「最近尖ったATスペックを搭載したパチスロが増えている印象が強い中、今後、純増3枚未満の低純増仕様と、純増7、8枚出る高純増機のうち、どちらが主流の仕様になっていくのか」といった質問をいただきました。今回のコラムでは高純増ATについて、ご質問に回答しつつ、今後の展望を交えて解説させていただきます(文=ジェイさん@発信する遊技機クリエーター/J-BEAT合同会社代表)。
まず、結論から言いますと、高純増AT搭載タイプが主流となると考えています。
※高純増AT仕様のメリットとして1日にATで出せる出玉量の優位性がありますが、こちらに関しては過去のコラム『6号機パチスロを評価する上で押さえておきたい大事な数値』も参考にして下さい。
ただし、一概に高純増AT機とはいえ、以下に挙げる3点のカテゴリにおいてそれぞれヒット機種がでてくると考えています。
目次
高純増ATと減算区間を織り交ぜたAT仕様
6号機最初のAT機を覚えているでしょうか。2018年に登場した「Sアメリカン番長HEY!鏡」です。まさに、この機種が高純増ATと減算区間を織り交ぜたAT仕様を搭載していました。
6号機パチスロを設計する上で、遊技機規則上のネックは400Gで出玉率の上限が220%(差枚+約1,200枚)という部分です。つまり、400G間ATを消化し続けるのであれば、純増3枚が限界という事です。
そのため、高純増ATを搭載する上で必須となるのが減算区間です。6号機初期はこの「減算区間」というワードがネガティブに感じた打ち手も多かった事でしょう。
しかし、6号機の歴史を重ねる中で、『S甲鉄城のカバネリ』や『L北斗の拳』のように減算区間こそが、その機種最大の叩き所(楽しい所)とゲームデザインされる機種が登場します。
6号機初期からゲーム設計され、直近多くのヒット機種に搭載されているタイプでもある事からこの傾向は続く事でしょう。
低純増ATをベースとしつつも上位ATで高純増ATとなる仕様
こちらは、有利区間ゲーム数が無限となったスマスロで生まれた文化といえます。特にここ数ヵ月この手のタイプが多く登場しています。
スマスロで設計するAT機は射幸性の高いものが現状多くなっています。これまでのAT機で差枚2,400枚が限界であった一撃性能を超えてくる機種も珍しくありません。
ここで、一撃性能が高くなる事で懸念されるのが、夕方以降の稼働です。
低純増であってもスマスロであれば差枚2,400枚以上を一撃で出す事も可能ですが、その期待値が大きくなればなるほど、取り切れない頻度が高くなり、夕方以降の稼働に影響します。
そこでこの懸念を解消しているのが、一撃出玉を出すときのみ高純増を使用する上位AT仕様です。
高コイン単価のスマスロを設計する上で、上位ATでの高純増仕様のトレンドも続くと予想されます。
高純増を用いた疑似ノーマルタイプ
一方で、高純増機と聞くとコイン単価が高い、高射幸性機をイメージされるかと思いますが一概にそうではありません。高純増を活かしてノーマル機のボーナスを再現し、5号機のノーマル機同等の射幸性を目指した機種も今後出てくると考えています。
最近で言うと、純増5枚の『S戦国恋姫』(コイン単価約2.3円)、純増8.7枚の『Sナイツ』(コイン単価約2.1円)のような機種です。
6号機のノーマル機は遊技機規則上、1度のボーナスでの獲得枚数は最大280枚であった所を、AT仕様を搭載する事で、300枚以上のボーナスを搭載可能としています。
5号機のノーマル機のスペック帯を好む層をカバーする為に、高純増を用いた疑似ノーマル機も引き続き出てくると予想しています。
さいごに
5号機完全撤去からまだ1年半程度である事から、5号機の良さに後ろ髪を引かれる打ち手も多い事でしょう。
一方、開発者として、5号機にはない6号機ならではの遊技体験を提供したいという思いがあります。
遊技機規則が変わり、6号機になった事で出来なくなった仕様がある反面、現在の6号機にしか出来ない仕様があります。それが高純増です。
この6号機に認められた高純増を活かしたゲーム設計が6号機でのヒット機種を生む大きな鍵であると一パチスロ開発者として考えています。
◆プロフィール
・ジェイさん@発信する遊技機クリエーター
J-BEAT合同会社代表
発信するプロ遊技機クリエーター兼ライター。過去遊技機メーカー3社で勤務。在籍中に10数機種の遊技機開発に携わる。現在は法人を経営しつつ、フリーのクリエーターとして遊技機開発に従事。また、メーカー所属では出来ない発信、評論活動を行っている。
Twitter:https://twitter.com/jsan65536