例年、4月はゴールデンウィーク商戦の真っ只中。多くのメーカーから主力機がリリースされ、市場が大きく動く時期だ。しかし、コロナ禍に端を発した「部材不足」などにより、新台供給に黄色信号が灯っている。
直近3年間における、4月に登場した主な機種をまとめたのが下表だ。新型コロナウイルスの影響により、全国各地で休業が進んだ2020年では、『Pフィーバー戦姫絶唱シンフォギア2』『押忍!サラリーマン番長2』など、人気コンテンツのシリーズ最新作が導入された。
合わせて、初の遊タイム機『Pフィーバー真花月 夜桜バージョン』も導入されるなど、市場全体が右肩下がりの中でも話題には事欠かなかった。2021年では『ぱちんこGANTZ極』『Pフィーバー革命機ヴァルヴレイヴ2』『ぱちんこウルトラマンタロウ2』などパチンコを中心に盛り上がりを見せた。
そして2022年。ラインナップを見ると分かるように、パチンコにおいてはゲーム性のタイプ違いやスペック違いの機種が大半を占め、純粋な新台は数えるほどしか導入されなかった。パチスロではアニメコンテンツやシリーズコンテンツの機種が登場したが、インパクトは少し弱かったように思える。
■直近3年間の4月導入機種
※太字表記はメインタイトルで、非太字は表記は追加スペック機。
あるコンサルタントは「年々、ゴールデンウィーク商戦を見据えて導入される機種の魅力が縮小傾向にある。ホールとしては、新台で集客のための話題づくりができないのは痛手だが、既存機をどう活用して集客を伸ばすかを真剣に考えられるいい機会でもある」と分析する。
長引く部材不足
解消の見通したたず
このように、業界では新台が枯渇している状況がある。その原因としてまず考えられるのは「部材不足」だ。周知の通り、コロナ禍を背景に半導体をはじめとする部材に関して、中国・上海から供給難に陥り、その状況はいまなお継続中だ。
あるメーカー関係者は「未だ半導体をはじめ、コネクタ、ハーネスなど様々な部品が不足している。プラスチックなどは自社で抱えているリサイクル工場で再利用しているが、状況改善の見通しはたっていない。今回のゴールデンウィーク商戦でも思ったように機械が販売できず、大きな機会損失となってしまった」と嘆く。
また、別のメーカー関係者は「非液晶機でも部材不足の影響が大きく、泣く泣く受注を打ち切った機種もある。また、部材の仕入れ価格も高騰しており、以前は1万個単位から仕入れられていたものが、10万個単位からでないと仕入れられなくなった。ひと昔前は販売台数もそれなりに計算できたため、部品を抱えていてもさほど問題はなかったが、いまは売れて数千台の時代。部材に高いコストを割くことはできない」と話す。
加えて、パチンコ・パチスロは保通協で型式の適合を受ける。そのため、持ち込んだ機械と同じ部品を使用した機械でなければ納品ができない。たった1つの部品が不足するだけで納品できなくなるため、増産案件があっても、納品が3ヵ月先になってしまうケースも多々発生しているという。部品の代用がきかない点も、メーカーを苦しめている要因となっている。そして、適合率も中々上がらず、総じて新台供給量は減少の一途を辿っている。
懸念される稼働減少
機械を買う側であるホールは、この新台不足をどう捉えているのか。
「ここしばらくずっと新台が足りない状態が続いている。良いと思った新台を増台したいとメーカーに伝えても、部材不足を理由に買うことができない。中古機で補おうにも、稼働が良い機械は高すぎて、やはり買うことができない。パチスロはともかく、パチンコはいい状況にあるので、新台供給が増えてくれば新台調達はしっかりしていくことになる」と、あるホール関係者は買いたくても買えない、むずがゆい思いをしていると吐露する。
新台入替が少なくなることは、そのまま集客施策の機会が減少することを意味し、例年以上に営業に頭を悩ませているようだ。「新台調達ができれば、それに伴って稼働にもいい影響が出るのではないか。逆にいえば、このまま新台供給が滞ったままだと、稼働を維持することが難しくなる」と危機感さえ募らせている。
一方、別のホール関係者は新台不足で助かっている面もあるという。「パチンコはそれなりの新台が出ているし、正直、無ければ無いで何とかなっているのが現状。結局、周りの店舗も状況は一緒なので。むしろ、大手チェーンが資本力に物を言わせて、ビッグタイトルを大量導入する機会がないため、中小ホールにとっては助かっている部分もあるのでは」と話す。同じ新台不足の状況下でも、立ち位置によって捉え方は様々なようだ。
今後、夏にはお盆商戦、冬には年末商戦が控える。そして、11月にはスマートパチスロの導入も予定されている。滞りなく新台供給ができるか、スケジュール通りにスマートパチスロをリリースできるかは、部材不足の解消がカギを握っているのは間違いない。メーカーはたゆまぬ努力を重ねている。今は静観し、耐えるしかない。