【インタビュー/私の道】
労務環境改善に尽力 「入替え楽に」で30年
~株式会社スリーストン 白石光男 代表取締役社長

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PROFILE●しらいし・みつお
1947年8月生まれ。電気工事事業、ホール経営を経て、1991年株式会社スリーストン設立。座右の銘は、京都・龍安寺の蹲踞(つくばい)に記された「吾唯足知」に着想した自作の「售叶呈和」(しゅうけいていわ)。売るためには柔軟さが必要という想いが込められている。埼玉県出身。

台入替え業務の省力化機器の開発、製造、販売などを手掛けるスリーストン。スタッフの労務環境改善に向けた製品開発を30年以上に渡って続けている。陣頭指揮を執る白石社長に聞いた。

パチンコの傾斜ヒントに
『どんぴしゃ』を開発

1966年(昭和41年)に工業高校を卒業したのち、電飾関係の仕事を、個人事業で切り盛りしていた。その時、委託されたホールでの配線工事。これがパチンコ業界との最初の関わりになった。

その後、知り合いを通じ、兄弟でホールの経営に参画する。埼玉県の浦和市(当時)で2店舗を運営した。

「外から見ていると、隣の芝生は青く見えるではありませんが、ホール経営が良く見えましてね。ただ、大変でした。特に1985年(昭和60年)の10カウント規制で業界が厳しくなって、もうホール経営は難しいかなと思いました」。

その頃、店舗での出玉管理に傾斜を用いていることにヒントを得て、パチンコ台取付機の開発構想が浮かぶ。今に至るビジネスの種が芽吹きだしていた。

スリーストン設立
開発の重要性を再認識

大きなターニングポイントになったのは1991年(平成3年)。経営していた店を手放し、スリーストンを設立した。

白石社長と弟御、そして起業に力を注いでくれた恩人という三石氏、3人の名字に共通する“石”を社名に刻む。そして、ホール経営時に着想を得ていたパチンコ台取付機を製品化。『どんぴしゃ』と名付け、新たな一歩を踏み出した。

ビスや釘打ちによる遊技台の取付けを、ワンタッチで堅牢に取付けられるようにすると同時に、取付け後も遊技台の傾きを変えられることが受け、出荷累計50万台超というヒット製品となった『どんぴしゃ』。発売直後に、神奈川のホール企業が各店舗で導入し、堅調な滑り出しを見せたかに思えたが、その後販売が伸び悩み、事業継続の危機に直面する。

「ちょうどその頃、並行して手掛けていた配線工事の仕事を、ダイナムさんから受注することができました。正直、これがなかったら、事業を継続することが難しい状況にまで追い込まれていました。今でも、感謝しています」と振り返る。

と同時に、気づきも得た。

「一つの製品や販売先に依存しすぎないということの大切さに気づきました。とりわけ、新製品を開発する努力を継続していくことが重要だということです。製品があってもなくてもどちらでもいいではダメです。必要とされる製品をタイムリーに送り出す必要性を実感しました」。

その経験から、その後台取付機としての『どんぴしゃ』シリーズは、改良に向けた開発が加速。段階的に『どんぴしゃパーフェクト』『どんぴしゃハーフ』へと、ラインナップを拡充させていく。ただ、いずれも一時好評を得るも、決して安価ではない価格設定ということもあり、継続的な販売には至らなかった。

「業界の景気もどんどん悪化していきました。一時、営業マンも多数採用したのですが、あまり上手くは行きませんでしたね。ただ、より入替え作業を簡単にするための製品開発自体は、少しずつ進めていました」という。

その後、白石社長がたどり着いたのが、搬入トラックから、パチンコ島へ遊技機を水平移動させるアイデア。2017年には、『マジか』として製品化した。

「遊技機を島に取り付けるには、必ず運搬作業を伴います。これを人の手で運ぶには体力が必要で、決して楽な業務ではありません。高齢者や女性など、誰でも入替作業を行えるようにするためには台車が必須ですが、遊技機を上げ下ろす作業自体を取り除かない限り、結局は力が必要です。しかし、水平移動で遊技台を運べれば、台の上げ下ろしをせずに遊技機を運搬できます」と、これまでにない省力化製品の誕生に胸を張る。

さらに翌年には、搬入台・撤去台・移動台の配置を入力するだけで、作業者別指示書や移動指示書を自動作成する入替システム『入替えナビ』もリリース。一気通貫の入替えシステムが整いだした。

これらシステムが大手ホールチェーン企業、アンダーツリーグループの幹部の目に止まる。結果、2019年に1800台超の規模でオープンした大型店《グランキコーナ堺店》が採用。同社の入替システム自体も、現場作業を経験することで磨かれていく。「新しいものを取り入れ、労務環境改善を目指す意志を共有でき、ありがたく感謝しています」。今では、取付機なしで簡単な入替えを可能とする『マジか2』に進化を遂げている。

今年発売された新製品『マジか2』。取付機無しでパチンコ台の入替えを可能とする運搬機だ。台の上げ下ろしからも開放される。さらに、近年大型化が著しいギミックの取り外しも不要。そのまま運搬機に搭載することが可能な構造となっている。

時流に沿った製品としてリリースされた『ピタッと充君』。PD対応した急速充電器で、遊技客の快適性を創出するアイテムになっている。

「ニーズを捉えて、自ら作る」

今後については、「弊社の強みは、最高の品質かつ最低の価格で製品提供できることです。海外拠点(中国)に自社工場を持ち、“ハイクオリティ・ロープライス”方針で、昨年は飛沫ボード、今年はPD対応急速充電器『ピタッと充君』を提供しています。そして『マジか2』でホールや入替業者といった職域に関わらず、多くのお客様にご利用頂き、入替を楽な環境にしてもらえれば」という。

創業から30年余り。「何も無い所から有を生む苦しさは変わりませんし、経営も苦労の連続ですよ」と、自嘲気味に話す白石社長。「ニーズを捉えて、自ら作る」というモットーを貫き、これからも製品開発に臨んでいく構えだ。

株式会社スリーストン
3stone.co.jp/
本社/東京都台東区東上野3-13-5  深谷ビル101
【設立】1991年6月
【事業内容】
1.遊技場用電気機械器具の設計・製造・販売
2.遊技場用電気機械器具の輸入・国内販売
3.遊技場/パチンコ店の営業指導・経営
4.遊技場の設計・デザイン・工事施工

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