このコラムだけでも読めますが、前回のコラムの続きとなっておりますので前回を今一度読んで頂いてから、こちらのコラムを読んで頂けるとより楽しんで頂けるかと思います。
さて、クソ台と呼ばれる台ができてしまう原因なのですが、一言でいうと遊技機開発というのは物凄く乗り越えるべきハードルが多く、基本的にやり直しが効かない。という部分が一番大きい要素を占めるように思います。
ぱちんこ機やパチスロ機、最近リリースされたスマスロや今後、出てくるであろうスマパチも同様で、イチから開発を始めて市場にリリースされるのに平均的には2、3年、長い期間がかかるもので5年、6年と熟成された機械も決して珍しくありません。
ここで皆さん考えて欲しいのです。皆さんが2年前、3年前どのような機械を打っていましたか?2022年12月ともなれば、2年前で2020年、3年前だと2019年でコロナがまだまん延していない頃の時期になります。ぱちんこ機で言えば、2020年4月に『P大工の源さん超韋駄天』が発売されました頃で、おそらく2020年だと同機に多くのユーザーが支持を集めていました。
一方、パチスロでいえば『S押忍!サラリーマン番長2』が2020年4月導入ですね。また6号機で初のヒット(ジャグラー以外)とも言える機械、『S Re:ゼロから始まる異世界生活』が2019年3月導入開始です。
これらの機械が大ヒットしている頃に開発がスタートしたとしたら、皆さんがその時に開発を仮にスタートさせるのであれば、今のスペックや演出等々に関して先回りして対応することが果たしてできたでしょうか。また、今の時点から開発をスタートさせたとして、2024年12月もしくは、2025年12月、もっと言えば2027年や2028年にどのようなスペックや演出をもった機械を開発すればユーザーの皆様に喜んでもらえる機械は作れるでしょうか?といった難題に日々挑戦するのが開発者だと思って頂ければ、我々の日々の苦悩も少しは報われるといったところでございます。
遊技機開発は基本的に分業制です、開発の企画者が企画を練り、デザイナーが映像を作り、プログラマーがソフトを組み、機構設計者が役物や筐体を作り、他にも様々な方がパーツパーツをくみ上げ一つの遊技機を完成させるわけです。そのパーツをくみ上げて遊技機として一旦完成するのに開発がスタートしてから最低でも1年、長いと2、3年かかることもざらにあります。
そして、この段階で初めて遊技機として打てる状態になっているにも関わらず、全てのパーツがほぼ出来上がっているため、やり直しはほぼ不可能と言うことです(やり直すためには、また一からパーツを作る必要があり、莫大なお金と時間がかかるためあまり現実的ではないのです)。
遊技機開発は完成形を意識しつつ、長い年月をかけて細かい1つ1つのパーツを日々作りつつ全てを合体させたときのバランスも考えながら調整して進めていかなければならない上に、完成してリリースする時期やタイミング、その時のブーム等も予測しながら開発をしなければならなかったりします。開発当初では革新的な機械であったとしても、リリース時期には平凡な機械以下に成り下がっていることも往々にしてあるのです。
◆プロフィール
荒井孝太
㈱チャンスメイト 代表取締役
パチンコメーカー営業、開発を歴任後、遊技機開発会社チャンスメイト(https://chancemate.jp/)を設立。パチンコ業界をより良く、もっと面白くするために、遊技機開発業務の傍ら、ホール向け勉強会や全国ホール団体等の講演会業務など広く引き受ける。