「チャットGPT」に代表される生成系AIの普及が加速度を増している。他業種はもちろん、ここにきてパチンコ業界にも認識が高まりつつある。なかでも、販促分野における普及は顕著で、すでに実務レベルに落とし込む企業も増えてきた。これまでと異なる生産性を実現する新たなツールの出現が、業界にどのような恩恵をもたらすのか。
生成系AIサービス実務導入の模索が進行
すでにパチンコ業界でのAI(人工知能)活用は、主に戦略系の判断を担う機能を搭載した設備機器メーカーの製品で確実に普及が進んでいる。一方、今回取り上げた生成系AIは、その能力向上に伴い、ニュースなどで幅広く報じられ、ここ最近その認知度が高まった存在だ。とはいえ現段階では、一部の先進的な企業を除き、パチンコ業界に関わらず、多くの業種でその有効的な活用方法が模索されている状態にある。
一口に生成系AIとはいっても、多くの種類がありその用途も様々だ。大まかには、テキスト生成と画像等の生成に2分類されるが、そのうち最も有名なのが、テキストの生成系AI「チャットGPT」というサービスになるだろう。
近年、一躍注目を浴びたこの「チャットGPT」は、アメリカのOpenAI社が提供している人工知能搭載型チャットサービスの一つで、回答精度の高さが世間の関心を集め、とりわけ学術分野での論文やニュース記事などでの活用に物議を醸している。
そして、多くのビジネスパーソンの間で、注目を集めている業務効率化サービスが、テキスト系の生成系AIを用いる議事録作成サービスだ。これは明日にでも実務に組み込むことができる目に見えやすいサービスとして幅広い職域で関心が寄せられている。
チャットGPTを用いた議事録作成サービスを展開している企業の代表は「ニュースなどの影響が大きく、このところ一気に引き合いが増えている。すでに今の人員では対応しきれない状態だ」と反響の大きさに驚く一方で、これら生成系AIの本格普及には少し時間がかかると見ており、「世間による関心の高さは感じているし、実際に受注も増えている。ただ、話を聞きに来る人で、きちんと理解している人は全体の3割程度という肌感覚がある。さらに、実際の業務で有効活用している企業は、今の段階では全体の1割にも満たないのではないだろうか」という。
翻ってパチンコ業界では、複数のサービス提供会社との協議に入ったホールチェーン企業もあり、具体的な導入が模索されてきている。遊技機開発の分野でも関心は持たれており、関係者は「どう使えるかを試行錯誤してるが、今は実機のプログラムに組み込むというより、開発業務の効率化で使うという感じ。例えば、アニメ版権などのストーリーやキャラ紹介の要約やプログラムのバグ修正などが想定できる」という。
どんなことが可能に?
宣伝文句の生成は数秒で
とはいえ、生成系AIで、どういったことが可能になるのかという点が想像しづらい点もあるだろう。今回、簡易なものだが、一例として「チャットGPT」を用いてシンプルなアピール文句を作成してみた(下表参照)。この他にも、例えば『ジャグラー』など、具体的な機種名を加えた宣伝文句を求める質問もしたが、思いもつかなかったような斬新な言い回しが提示され、差別化に繋がりそうな文言が目に付いた。
もちろん現段階では、人の手を介する必要性があるものも多く、業界では各種法令を踏まえたリーガルチェックは必須だ。また、実際に導入している企業では、AIからの適切な回答を引き出すため、指令する文言の「勘どころ」が重要だという。加えて、指令が英語に最適化されているサービスが多いことを踏まえ、「これからは、プログラム言語を覚えるのではなく、英語を扱うことが重要になるという考えもある」という人もいる。
結果として、店舗のセールスポイントを上手く伝え、来店動機を刺激する制作物創作に繋げるためには、今のところそれなりの経験値が必要な段階ともいえるだろう。
効率化の推進で
狙う競争力強化
いずれにせよ、生成系AIのメリットは、人の力では及ばない想像力とスピーディーな制作能力を発揮できる点だ。今はまだ、はっきりとしたビジョンは見えないものの、使いこなせるかどうかが、今後の企業間格差に繋がる気配は確実に感じさせている。
この点については、AIそのものだけでなく、AIを使いこなす人材育成をどう行っていくかが重要だろう。と同時に、生産性向上でゆとりが生じた人的資源を、いかに有効活用していくかを考察することも、これからの企業命題となっていきそうだ。
※続き(パチンコ関連企業による生成系AIの活用事例等)は、「月刊GREEN BELT 7月号」(6月20日発刊)をお読みください。