パチンコホールに新たな価値を創造
~ キーワードは「やすらぎ」 ~
2021年以降、マルハン北日本カンパニー(韓俊代表取締役社長)はM&Aを軸に12店舗を新規出店。店舗開発・建築を担う三原氏は「ホールに新しい価値を創造しなければならないという使命感が我々を突き動かしている」と語る。
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──ここまでの展開をどのように総括していますか。
これだけ余暇が多様化するなかで、人々の選択肢として、パチンコの優先順位は落ちてきています。そのため、私たちだけではなく、業界全体を盛り上げていかなければならない、という強い想いがあります。私たち北日本カンパニーは観光事業にも注力していますが、ホテル・旅館には国内外の広域からお客様がお見えになります。
しかしパチンコ店は基本的にその地域の方がほとんどで、商圏から店舗が無くなると、住民の方のマインドからパチンコが消えていきます。歯止めをかける目的もあり、この約4年間では12店舗の新規出店をしましたが、ただ今までと同じような店舗を作っても来店動機にはならないと思います。改めてパチンコの面白さを掘り下げ、磨き直し、新しい魅力や価値を提供していくことが重要になると考えています。
トップカンパニーではなくリーディングカンパニーに
──パチンコをもう一度磨き直すとはどのようなことでしょうか。
私たち北日本カンパニーが目指すのは、売上や店舗数といった規模を追求するトップカンパニーではなく、パチンコファンを増やし、業界全体の活性化に貢献していくリーディングカンパニーとしてのポジションです。産業を未来に繋いでいくためには、ここでもう一度パチンコの価値を捉えなおし、魅力を尖らせ、その楽しさを広げていくことが不可欠です。そしてそれは、リーディングカンパニーとしての使命だと考えています。
──《マルハン仙台苦竹店》(昨年12月末開店)では斬新な休憩所を隣接しました。これもその取り組みの一環でしょうか。
私たちは、パチンコの意義は何かと問われた時に、「コト」と「場」という言い方をします。「コト」はパチンコ遊技そのものであり、対して「場」は空間としてのパチンコホールです。今回の《仙台苦竹店》では、この「場」づくりにこだわりました。いかに魅力的な「場」を創出するかを考えた時に浮かんだのが、これまでにない休憩所です。来店されるお客様へのアンケートを実施しても、休憩所の充実は常に上位に入ります。
──狙いはどこにあるのですか。
私たちは、「マルハンイズム」のなかで、お客様への提供価値の一つとして、「やすらぎ」を掲げています。しかし、どのホールを見ても今や休憩所は均質化しており、「やすらぎ」について本質的なものを提供できていないのではないか、というジレンマがありました。社会に目を向けると多くの人がストレスを抱え、余暇に「やすらぎ」を求めており、一つの大きなビジネスになっています。つまり、ファンにも社会にもニーズがあるというピースを集めると、今までにない休憩所が、新たな価値創造に繋がると考えました。
──どんな特色があるのですか。
端的に言うと「ぼーっ」とできる、「無」になれる没入空間を作ることにしました。遊技スペースでは、ワクワク、ドキドキしていただく一方、休憩所では本当にリラックスできるという、サウナに近いイメージです。それこそ、サウナが「サ活」であるなら、こちらはパチンコで整ってもらう「パ活」を訴求してもいいかも知れません。ホールでの刺激と、休憩所での深いやすらぎによる交互浴を繰り返すことで良い循環が生まれるのではないでしょうか。そしてポイントは、来店に「リラックスしにいく」という新たな理由が生じるということです。
内外装にも新たな発想「コミュニケーションデザイン」
──《マルハン敦賀店》(昨年12月末開店)も、前年2023年開店の《福井舞屋店》と同じく、斬新な店づくりでした。
私たちは「コミュニケーションデザイン」と言っているのですが、これまでにない外観や、北日本カンパニーとして新たなカラーリングを採用しています。ベースデザインは複数ありますが、幸運、成功、金運上昇、おもてなし、などその一つ一つに意味が込められており、店舗のコンセプトやロケーションに合わせて組み合わせています。内装もコーポレートカラーである赤を用いずに、上質な青を基調としました。
──なぜ青だったのですか。
プライベートでもいくつかの施設を訪れる中で、とある施設の絨毯が深い海のような上質な青で、そこからヒントを得ました。また当社が協賛するプロバスケの強豪「福井ブローウィンズ」のチームカラーが青であったことも理由です。
──反対意見はなかったのですか。
最初の《福井舞屋店》では反対もありました。青は気持ちが落ち着く色ですので、遊技空間としては適切ではないのではないか、と。業界でも前例がなく、踏み切るのに勇気が必要でした。しかし結果的に《福井舞屋店》は県下トップの月間稼働率60%を誇る繁盛店になっています。従来の赤一色ではなく、落ち着く色を採用したことで居心地の良さに繋がっているのかもしれません。
──先行して昨年11月にオープンしたパチスロ専門店《マルハンSLOT仙台一番町店》はいかがですか。これまでの12店舗で最も少台数の規模になりますが。
パチスロが好調という流れと、繁華街型小型店のノウハウを獲得し、今後の出店可能性を拡げるという狙いで挑戦しました。
──出店ターゲットも変化しているということですか。
これまで見送ってきた立地でも、スマート遊技機を活用した営業の可能性を探るということです。例えば繁華街の中心地では、大型物件自体がほとんど存在しませんので、新たな出店形態を模索するという意味合いもあります。
──今後のM&A市場に対してはどう向き合っていく考えですか。
引き続き、積極的に出店を検討していきます。M&Aを手掛けるようになった当初と比べると、特にここ1年は取引キャッシュの大きさに関わらず営業を引き継いで貰えないか、というお声が増えています。
──パチンコ事業を手放す要因には何があると推察されますか。
やはり一番大きいのは、業界に明るい未来を描けていないことだと思いますが、パチンコに限らずどの産業でも過去より規模は縮小しており、もはや量的成長は望みにくい時代だとも思います。そのような中で、日本独自の素晴らしい娯楽であるパチンコを未来に繋いでいくために私たちがすべきことは、まずは質的な成長を続けることであり、多くの人の余暇にパチンコを選択して頂くための様々な取り組みを模索し、やり切ることは至上命題だと考えています。
仙台拠点の社会人野球始動 狙いは地域貢献+人材採用
──今年は、春から社会人野球部が本格的に始動します。
北日本カンパニーの中でも多くの店舗がある仙台の地域活性化への貢献に加えて、人材採用も大きな狙いです。
ここまで有効求人倍率が高まり、どこでも人手が足りない今の社会においては、これまでと同じような採用活動では人材を確保できません。そのなかで、野球をやりたいが、社会に出る必要がある若者たちの受け皿になれれば、という思いです。引退後のセカンドキャリアも提供できます。それに選手が実際に店舗で働いているため、お客様やファンにとっては直接選手とコミュニケーションが取れるということも、また一つの新しい提供価値になれば、という期待もあります。