【特別インタビュー】多角化経営戦略[病院施設のM&A]
㈱NRC一級建築士事務所 鶴田一代表取締役

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《横浜町田関節脊椎病院》。既存の外観にあったクラシカルなアーチ形状を壊すのではなく、強調することで新たなモチーフを創造。
※International Design Awards 銅賞

時流やトレンドを掛け合わせた先進的な建築デザイン・設計を提案する㈱NRC一級建築士事務所。遊技人口の減少に歯止めがかからない中、再浮上するにはどのような思考が必要なのか。鶴田一代表取締役に建築関連の分野から語ってもらった。

遊技人口は一部企業が独占

──建築関連の分野で業界に数々の貢献を果たしてきた鶴田社長から見て、今の業界はどう映っていますか。
弊社では長年、アミューズメント業界で建築関連のデザインや設計に携わってきました。パチンコ業界においては早くから、ユーチューブやXを駆使したSNS戦略と建築設計を融合させた提案を多くさせていただきましたが、変化を恐れたのか、結果どの法人様にも取り入れていただけませんでした。そういった企業様の一つである某大手法人様は昨年倒産に至ってしまいました。

──業界では遊技人口の回復が喫緊の課題となっています。
遊技人口の減少に歯止めがかからないのは、新しい層を取り込めていないことが最大の要因です。新規層を取り込むためには当たり前ですが、その層に合わせた戦略が必要であることは周知の事実です。そのことを分かってはいるものの、新しい戦略を実行する、或いは新しい世代に彼らのやり方で任せることが今の日本、特にこの業界においては中々出来ることではありません。それが現状の結果であることは明白で、今後はそれらをやってきた企業だけが減少していく遊技人口を独占していくことでしょう。重要な点は、残念ながら今から実行しても、もう遅いということです。

──ふるいにかけられた企業は衰退していくほかないのでしょうか。
悲観的なことばかり申し上げてしまいましたが、楽観的な内容としては、まだ体力がある企業は経営を多角化していく選択肢があります。今から何をやっても衰退していく業界にしがみつくよりは、限りある資本を別へ投資して活路を見出す方がよほど将来性もあります。勿論、今までも多角化経営は行われてきていますが、より専門的な業界へ参入することは少なかったと考えています。

医療分野が大きな
ビジネスチャンス

──専門的な業界というと。
他が参入しようと思わないもの、言い方を変えれば“参入出来るとさえ思われていない”業界が大きなビジネスチャンスを秘めています。将来性も考慮した狙い目としては医療業界が考えられます。病院施設を経営・運営することによる社会貢献は地域住民、ひいては企業としての評価を大きく高める要因ともなります。

──病院施設のM&Aは可能ということですか。
弊社では多くの病院施設の建築設計にも携わってきています。近年の例として、IT産業から医療法人をM&Aし、病院、診療所施設を全国展開していく某企業様とともにチャレンジしています。病院施設はまず、病床の承認申請から始まります。その数は各都道府県で毎年決められた数がありますのでいつでも開院出来るわけではありませんが、既に病床を確保している病院施設に資本投入するといった形態など、参入方法も様々です。医者や看護師をリクルートして一から病院を作っていくことも勿論可能ですし、弊社はそういったプロジェクトにも多く参画して参りました。

──鶴田社長が手掛けたプロジェクトの中で、特に印象に残っているものはありますか。
弊社の実績の中で、既存にある建築ストック(車展示場)を活用して、病院施設へ用途変更するプロジェクトがありました。近年の空きビル問題を解決しつつ、地域に専門医療を提供する病院施設の開院は、経営・運営企業様の株主に対して高い評価を得る結果となり、同時に海外建築賞も受賞、世界的にもその取り組みが評価されました。

このように現在では、一つの業界にしがみついていくこと自体がリスクとなっており、医療業界のような社会貢献度の高い産業へ参入していくことで、企業の価値を高めていくことが必須の社会になってきているのではないでしょうか。

外来待合スペース。外観にあるモチーフを内観でも連続させることで一体感のある構成となっている。

◆プロフィール
鶴田 一(HAJIME TSURUTA)
株式会社NRC一級建築士事務所
代表取締役
博士(工学)、建築家
国内外建築賞、芸術賞多数受賞

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