【寄稿】メタバース（仮想空間）にパチンコ店をつくる／建築家 鶴田 一

メタバース（仮想空間）にパチンコ店をつくる

こういってもまだピンとくる方はおられないかもしれません。大手アパレルメーカーや百貨店が続々とメタバースに出店している現状を理解するにはデジタルネイティブと呼ばれる若者層をまずは理解する必要があります。

弊社では5年以上前よりこの若者層を取り込む店舗作りやSNS戦略をプレゼンしてコンペに参画してきましたが結果は連戦連敗でした。遅かれ早かれ年配層が減少していくのは誰しもが分かっていたことでしたが、やはりその状況にならないとそういった方向への投資は出来なかったことも十二分に理解出来ます。残念ながらコロナ禍はその状況を急激に早めたのは周知の事実であり、今後年配層が戻ってくる可能性も期待出来ません。

今でこそアイドル店員などと言われ注目を浴び始めましたが、当時は店舗スタッフがSNSやユーチューブをして何になるんだと理解していただけなかったことを記憶しています。多くの若者は現実社会よりも仮想社会に生きていると言っても過言ではありません。四六時中スマホを見ながらSNSのタイムラインをスワイプさせているかTikTokやユーチューブを見ています。現実社会の上司よりも仮想社会でフォロワーが10万人いる推しインフルエンサーのことばかり考え、俗に言う無理ゲー思考※が蔓延っているのかもしれません。
※現実における乗り越え難い困難をゲームになぞらえて無理ゲーと呼ぶ。

ここでまず、なぜアイドル店員が必要なのか？それがどうマネタイズに繋がるのかという点を解説致します。通常の広告をいくら打ってもこの層には届きません。前述したように若者層はSNSのタイムラインしか見ていないからです。しかもSNSのタイムラインでスワイプが止まってエンゲージまでいくのはフォロワー数の多いインフルエンサーの投稿だけです。フォロワー数が少ない時点でその投稿自体タイムラインにさえ出てきません。よって、この若者層へ何かアクションを起こすためにはインフルエンサーとタイアップするか、或いは自分達がインフルエンサーになるかの二択です。後者は今から始めても1万人程度のフォロワーを獲得するのに最低2〜3年はかかりますし日々のコンテンツに対する工夫も欠かせません。

いずれにしても空中戦にはなりますが若者層へのリーチはインフルエンサーから発信された情報が主となり、業界においてはフォロワーの多いアイドル店員に会いたいといった来店動機の可能性が高まります。アイドル店員が呼びかけることによって、若年層を仮想社会から現実社会へ引きずり出すという戦略です。

もう一つのメタバースにパチンコ店を出店する件ですが、若年層のいる仮想空間にこちらから入り込むという戦略です。仮想空間内でイベントなどを企画し遊技経験のない若年層に遊技の面白さを仮想空間内で伝えます。インフルエンサーや著名人、アーティストをゲストとして呼んだりする工夫も欠かせません。渋谷の仮想空間ハロウィンフェスが55万人動員したように爆発的な可能性を秘めています。

風営法的な観点での精査も必要ですがオンラインで会員登録が出来て、パチンコゲーム大会などを企画するのも良いでしょう。そこでポイント制などを絡めてオフラインさせてそのポイントを実店舗で風営法に抵触しない範囲で還元出来るような仕組みが出来れば若年層を現実社会へ引きずり出せる施策と成り得るでしょう。同時に話題性を得て一般世間に拡散されることも期待出来ます。その場合メタバース内にギャンブル依存症相談センターを併設するなど新しい取り組みをすることで業界全体の社会的レピュテーション向上に貢献することも可能です。

このようなメタバース戦略を現在多くの大手メーカーがこぞってやろうとしています。業態によっては、仮想空間内でマネタイズまでワンストップも可能です。

時代は5G、Web3.0となりIT技術の発展に伴いマーケティングやビジネスの在り方や働き方に及ぶまで急速な勢いで進化しています。そしてGAFAが世界を圧巻したことから分かるようにファーストペンギンになればセカンドペンギンが来た時にやっつけてしまうか飲み込んでしまうといった強大な力を得ることが出来ます。5年先の近未来を常に想像しながら投資していかなければ成功出来ない時代であり、逆に言うと5年前に投資していなければ今から投資しても遅いという過酷な時代ともいえるでしょう。