コロナ禍によって大半のパチンコホールが稼働低迷にあえぐなか、オオキ建築事務所が手掛けたホールの多くはコロナ前を上回る稼働をあげている。そこには、地域に愛され、地域と共生する「建物」としての魅力が備わっている。
コロナ禍になる以前から全国屈指の高稼働ホールとして知られていた《333》(広島県)、《ハイパージアス立川》(東京都)、そして全国チェーンの《マルハン横浜町田店》(横浜市)、《マルハン亀有店》(東京都)──。
これらのパチンコホールは、コロナ禍になって以降、いち早く客足を戻している店舗として業界関係者から改めて高い注目を集めている。営業スタイルや接客などのオペレーションが標準化されている全国チェーンの店舗でも稼働差が生じている要因は、一体どこにあるのだろうか。
建物自体が地域から受け入れられている
実際に訪れてみて分かったのが、これらのホールに共通する「建物自体が地域に受け入れられている」という印象だ。建物は、ギラギラとした装飾や派手さがなく、むしろ清潔感にあふれ、上質で品のある雰囲気を醸している。
上記したホールの建築デザインを手掛けたオオキ建築事務所(東京都)によれば、そもそも建物は人々の印象やイメージを左右しやすく、地域の景観にそぐわないものであれば、マイナスの感情や嫌悪感を持たれてしまうという。遊技する人にとっても、そうした建物には行きづらいはずだ。
その点、これらのホールは、パチンコ・パチスロをする人たちだけの建物とするのではなく、地域住民に広く親しまれる存在になることを志向しているのだろう。たとえば《マルハン横浜町田店》に併設する飲食店には、食事のためだけに来店する地域住民も多いという。地域の人たちが気軽に自然と立ち寄れる存在になっている証拠だ。
こうした地域共生の姿勢は、ホールにとってのブランディングとなり、その結果として地域の人たちからの支持を獲得。さらには、働く店舗スタッフのモチベーションを向上させ、上質な接客サービスへと連鎖し、プラスのスパイラルを生み出していくのではないだろうか。
他方、パチンコ・パチスロという遊びには「1人になりたいが1人になりたくない日本人特有の心理を満たすもの」という世界観がある。背中が壁になっている片島には遊技客が付きにくい傾向があるのもそのためだといわれる。高稼働ホールでは、そうした遊技客の心理、あるいは人間が持つ本質的な感覚を建物全体に反映させ、居心地のよさを創出しているのは明らかだ。
地域に受け入れられ、自然と足が向かう店舗。そうした「建物」としての魅力を備えたホールが、コロナ禍などの不測の事態に直面してもゆるぎない稼働を維持できているのだろう。