【コラム】アウトをモノサシにした機種評価は危険!!

投稿日:2024年8月22日 更新日:

本稿執筆は7月23日。パチンコ市場に『e慶次~傾奇一転~』や『Pアズールレーン199』ほか、『P貞子』などの機種が登場したタイミング。本稿では機種評価を行う際の重要な視点についてまとめることとする(文=𠮷元一夢/㈱THINX代表取締役)。

大体の場合、導入後の機種評価を行う上ではアウトというデータを重要視することが多いと思うが、当社ではそうしたデータだけで判断を行うことは危険だと考えている。

なぜなら、アウトは結果の値であって、どのように構成されているかまでは判断できないと考えているからだ。少しわかりにくいと思うので、アウトを算術から要素分解して考えてみると次のようになる。

■アウトの要素構造
アウト=1人あたりアウト×台あたり遊技人数

結果の値となるアウトが1人の粘りによって作られているのか(1人あたりアウト)、あるいはプレイヤーの創出量(台あたり遊技人数)によって作られているのかでは、評価は全く違ってくる。たとえば、導入週のアウト平均が4万個の機種が2機種あったとしよう。

結果の値の40,000個は、いずれも同じであるものの構成要素の結果は違っている。Aの機種は1人の粘りからアウトを構成している一方で、Bの機種はプレイヤーの創出量から稼働を構成させていることがわかる。

■アウト4万個の要素構造
A/1人あたりアウト:5,000個   台あたり遊技人数:8人
B/1人あたりアウト:4,000個   台あたり遊技人数:10人

では、AとBどちらが評価されるべきか。基本的に1人の粘りを誘発できているAと考えている。プレイヤーが粘る様子は、ある種、プレイヤーの心理状態を表していると当社では考えており、粘るという行為は「面白い・魅力的」であると感じるからこそ引き起こせる事象であり、ユーザーインサイトをデータ化した最たるものだと考えている。では、実際のデータを使って稼働構造から考えてみることとする。

7月に登場したLT機の稼働構造は、1人の粘りで構成している『Pアズールレーン199』とプレイヤーの創出量で構成させている『P貞子』という恰好にわかれた。また、『Pまどマギ3』は7月に入っても1人の粘り、そしてプレイヤーの創出量は依然として高い水準を維持しており、あらためて再評価される結果となっている。

このようにアウトを分解することで、より正しい理解に近づける。たとえば、『Pまどマギ3』や『P貞子』のようなレベルの台あたり遊技人数であれば、あきらかな供給不足であると考えられるため増台の可否についての議論は、データに基づいた建設的なものとなっていくだろう。

さらに、そこに1人の粘りなどのデータが合わされば、機種の寿命までもが見えてくるので、こうした視点から掘り下げることも重要視してみてはいかがだろうか。

◆プロフィール
𠮷元 一夢 よしもと・ひとむ
株式会社THINX 代表取締役。データアナリスト・統計士・BIコンサルタント・BIエンジニア。文部科学省認定統計士過程修了。現在は、IT企業のシステム開発やソフトウェア開発にアドバイザリーとして従事しながら、パチンコホール・戦略系コンサルタントとして活動。

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