昨年10月から全国的に相次いだ釘曲げや自家買いの摘発事案の報道。今年に入り、それら違反に対する処分が出されている。特に釘曲げを行った店舗の多くは閉店に至っており、法令違反の厳しさを物語っている。処分の傾向と、リスク対策をまとめた。
釘曲げの処分量定は「A」
昨年10月以降に明らかになったホールの摘発事案に対する行政罰等について、ニュース等で報じられた情報や、近しい関係者らに取材した内容をまとめたのが下の表だ。
違反行為としては「釘曲げ」(遊技機の無承認変更違反)か「自家買い」(賞品買取禁止違反)のいずれかで、新潟県の事案は釘曲げの捜査から自家買いが明らかになったものだ。
これら事案のなかで、「釘曲げ」に関しては、香川県の事案が不起訴処分との報道以外は明らかになっていないが、他県ではいずれも当該店舗が閉店する結果となった。
釘曲げ(遊技機の無承認変更違反)の行政処分の量定は「A」(許可取り消し、営業停止の場合は2月以上6月以下)とされている。閉店した各店舗は、行政処分で許可取り消しになったのか、あるいは処分が出る前に店舗を閉めることになったのかは不明だが、いずれにせよ、摘発後に営業を続けることが困難になったことが推察される。
京都府の釘曲げ事案については、消息筋によると、経営者が刑事罰で罰金刑を受け、それによって欠格事由となり、当該店舗を含めたチェーン店2店舗の営業許可が取り消された模様だ。
また、宮城県の釘曲げの事案では、店舗の経営者や店長らが書類送検されただけでなく、釘学校の経営者らも無承認変更違反ほう助の疑いで送検された点が注目を集めた。この釘学校の社長ら2人に関しては、十分な証拠を確保できなかったとして不起訴処分となったことが報道されていた。
自家買いは営業停止90日
一方、「自家買い」の事案(新潟県と東京都)に対する行政処分では、当該店舗に営業停止命令が科された。期間はいずれも90日とみられ、行政処分の量定「B」(40日以上6月以下の営業停止等命令・基準期間3月)が適用された格好だ。当該店舗では自店のHPや店頭等で営業停止処分を受けたことを公開していた。
これら一連の処分について、業界に携わるある警察ОBは「おおむね妥当」とし、標準的な処分だったとみている。
「処分には幅があり、悪質性が高いと判断されると当然、処分は重くなる。悪質かどうかの要素としては、組織的、計画的、継続的であるかどうか」と指摘している。
先の東京都内での自家買い事案では、聴聞会でホール側の代理人弁護士が、景品買取所からホールに賞品を持ち込んだことは事実だが、ホール側が持ちかけた話ではないこと、ホール内で賞品が不足した際、賞品を買取所から搬入するよう景品問屋が店長に指示したこと、店長は深く反省し、会社としても景品問屋の変更や監査部門の設立など、再発防止策を行うことなどを述べていた。そうした弁明や反省も処分結果に考慮されたといえる。
違反事案をあわせる傾向
一方、昨今の摘発事案の傾向について、風適法問題に詳しい株式会社のぞみ総研の日野考次朗氏は、「昨今の摘発では、釘曲げと自家買いといった2つの違反事案をあわせる傾向がみられる。捜査対象者が多くなっている点も気になる」と指摘している。
その背景として考えられるのが、警察による手堅い捜査だ。1つの事案について、証拠固めや矛盾点がないように詳細に捜査をしていく中で、他の違反事案が見つかるケースがあるという。新潟県のケースでは、釘曲げの捜査を行う過程で自家買い行為が発覚し、宮城県の事案では釘学校の社長らも書類送検された。
日野氏は「捜査対象者が多くなっているのは、店側が素直に自供しないケースがあるのではないか。そうすると警察も捜査を広げて証拠固めをせざるをえない。そうなると店舗関係者だけでなく、関連の業者などの存在も浮き彫りになる」と推察している。
また、昨今の摘発の端緒となっているのが内部通報だ。遊技ファンがスマホなどで撮影したものを警察に通報するケースもあるが、外部からの通報はいつどこで撮影されたのなのか証拠が特定しづらい。一方、内部通報の場合は、すでに証拠が揃っているケースが多く、警察も動きやすく、摘発につながりやすいとされる。
内部通報は上司や会社に対する恨みなどが発端になるケースがある。
日野氏は「法律を遵守するのは当たり前だが、リスクを減らすという点では、ハラスメント対策も重要。社員との信頼関係ができてくれば、人が定着し、警察行政との関係性もでき、付き合い方も継承される。風適法の理解とともに、社内の信頼関係の構築が致命的なリスク対策につながる」と強調している。