【レポート】パチンコ店の新しい広告宣伝のカタチ

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保安課長通達に端を発した一連の広告宣伝に関する新たな枠組みは、パチンコ店の一般的な広告スタイルの自由度が増した一方、一部の逸脱行為に警戒感も滲む。とはいえ、広告宣伝の幅が拡がったことは確かで、集客以外にも新規ファン獲得やイメージ向上など、縮小し続ける業容に歯止めをかけるアピール手段も模索したいところだ。関係者の思惑を取材した。

出玉ランキングに拡がり
期待感をシンプルに刺激

「今のファンは、昔と異なり新台入替時の出玉に対してあまり期待を抱いていない。ただその一方で、特定日に対する期待感は高い。強豪チェーンなどでは、特別宣伝をしなくても、未だ昔の特定日に高い集客効果を発揮しているのはその証拠だ。そういったファンの信頼を以前から培っているような店が、出玉ランキングの掲示をはじめれば、より特定日に対する信頼性を高めることができるだろう」と話すのはホール企業の幹部。

無論、実際の出玉次第ではあるものの、月別ランキングなどでは、力を注いでいる日付が自ずとプレイヤーに認知してもらいやすくなる効果が見込めるという。

別のホールでも、「出玉ランキングの掲示は、自ら積極的に情報を取りに行かない人に対しても、簡単かつ正直に期待感を伝えることができる」と好意的だ。これまで出玉ランキングの掲示は、近畿エリアの一部を除き、自主規制等によって一定の制限がかけられていたが、ガイドラインに沿った告知であれば問題ないとされ、今回の広告宣伝の新ルール制定を象徴する一つの事象として拡がりを見せている。

大手ポータルサイトのP-WORLD上でも早い段階から動きがあった。同社によれば、ガイドライン公表後からの1週間で、東日本エリアを中心に40店舗ほどが出玉ランキングの掲載をスタートし始めたという。

と同時に、無料プランで設置機種だけを掲載していた店舗が、画像を投稿できる有料プランへと変更するケースも相次ぐ。サイト全体を通しても、店舗ページが更新される頻度の上昇傾向が僅かながら見られるようだ。

同社では、「広告宣伝に力を注ぐ取組みの一環として、まずは自店舗ページの充実を図ったのではないでしょうか」と分析しており、身近な媒体から手を付けた格好といえるだろう。

2月10日にホール関係4団体から発出された「広告宣伝ガイドライン(第1版)」は、これら出玉ランキング掲示のルールだけでなく、業界が警察庁に投げかけた質疑書の回答で、違法でないとされた6類型(※下表参照)ごとに、文言や表現など、ホール営業者が注意すべきポイントを列挙。具体的なNG例がイラスト等で表されている。

消費者庁が現在進めているステマ規制に沿った形で、ステルスマーケティングの禁止も謳われている。

先出しされた質疑書の警察庁回答では、広告宣伝の自由度がかなり拡がったものとして受け止められていたが、その後まもなく公表されたガイドラインでは、そういった感覚に対する引き締めを図った印象が強い。

業界団体の会合や各県研修会でも、「決して緩和ではない」ことが再三強調され、今後、まかり間違って脱法的な広告宣伝が蔓延し、結果的に再び厳格な規制を招くことだけは避けたいという気持ちがありありと現れている。

業界団体幹部は、「法律は変わってはいない。あくまでも運用基準が変更されたということで、一番怖いのはルールから逸脱した広告宣伝だ。そういうことがあったから、これまでの厳しい状態が10年も続いてきた。それを皆が理解しなければいけない」と語気を強める。

ホール関係者も、「うちのエリアでは、これまで何となく曖昧な雰囲気で行われてきた第三者による来店系などに、当局がこれからしっかり対応していくことを言及するなど、むしろ厳格化が図られた印象がある。それもあってか、昔から処分を顧みないような店を除き、今は互いの様子を牽制して探り合っている状態」という地域もある。

加えて、質疑の回答書で問題ないとされた範囲を逸脱した広告宣伝が行われているとの報告が、全日遊連に寄せられていることを受け、注意文を組合員に発出する組合が出るなど、この手の業界ルールを徹底することの難しさも早々に露呈している。

一方、ホール販促のサポートを手掛ける業者は「ルールから抜け駆けするところが増え、宣伝広告が過激化してダメになれば元も子もない。過激になりすぎないようにやってもらえれば、我々としても、ビジネスチャンスになってくる」と、したたかに動向を見守っている。

しかし複数のホール関係者は、「SNS等ネット界隈の広告宣伝に網をかけることは困難」「処分されてもいいという激しいプロモーションをやってきたところの姿勢は変わらないと思うし、実際変わっていない」「良識に訴えたところで晒し屋を利用するホールは存在するだろう」と口を揃える。

さらに「きちんとやってきたところはシンプルにやれることが増えるので歓迎できるが、ずっとイケイケでやっていた店はあまり変わらないと思う。怖いのは、そういったホールに引っ張られて、再び規制が厳格化されてしまうことで、これは違うと思う」と、苛立ちの声も挙がる。

委ねられた自助努力
自主規制の統一化も

明確な罰則規定がない今回のガイドラインで問われていることの一つがその実効性だが、違反行為が発生した際の対応については、「事実確認やホール営業者に対する是正勧告を行い、それでもなお改善が見られない場合は、行政当局に情報提供を行う仕組みを構築し、運用する」との表現に留まっており、業界の自助努力に委ねられた格好だ。

重ねて、今回ガイドラインで制定された6類型以外の扱いについては、当面、各都府県方面遊協がそれぞれの自主規制で運用することが明記された。その後、各遊協の自主規制を必要に応じてガイドラインに反映し、最終的には一本化させていく方針が示されている。

また、今回の広告宣伝新ルールにおける大きな柱の一つに地域格差の是正がある。これについては、当然ながら厳しいエリアのホール関係者は歓迎ムードだ。

複数の県に跨って店舗展開するホール関係者は、「県だけでなく、所轄ごとにできる、できないがあった。厳しいところで真面目にやっていたホールはやれることが増える」と表情を和らげる。

別のホール関係者は、「県境は特に影響があると思う。所轄ごとの対応が違うというより、担当官の主観で変わるルールが統一化される方向性はいい。例えばハロウィンを盛り上げるために、スタッフが着る衣装を『マジカルハロウィン』設置店ではNGなどという、とんちんかんな規制はなくなるだろう」と皮肉交じりに語る。

反面、県の特性にあわせたルールが、全て一律に統一されてしまうことに懸念を抱くホール関係者もいる。「厳しいように見えるエリアでも、規制の一部は他県より自由度が高いケースがある。統一が進めば、全て厳しい方に合わせざるを得なくなるのではないだろうか」と警戒している。

いずれにせよ、今後、業界活性化に繋がる新たな広告手法の誕生に期待感が高まっていく一方で、ファン人口の増加に向けたこれといった打開策は未だ見出だせていないのが現状だ。

ホール関係者は、「人口が減り、余暇が多様化するなか、業況回復の物差しをファン増加で測るなら現実味はない。それに、今のキツすぎて遊べない状況では、新規ファンを集めたところで、パチンコに果たしていいイメージを抱いてもらえるだろうか」と懸念を抱く。確かに、今のホール営業が、遊技客にとって気軽に遊べる場だと言い切ることは困難で、日常的な高粗利営業やヘビーユーザー偏重といった問題も放置されている。社会通念上、一般的な訴求が可能となった今回の広告ルール改訂を活かし、業容縮小にブレーキをかけたいところだが、それと共に、パチンコ離れに至る要因についての根本的な議論を、これまで以上に深めていく必要性もありそうだ。

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