今回は粗利計画を組んで日々の営業に落とし込む時に注意することを考えてみます。やみくもに利益を取ろうとしたり、出玉を放出したりしても、稼働が下がってしまっては、翌月以降の計画に狂いが生じてしまいます(文=三木貴史/エスサポート代表取締役)。
粗利計画立案時の考え方
大きな商戦期の期間粗利を達成するために、1日毎の粗利計画を作成しているホールがほとんどでしょう。しかし、日々の計画通りに進んでいくことは少なく、進捗状況で粗利がショートしていたり、反対に利益が取れすぎていたりと、計画に狂いが生じてしまうことが多いはずです。その計画の狂いを月の途中で軌道修正していくのですが、足りない利益をいつどのように埋めるのか、また余剰の利益はいつどのタイミングで放出するのか悩む方も多いはず。今回はそれらのポイントについて考えてみましょう。
まず、月の途中経過で、計画よりも利益がショートしている場合の軌道修正のポイントは次の4点です。
①平日のどこかで1日捨て日を作り、一気に確保する
②あらかじめ土日で設定しておいた調整日を粗利優先日に変更 する
③目先の利益を取るべきか、長期の利益を考え我慢するのか、流れを考える
④出せない時も大負け台だけは必ずフォローする
①は、利益がショートしている場合に、足りない利益を毎日のように少しずつ上乗せして確保していこうとする店長がいますが、それは最も悪手です。ダラダラと辛めの営業が続くことが最も稼働を落とす要因となるため、足りない粗利を埋めるために、平日でしっかりと利益を確保する日を1日設けたほうがいいでしょう。
平日のコイン粗利が30~40銭で営業しているなら、平日で1日だけ60銭を超えるような調整を行って不足分をできるかぎり一気に埋める方が稼働への影響は少ないといえます。
②は、計画の段階で保険をかけておくやり方です。日々の粗利計画を組む時に、あらかじめ月の後半の土曜日などで甘い営業を行う日を「調整日」として1日は組み込んでおきます。例えば、調整日のコイン粗利を20銭で組んでおいて、もし利益がショートしている場合は、その土曜日を60銭に変更すれば、ショート分を大きく挽回できるはずです。
稼働が弱い平日では調整日として計画しても、粗利を確保できる額も少額となるため、月の後半の土日のどこかを調整日として計画しておけば確保できる粗利額も大きくなるでしょう。
③は軌道修正方法ではなく、無理をして本当にいま粗利を補填するべきなのかを、よく考えるべきでしょう。粗利がショートしているからといって、無理に目先の利益を確保することで大きく稼働を落としてしまい、稼働を落としたことで将来に確保できるはずだった利益を手放してしまうことにならないのかを考える必要があります。
目先の利益を確保してはいけないタイミングは、今後、新台入替や繁忙期などがなく、稼働が上がらない時期です。反対に、今後、大型入替や、GW、お盆、正月などの繁忙期を迎える前であれば、無理をして目先の利益を取ってしまっても問題はないでしょう。利益確保で落とした稼働も、今後の流れで挽回できます。このように今後の流れを読んで、ショートしている粗利を埋めるのか、埋めないのか冷静に判断したいところです。
④は非常に重要なことです。粗利がショートしていて出せない日々が続く場合も、大負け台は翌日に必ず高設定でフォローすべきです。例えば、『マイジャグラーV』で2,000枚以上負けた台があれば、必ず翌日、その台に設定4を投入するというようなフォローです。
大負け台さえフォローしないホールはただの「ぼったくりホール」という烙印を押されかねません。出せない時期でも大負け台だけフォローしていれば自店の信用を大きく損なうことはないでしょう。
次は、進捗状況で計画よりも粗利が多く確保できている場合に、どのタイミングでその余剰分を放出するかのポイントです。
①抜けすぎた場合「平日→平日」は即還元
②抜けすぎた場合「日曜日→月曜日」「金曜日→土曜日」は気にしない
③余剰分の利益を旧イベント日に還元しない
④余剰分の利益は平常の土日で還元する
計画よりも利益に余裕がある場合の軌道修正するポイントも4つあります。
①は例えば、火曜日に予定より利益が取れすぎてしまった場合は、翌日の水曜日に即還元するべきという意味合いです。平日が続く場合は、翌日も同じお客様の顔ぶれとなることが多く、平日に取れすぎた利益は、翌日が平日なら即還元するべきです。
予定では2日間で「30銭→30銭」という粗利計画が、初日に60銭取れてしまった場合、翌日に0銭の設定を組んで2日合わせて予定通りとなるように修正します。
②は例えば、金曜日に予定よりも粗利が取れすぎた場合は、翌日の土曜日にはすぐに還元しないようにするということです。平日と土日のお客様の顔ぶれは異なるため、金曜日に取れすぎた利益は翌日の土曜日に即還元する必要はなく、他の日に還元する予定を組めば問題ないでしょう。同じように日曜日に取れすぎた場合も、翌日の月曜日に即還元する必要はありません。
③については、旧イベント日に還元してしまう店長は実のところ多いです。イベント日にもっと出玉を出して盛り上げようという発想ですが、大きな間違いだと思います。計画よりも取り過ぎた利益は日々の営業で常連のお客様から確保してしまったものだった場合、イベント日に還元してしまえば、利益を取り過ぎたお客様とは異なる平常日には来ないようなお客様に還元してしまうことになってしまいます。
前回のイベントで利益が取れすぎたから、今回のイベントに上乗せして還元しようという考え方は正しいのですが、平常営業の積み重ねで取れすぎた利益をイベント日に還元するのは筋違いといえます。
最後に④ですが、せっかく余裕がある利益は、どうせなら稼働が伸ばせるタイミングで放出したいところです。普段なら利益重視となりがちな月末の平常営業の土日など最適なタイミングです。平日の稼働が薄いタイミングを無理矢理、還元営業に切り替えても出玉感はなく、お客様に与える印象は小さいのですが、集客できる土日であれば出玉感があり、好印象となるでしょう。もちろん、その還元する土日はイベント日ではなく、平常日で常連客ばかりの時がベストです。
このように日々の利益計画の軌道修正は、単なる数字合わせではなく「いつ」「どのお客様」に対して調整するのかを常に考えておくことが重要となります。負けすぎたお客様には還元すべきですし、勝ち過ぎているお客様からは利益を取るべきで、そうなるような軌道修正が望ましいと思います。
◆プロフィール
三木 貴史
㈱エスサポート代表取締役
1972年生まれ。97年中央大学商学部卒業後、パチスロ専門店(神奈川県42台)にて勤務。01年〜06年グループ4店舗を統括部長として指揮、在職中より他店舗のコンサルティングにも携わる。この期間、全ての店舗で稼働平均15,000枚を継続。07年に独立し、パチンコ・パチスロホール運営コンサルタントとしてエスサポートを設立。“ホールの知恵袋”として全国どこにでも出張中。社内外を問わず行うセミナーも好評。