北海道を中心に《ひまわり》の屋号で33店を展開する合田観光商事のAI戦略が新たな展開を見せている。昨年末までに、AI活用の有無による差異を実営業で検証。その効果をあらためて確認するとともに、さらなる業務効率化を果たすべく新たな一歩を踏み出した。陣頭指揮を取る同社執行役員・営業管理部の小濱邦英部長に話を聞いてみた。
全社的な業務効率化 AI活用でその第一歩
──そもそも、なぜAIを導入しようと考えたのですか。
2022年6月からAI導入プロジェクトをスタートしたのですが、大きなきっかけは、100年企業を目指すため、現行業務の改善は不可欠だと考えていたからです。
──どんな懸案があったのですか。
店舗ごとに業務の最適化が進行し、全社的な連携や業務効率化が図れていなかった点です。特にホール営業では、データが膨大で、店長によって分析にバラつきがあり、時間も要しました。色々思案しましたが、デジタル技術を活用し、精度の高い経営を実践するには、AIが最適解だと考えました。
──それまで、デジタル化の浸透状況はいかがだったのですか。
実営業ではすでに様々なシステムやデータを活用していましたが、トータル的な業務改善のデジタル化は未着手でした。今回のAI導入で、はじめてDX(デジタルトランスフォーメーション)化の推進を始動させたことになります。
──導入はどう進めたのですか。
最初は、業務改善ポイントを洗い出す作業です。個別では、ある程度最適に業務が回っていることは明らかでしたので、小手先ではなく、根本的に変革しないと次のステップに進めないと考えました。
──新しい技術の導入に抵抗感を抱く方はいませんでしたか。
まずは、新しいことに取り組むことは面白いことだということをわかってもらう必要がありました。プロジェクト開始前に、先端技術を活用した新規事業創発のワークショップを開催しました。それにより、AIを含む先端技術への理解を促し、会社として新しいことに挑戦する風土であることを体感してもらえるように努めました。ただ、AIがホール営業にどう影響を及ぼすかを理解することは簡単でなかったと思います。しかし長期的な観点で、人が変わっても、業務を支障なく継続できる仕組みを構築していく必要性を訴えました。
──業務の属人化を可能な限り解消するということですね。
それもありますし、今後、人材採用が今以上に難しくなってくることが予想されます。そのため、より人材育成に管理職が時間を割くためにも、業務の効率化を図っていくことが必要だと考えました。
利益の最適化図り業績アップに寄与
──AIを用いた営業では何を主眼に置いたのでしょうか。
利益の最適化です。しかし現場ごとにノウハウがある一方、経営サイドが求める予算も存在します。そこにAIが最適な粗利目標を可視化して提示することで、両者の認識の隔たりを埋めることが可能になります。これは大きいです
──AIから示された指摘で改善が図れたケースはありますか。
例えば、昨年ある店舗が適正粗利よりも低いため、AIから改善指摘がありました。その指摘に沿って営業すると、数ヵ月ほどで稼働が上昇し、他店舗と比較しても利益率が相対的に高くなりました。
──AIには何を重視したデータが用いられているのでしょうか。
アウトや粗利に影響を及ぼすデータの検証を繰り返し、今は台数やレートなど、30項目ほどに絞り込んでいます。
──現時点での課題はありますか。
AIを活用した業務に合う人事評価制度への見直しです。AIの指示通りに結果を出す店舗が横並びになった場合、優劣が付きません。そのため、人材育成や顧客対応など、組織へのプラス要素を評価することが重要となってきます。そしてあくまで、AI導入は、DX化に向けた一歩に過ぎません。これからは、DX推進部門の創設など、AI導入をきっかけに社内変革を進めていければと考えています。
──他にAI活用を考えている業務はありますか。
ちょっとした日々の問題をAIで簡素化していきたいです。特にコストと手間がかかっている領域ですね。世の中には、AIを活用した効率化ツールが数多くありますが、業界特有の習慣・業務に沿ったツールにトライしていきたいです。今注力している販促物作成などもその一つです。
──販促物作成への活用ですか。
通常のAIですと、今は「パチンコ」というワードへの対応が難しい状況です。これは、ネットの世界に「パチンコ」に関する画像やイラストの情報が少ないからなのですが、実は今、パチンコ業界に特化した生成AIツールで、圧倒的な効率化を図る取組みを推進しているところです。これによって、日々の販促物制作に費やす労力を著しく抑制することが可能になります。操作性も簡単です。製品はまもなく完成いたしますので、近く公表できると思います。
──今後のAIとの付き合い方については、どう考えていますか。
今弊社でAIが管理している割合は、全体の2、3割程度です。今後は、遊技機管理をはじめ、AIが担う業務を段階的に拡大していければと思います。加えて、SNSでもAIを活用するなど、新たなチャレンジにも踏み出したいですね。ただ、AIの品質は、取り込むデータの質と量に左右されますので、もし関心を持った他のホール企業様がいれば、一緒に協業を推進していければいいと考えています。
▼合田観光商事|パチンコひまわり
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