【コラム】2024年パチンコ市場の変容 
~分散するホールの選択肢と希薄化するメーカーの個性~

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2024年のパチンコ高射幸市場において、プレイヤー創出量(※各メーカーがリリースした機種で創出したプレイヤーの割合。文中及び表では、各メーカーが 当年にリリースした機種で創出したプレイヤーの割合を表している)と遊技時間の変化は業界全体の動向を理解する上で重要な指標である。

2024年のプレイヤー創出量はトップメーカーでも2.9%にとどまり、2023年の上位メーカーが4%以上を記録していた状況と比較して大幅に減少している(※下図参照)。

この要因として、単一機種あたりの販売数の減少が挙げられる。業界全体の厳しい景況が背景にあるものの、この状況を打開するためには、メーカーが市場で信頼を得る「本命機種」を創出し、単一機種でのプレイヤー創出能力を高めることが求められる。

2023年は「ビスティ」「大都」「サンセイ」「SANKYO」などがプレイヤー創出において際立った貢献を果たしていたが、2024年はその差が縮小。どのメーカーも同質的な印象を与える結果となった。これにより、ホール側の選択肢は分散し、メーカーごとの個性が薄れ、製品選定の基準が曖昧になる可能性が高まっている。

プレイヤーの遊技時間にも顕著な変化が見られる。2024年の平均遊技時間は前年と比較して短縮傾向にあり、60分以上遊技するプレイヤーの割合は大幅に減少した。

この減少は、遊技機の魅力がプレイヤーを十分に引きつけられていない可能性を示唆している。遊技時間は、遊技機がどれだけ面白さや魅力を提供しているかを間接的に測る指標であり、その低下は業界全体の課題を反映するものである。

遊技時間の減少に影響を及ぼした要因には、機種設計そのものに加えて、近年の高射幸機における玉単価の高騰が挙げられる。プレイヤーにとって遊びやすい価格設定が欠如していることが、粘り強い遊技を阻害する主な要因となっている。

さらに、遊技時間が短縮することでプレイヤー体験が限定的となり、満足度の低下につながるリスクも高まる。このような状況に対し、業界全体が真摯に問題と向き合い、機種の魅力を向上させる取り組みが求められる。

これらの変化を踏まえると、プレイヤー創出量と遊技時間という指標は、単なる数値を超えて、プレイヤー心理や遊技機の設計思想、さらには業界全体の方向性を映し出す鏡のような存在である。ホール側はこれらの指標を十分に理解し、購買判断や運営方針に適切に反映させる必要があるだろう。

メーカーは単一機種ごとの訴求力を向上させる努力に加え、業界全体で抱える問題を共有し、解決に向けた協力体制を築くべきである。

プレイヤー創出量と遊技時間の変化は、遊技機市場の現状を象徴するものであり、これらを改善するための戦略が業界の未来を左右すると結論づけられる。

◆プロフィール
𠮷元 一夢 よしもと・ひとむ
株式会社THINX 代表取締役。データアナリスト・統計士・BIコンサルタント・BIエンジニア。文部科学省認定統計士過程修了。現在は、IT企業のシステム開発やソフトウェア開発にアドバイザリーとして従事しながら、パチンコホール・戦略系コンサルタントとして活動。

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