【コラム】『P牙狼 月虹ノ旅人』稼働絶好調の要因

投稿日:2021年7月8日 更新日:

コロナ禍のなか、遊技人口も減る現状に活気を取り戻してくれるヒット機種の要因を分析するコーナー。今回は今年の6月7日に登場したの『P牙狼 月虹ノ旅人』(以下、牙狼 月虹)のヒット要因分析を行いたい(文=長谷川豊/アールイーサーチ代表取締役)。

本機の販売台数は約33,000台(6月28日時点)、海物語シリーズを抜かせば今年一番の販売台数を記録している。販売台数以上に驚くことは、某データによると3週連続でアウト40,000発超えをしている点、そして1週目よりも2週目の方が高いアウトを記録しているという稼働実績だ。

西日本に1週早く先行導入され、2週目に東京などの東日本に導入されたとはいえ、前週比でアウトが上がることは稀なこと。『P大工の源さん 韋駄天』がコロナの影響で右肩上がりに稼働を伸ばしたことはあるが、それでもアウト40,000発を超えたのは1週しかない。本機は導入から3週連続で アウト40,000発超えと、近年では類を見ない状況が続いているわけだ。

大きなヒット要因は以下の3点と考えられる。
①現行機最強スペックのカテゴリに属する
→オール1,500 個×81%継続、かつST仕様や従来の1種2種とは違い、必ず 1,500個出玉を得て終わる仕様となっているため、「魔戒CHANCE」突入時の期待出玉は約8,400個程度と抜けている。
②魔戒RUSHの体感スピードと楽しさ
→圧倒的な出玉スピードと、牙狼ならではの楽しさが融合したRUSH。
③往年のヒット機種ゆえのバイラル効果
→過去作も含め、牙狼の遊技人口は海物語に匹敵するほど。そのバイラル効果は絶大。

牙狼ユーザーが戻ってきた!

この3つの要因が絡み合ってヒット機種になったと予測できる。ヒット要因をさらに掘り下げると・・・

「①現行機最強スペックのカテゴリに属する」(以下、①)については、GW前に登場した『ぱちんこ ウルトラマンタロウ2』(以下、タロウ)が先に出ておりオンリーワン要素ではなかったが、「魔戒RUSHの体感スピードと楽しさ」(以下、②)が上手く絡み合い、「①」の要素を最大限に体感させることに繋がっている。

「②」に関しては『P大工の源さん 韋駄天」のファイナルジャッジのような引っ張る部分は少なく大当たり間が短い。合わせて、牙狼ならではの「演出力」が現行機種トップレベルの遊技感を与えている。継続か非継続かを大当たり中でジャッジしているので、機械に集中している時間が長いのも要因の一つ。

早い段階での継続告知など、安堵感と優越感、魔戒CHANCE終了のドキドキ感をバランス良く設けているのも大きい。演出内容も往年の牙狼ユーザー向けの「初代タイプ」から初代牙狼に思い入れが少ないユーザーでも分かり易く楽しめる「心滅タイプ」や「告知タイプ」など、複数回楽しみたくなる要素が盛り込まれており、リピート遊技を誘発させている。

その他、賞球の払い出しが他機種よりも遅い事もあり、ある程度連チャンをすると、魔戒CHANCE終了後に数分間玉が出続ける点も早さを認識出来るところだろう。

「③往年のヒット機種ゆえのバイラル効果」(以下、③)は噂や口コミ情報のこと。そもそも『牙狼金色』『魔戒ノ花』など10万台以上が設置され、数10週の稼働貢献をしていた機種であるため、牙狼シリーズを遊技していたユーザー数は年代問わず幅広く、海物語以上の可能性もある。

そのユーザー達が『牙狼 月虹』を認め、台が空かない状況が生まれ、その光景が口コミで広がり、別のユーザーの「今回の牙狼は打ってみよう」という遊技動機に繋がっているのだろう。

実際に「今回の牙狼は凄い!」「面白い!」という声は多い。要は65%規制以降に離れていた牙狼ユーザーが多く戻ってきているということ。前記した通りに10万台以上が設置され、高稼働を継続させていた同シリーズの遊技人口を考慮すれば、コロナ禍で遊技人口が減ったとはいえ、3万台程度では、この高稼働状況も納得がいくところだ。

タロウとの違いは!?

ここで一つ、同等スペックを有した『ぱちんこ ウルトラマンタロウ2』(以下、タロウ)との違いを考察してみる。

まずは「RUSH突入までの流れ」が大きく違うという点だ。RUSH突入率は全く同じであり、『タロウ』は大当り後にタロウポケットで100個ほど多く払い出しが行われる。突入までのフローは両機種とも違い、『牙狼 月虹』は初回大当り終了までに「魔戒CHANCE」か「非魔戒CHANCE」が確定する仕様。『タロウ』はオーソドックスな1種2種で大当り後、約1/9を6回転で引く必要がある。

問題なのが『タロウ』の場合、6回転内で大当りしても約5回に1回はRUSH突入しない事が生まれてしまう点だ。従来の1種2種であればRUSHほぼ濃厚が、20%終わってしまう展開が生まれる。

ユーザーから見れば「当たったのに終わりかよ」と次に打つ意欲を大きく削られてしまうだろう。突入時に、ある意味3000発がほぼ確定する点を前面に出し、緩和措置(一例を記載して頂きたいです 例えば○○など緩和措置を設ければ・・・的な)を行えば変わったかもしれない。

もう一点、RUSH中の大当りまでの流れにも違いがある。両機種とも保留はないが、『タロウ』の方は約1/9なので即当りは少なく、打ちっぱなしではみるみる玉が減ってしまうので、単発回しとなり、テンポが非常に悪くなる。ユーザーにとってはストレスが溜まるインターバルが毎回の大当り間で発生しているイメージだ。

反対に『牙狼 月虹』は 1/1.08 なので、ほぼすぐに当たる仕様。稀にハズレを引いた場合にも「一撃入魂CHANCE」といったホラーを倒せば大当たり&「魔戒RUSH」継続、倒せなくても「魔戒RUSH」継続となる演出を使うなどハズレ時でもユーザーの集中力を途切れさせる事はない。

この一連の右打ち時の流れは現市場、『牙狼 月虹』のオンリーワン要素と言えよう。

唯一、残念な点・・・

さて、『牙狼 月虹』の大まかなヒット要因は上記の通り。その他、通常時の演出面もアニメ系SPの発展頻度を落とし、テンポが良く、変動効率が向上している点も要因と言えそうだ。

唯一残念な点は「遊タイム搭載」という点だ。ご存じの通り、遊タイムが搭載されていると夜の稼働が厳しくなる。パチンコは1時間あたりパチスロの約1/3程度しか回せない。そうなると19時以降で魔戒CHANCE終了後の台には座り難くなってしまい、必然的にそのような台は敬遠されてしまうということ。

「遊タイム到達まで追う時間がない」ということの他に「他人に得をさせること」を嫌う傾向が強いのだろう。ユーザーにとって優位な遊タイムが仇になっている事は非常に残念で仕方がない。今後、この「遊タイム」が活きるミドルタイプの登場を強く熱望する。だって、遊タイムはパチンコの夢の一つの形なのだから。

◆著者プロフィール
長谷川豊(はせがわ ゆたか)
アールイーサーチ㈱代表取締役。2017年3月に同社を設立。遊技業界内の情報収集および分析、遊技機の開発コンサルティングを中心に、遊技機業界に特化したマーケティング業務を行っている。

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