スマスロは導入から3年目を迎え、年度末には設置比率がメダル機と同等になるなど、市場でも確固たる地位を築きつつあります。本コラムでは2024年度のパチスロ市場を振り返りながら、2025年度の展望について考察していきます。(文=ジェイさん@発信する遊技機クリエーター/J-BEAT合同会社代表)。
1年前に寄稿したこちらのコラムをお読みいただくと、さらに内容を掘り下げてお楽しみいただけます。
【コラム】2023年と2024年度のスマスロのトレンド違いについて
2024年度のトレンドを振り返る
1.スマスロとメダル機の比率
2024年度は約80機種が新台リリースされ、75%がスマスロ、25%がメダル機という比率でした。メダル機については、有利区間6,000Gへの緩和が行われた6.6号機の登場が期待されたものの、主な対応機種としては12月に登場する『沖ドキ!ゴージャス』のみでした。
各メーカーのAT機開発がスマスロへ完全にシフトする一方で、メダル機の中心であるノーマルタイプはニューパルサーシリーズ、ジャグラーシリーズ、ハナハナシリーズなど、定番機のリリースのみとなりました。
2.ヒット機種から見える市場の変化
2024年度の高稼働機種を分析すると、『L 防振り』『Lゴッドイーター リザレクション』『L 真・一騎当千』など、コイン単価3.5円以下のミドルスペック帯の機種が好調でした。
また、大きな特徴として2023年度に登場した『L北斗の拳』『LモンキーターンV』『L戦国乙女4』といった高稼働機種が、2024年度も引き続き安定した稼働を維持していることが挙げられます。
一方、タイトルで引きのある『L聖闘士星矢 海皇覚醒』『L真北斗無双』『L戦姫絶唱シンフォギア正義の歌』『Lゲゲゲの鬼太郎覚醒』『Lリゼロ2』など、コイン単価4.0円を超える機種は苦戦を強いられました。
この要因として、スマスロ初期と異なり、出玉性能の高さでの訴求力が弱くなったことがあげられます。2024年度は打ち手の多くがゲーム性を重視して機種を選択する傾向が顕著となり、市場のニーズが変化した1年でした。
2025年度の展望
1.BT(ボーナストリガー)機の登場
2025年上半期には、新機能「ボーナストリガー」を搭載した機種(BT機)が登場予定です。AT機やRT機では搭載できない、ノーマルタイプ限定の新機能として、パチスロ市場に新たな風を吹き込むことが期待されます。
2.AT機スマスロの設計トレンド
新台開発においては、今年度ヒット機の多かったコイン単価3円台半ばの射幸性で、ゲーム性を重視した、より多くの層に受け入れられる方向性が引き続きトレンドになると予想されます。
2023年度に期待された「有利区間の終わり方と新しい有利区間の始まりを意識しないゲーム設計」は、2024年度では思ったほど実現されませんでした。しかし、高スペックからゲーム性重視にシフトした今こそ、この設計を活かした6号機らしくない機械の登場が望まれます。
3.市場予測
2025年度中にはスマスロの設置比率が過半数を超えることが見込まれますが、メダル機からスマスロへの入れ替えは概ね頭打ちとなり、ホールの力の入れ所としても新台購入よりも既存の高稼働機運用にシフトする傾向が強まると予想されます。
2024年に登場したヒット機が一定数において2025年度も稼働し続けると思います。『Lゴッドイーター リザレクション』や『Lモンスターハンターライズ』など、2025年も稼働を伸ばしていく可能性が高いと考えています。
さいごに
2025年度のパチスロ市場は、より遊技性を重視した新たなパチスロの形が模索される1年になりそうです。
特にノーマルタイプではBT機の登場、ATタイプでは「有利区間を意識させない設計」の実現が6号機パチスロの新たな可能性を開く鍵となります。既存のヒット機と新機軸の両輪で、さらなる市場の活性化を期待していきましょう。
◆プロフィール
・ジェイさん@発信する遊技機クリエーター
J-BEAT合同会社代表
発信するプロ遊技機クリエーター兼ライター。過去遊技機メーカー3社で勤務。在籍中に10数機種の遊技機開発に携わる。現在は法人を経営しつつ、フリーのクリエーターとして遊技機開発に従事。また、メーカー所属では出来ない発信、評論活動を行っている。
X(旧Twitter):https://twitter.com/jsan65536