプラットフォームですべての業界の取引構造を変え、社会全体を前進させたいという中島社長。ビジネスでも「雪の早明戦」を超える感動を得ることを目標に、本気サイクルで挑戦を続けている。

企業間のさまざまな帳票(見積、発注、請求、納品など)を、PDFに変換することなく、デジタルでやり取りするサービス。幅広い業界にフィットする帳票フォーマットで、帳票業務を標準化・効率化し、強固な経営基盤の実現に貢献する。

本社/東京都港区湾岸1-2-3 汐留芝離宮ビルディング13階
【上場市場】東京証券取引所プライム市場
【設立】1998年2月
【事業内容】BtoB(企業間電子商取引)プラットフォームの運営
【従業員数】732名(連結)、704名(単体)(2025年3月末現在)