【レポート】キャッシュレス化に不利!? 立ちはだかるパチンコ営業の特殊性

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国内におけるキャッシュレス化の普及に伴い、パチンコ・パチスロ営業においても、その必要性が業界内において議論が始まりつつある。しかし本格導入に向けたハードルは決して低くない。

ホール営業にキャッシュレスを導入した場合、どのような影響が考えられるのだろうか。まずメリットとして期待できるのが、稼働・売上増である。

IT関連分野のマーケティングコンサルタントを務める㈱トライエッジの阿部睦氏は「現金に比べ、キャッシュレス決済は心理的ハードルが低い。ホールでキャッシュレス決済が可能となれば、時間潰しなどで、数ある選択肢のひとつとして、ホールに寄ってもらいやすくなるのでは」と話す。ライト層以下のファンをより多く取り込みたい業界にとって、遊技の敷居が下がる点は大いに歓迎できることではないだろうか。

しかしキャッシュレス決済には、ホール営業にとって不安材料も少なくない。その一つが決済手数料だ。

参考までにリクルートグループが提供するモバイル決済サービス「Airペイ」の概要を下表にまとめた。キャッシュレスの種類によって異なるが、手数料は3.24% or 3.74%だ。またコンビニ業界などでは、各社が個別のキャッシュレス事業者と交渉を行い、これ以下の手数料(1%前後?)で運営していると言われる。

もし、ホール営業における売上の全てがキャッシュレスとなった場合、膨大な手数料が発生する。例えば設置台数500台、平均台売が2万円のホールだと、1日の売上が1,000万円、ひと月の売上が3億円、この場合、決済手数料が3~4%だとすると900~1,200万円もの手数料が発生してしまう。

矢野経済研究所が実施したパチンコホール経営企業の売上・利益動向(2020年)によると、2019年度におけるホール経営企業131社を対象とした調査では粗利率15%、営業利益率2.2%が平均値となっている。他業種と比較し、営業利益率の低いホール業界にとって、キャッシュレス決済の使用割合が高まるほど、それに伴う手数料が重くのしかかりそうだ。

また入金サイクルの問題もある。キャッシュレス事業者の一部には、「即日入金」を謳う企業も存在するが、大半は数日間~1ヵ月おきにまとめて入金というところが多い。それに対して、現在のホール営業は良くも悪くも現金商売。その日、得た売上金をもとに、翌日の賞品を現金で仕入れるところが大半である。

ホールの資金繰りに詳しい船井総合研究所の金融・M&A支援部の平野孝シニアコンサルタントは、「仮に売上金が数日間、途絶えたとして、それでもやっていけるホールは極めて限られる」という。

他業種の事例だが2019年12月、高知市のスーパーマーケットが倒産した。東京商工リサーチの記事によると、同スーパーマーケットは売上減や設備投資の負担増が続いたなか、電子マネーの普及による現金化のタイムラグから手元資金が想定以上に乏しくなり、資金繰りが悪化。支払いのめどが立たなくなり、事業継続を断念した。

ホール営業は他業種と比較し、売上規模が大きいという特徴がある。入金サイクルの問題も、キャッシュレス決済の実現化に当たって足かせの1つになる可能性が否定できない。

またユーザー視点で見た場合、ポイント還元をキャッシュレス決済の大きな魅力として挙げる人が多い。しかし警察庁の現在の方針は、遊技料金に対してポイントを付与する行為をNG(遊技客から見れば遊技をすることにより賞品に加え財物等の獲得が可能なことから、著しく射幸心をそそるおそれがある=平成24年4月13日付け警察庁通達)としている。現行規則での運用となると、ポイント還元が不可となることから、ユーザーにとって魅力の低いサービスとなってしまう。

ここまで主な課題をざっとまとめた。そして、キャッシュレス決済の実現化に向けては、これらをいかに軽減化できるかがポイントとなるだろう。船井総研の平野シニアコンサルタントは「キャッシュレス事業者の考えは、金融業者とよく似ている。手数料ビジネスの旨味を知っているということ。売り上げ規模の大きなパチンコ業界を魅力に感じるキャッシュレス事業者も存在するのではないだろうか」と話す。

いずれにせよ、ホール営業にキャッシュレス決済を導入することは、一筋縄ではいきそうもない。どういったトレードオフを想定し、パチンコ業界版のキャッシュレス決済スキームを構築するのか、今後の業界内での議論に注目だ。

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