【コラム】吉宗の“ミスマッチ運用”を防ぐ─高単価×遊技ハードルが低い設計のギャップをどう活かすか

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4号機時代から長く続くパチスロ『吉宗』シリーズ。2024年4月に登場した最新作『L吉宗』も既に多くの注目を集めており、コイン単価4.0円という数値から、いわゆる高射幸AT機として分類されています。しかし、本機は一見派手なスペックの印象とは裏腹に、色押しATに対して不安や苦手意識のあるユーザー層も含め、幅広く受け入れられる設計となっています。本稿では、そうした設計上の特徴に触れながら、ホールにおける運用の参考となる視点をお伝えしたいと思います(文=ジェイさん@発信する遊技機クリエーター/J-BEAT合同会社代表)。

◆色押しATの“障壁”を下げる設計とは

『L吉宗』はAT中に色押しが求められるタイプではあるものの、押し間違えた際にも3枚の払い出しが保証されており、目押しに失敗してもメダルの損失は発生しません。また、正しい目押しができるまで再度チャレンジ可能という仕様になっており、プレイヤーにとって心理的なハードルが大幅に下がった設計です。

さらに、色ナビ自体も約50%の確率で適当押しでも正解となるため、目押しに自信がないユーザーでも、実質的に711枚獲得が可能となっています。これに加えて、ボーナス揃えにおいても疑似遊技を採用しており、揃える過程でのメダル損失が発生しない点も特徴的です。

こうした仕様は、従来の色押しAT機とは一線を画しており、「押し順ATには慣れているが、色押しATには抵抗がある」といったユーザーに対する“ステップアップ機”としての性格を持ち合わせています。

◆通常時の“取りこぼし不安”を排除する構造

通常時においても、本機ではチェリーや松といったレア役が成立している際、仮にリール上に対応図柄が目視できなくても3枚の払い出しが保証されているため、プレイヤーにとっては「取りこぼしたかも」という不安が生じにくい設計となっています。

また、通常時にはPUSHボタンから「ちび姫ナビ」を起動することができ、演出の意味や打ち方のコツを案内してくれる機能が搭載されています。あくまで任意表示型の補助機能であり、打ち慣れたユーザーにとっては非表示のままでも問題なく遊技が可能です。こうしたユーザーの習熟度に応じた柔軟な設計も、本機の注目すべきポイントのひとつです。

◆ホールで意識したい導線設計と伝え方

本機を運用する際、ホール側で意識しておきたいポイントとしては、「吉宗=ヘビーユーザー向け機種」という固定観念とのギャップをどう埋めるか、という点が挙げられます。

具体的には以下のような工夫が有効です。

・「色押しミスしても損なし」「誰でも711枚取れる」といった設計意図をPOPなどで丁寧に伝える
・「ちび姫ナビ」の存在を案内し、初めて触れるユーザーの不安を軽減する

「出玉性能」に焦点を当てるのではなく安心して遊技できるという「打ちやすさ」を訴求する施策を通じて、これまで敬遠されがちだった“色押しAT”に対する心理的ハードルを下げることができれば、新たなプレイヤー層の掘り起こしや既存顧客の稼働継続につながるでしょう。

◆さいごに

派手な仕様や過去のイメージから「荒い機種」と見られがちな本機ですが、設計の細部を見ていくと、打ち手の不安やミスに対して丁寧にサポートする“やさしい設計”が施されていることが分かります。

今後、BT機やミドルスペック型のAT機など、“遊びやすさ”に注目が集まる中で、本機のように打ちやすさと高単価を両立したスマスロは、ホールの武器として十分な存在感を発揮する可能性があります。

吉宗というタイトルに備わった先入観を超え、その実像を正しく“伝える”ことで、本機の稼働ポテンシャルを最大限に活かしていただければ幸いです。

◆プロフィール
ジェイさん@発信する遊技機クリエーター
J-BEAT合同会社代表

発信するプロ遊技機クリエーター兼ライター。過去遊技機メーカー3社で勤務。在籍中に10数機種の遊技機開発に携わる。現在は法人を経営しつつ、フリーのクリエーターとして遊技機開発に従事。また、メーカー所属では出来ない発信、評論活動を行っている。
X(旧Twitter):https://twitter.com/jsan65536

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