遊タイムに関してはこの1年で広く認知が進んだといえる。肯定的な意見も多く聞かれるが、「無いほうがよい」という意見も少なからず存在するなど、課題も浮き彫りになっている。
目次
認知度はおよそ65%
約9割が遊タイムに肯定的
まず、遊タイムの認知度は今現在どれほどのものなのか。円グラフを見ると、「(知っていて)遊技したことがある」「(知っているが)遊技したことはない」の合計は約65%となっており、全体の3分の2の遊技客が遊タイムについて認知しているという結果となっている。
昨年中は登場する遊技機のほとんどが遊タイムを搭載していたことや、ホール側でも積極的に遊タイムについてアピールしていたことが、ここまでの認知拡大に寄与したと考えられる。残りの約35%の非認知層は、コロナ禍によりホールから足が遠のいた遊技客も多いことや、遊タイム非搭載の『海物語』シリーズなどしか遊技しない年配層などが属していると思われ、更なる認知拡大にはこうした遊技客に、いかに遊タイムの魅力を伝えていくかが重要なポイントだろう。
遊タイムに関しては約42%が「あったほうがよい」としているほか、「どちらでもよい」を含めると約9割の遊技客が肯定的に捉えているようだ。やはり、初当たりを引くまで無尽蔵に投資するよりも、規定回転数で大当たりのチャンスをもらえる遊タイム最大の特徴が評価されているということだろう。これにより予算に応じた立ち回りが出来るようになるなど、遊タイムがパチンコに与えた影響は大きい。そういう意味でも、遊タイムは一定の成果を納めているといえる。
大きな課題は
「ヤメ時」と「ハイエナ」
ポジティブな意見が多い反面、もちろんネガティブな意見も存在する。遊タイムが「ないほうがよい」理由で多いのは「ヤメ時がわからない」「ヤメた後に他の人に打たれてしまう」というものだ。
ヤメ時については現状、一連の大当たり終了後が基本だが、遊タイム発動まで残り200回や300回となると、確かにヤメ時に困る。ましてや、ヤメた後にハイエナをされるとなると尚更ヤメづらい。こうした遊技する上でのストレス要因や不安要素を少しでも解消するようなホールオペレーションを模索していきたいところだ。
トレンドはロング時短から
実質大当たり濃厚タイプへ
遊タイムの展望や活用法を考察する前に、遊タイムのタイプやトレンドについておさらいしておきたい。
遊タイム機の導入初期に多かったのがいわゆるロング時短タイプだった。大当たり確率の3倍以上の時短が付与されるタイプで、今でこそどのスペックでも満遍なく搭載されているタイプだが、最初は主にミドルスペックの機種で多く搭載され、大ハマりの救済といった意味合いが強かった。
発動すれば大半は大当たりにつながるが、極稀にスルーすることがあり、実際にスルーを体験した遊技客がSNS等で嘆き節を投稿するなど、結果若干ではあるが遊タイムに対するネガティブイメージを生んだ要因となってしまった。
その後、遊タイムの恩恵を小さくすることで出玉性能を上げたタイプや、大当たりの一部で遊タイム規定回転まで時短が付与されるタイプなどが登場。そして今、遊タイムのトレンドとなっているのが、遊タイム発動で実質大当たり濃厚となるタイプだ。
1種2種混合タイプで多く見られ、右打ち中の大当たり確率が非常に高い1種2種混合タイプの特性を上手く活かした遊タイムとなっている。大当たりせずにスルー、といった不安や不満が排除されており、手を出しやすく追いやすい点が支持を受けている所以だ。
直近に登場した『ぱちんこ ウルトラマンタロウ2』や、今後登場する『P牙狼月虹ノ旅人』もこのタイプに属しており、今後もシェアが拡大していくと推察される。
遊タイムは今後
ダウントレンドに?
パチンコ市場に精通するエーゼットエンターテインメントの中嶋優代表取締役は、遊タイムの今後の展望について「基本的に遊タイムが付いていない機種が増え、遊タイム機が減ってくるとみている。今まで遊タイムをつけないと保通協に通らなかったものが、つけなくても通るようになったことが大きい。そのため、今後は遊タイム機の方が逆に希少価値が高くなるのではないか」とし、遊タイムはダウントレンドになってくると予想する。
実際、『Pコードギアス 反逆のルルーシュ』『Pフィーバー革命機ヴァルヴレイヴ2』『Pギンギラパラダイス 夢幻カーニバル』『P大海物語4スペシャル BLACK』などには遊タイムが搭載されておらず、登場を控える『Pスーパー海物語IN沖縄5』『P弾球黙示録カイジ5』にも搭載されていない。
遊タイム非搭載の傾向は今後、ミドルスペックで顕著になるといい、「遊タイム搭載の『牙狼』が登場するまでに、どれだけ遊タイムを認知してもらえるか、またどこまで希少性を伝えられるかを考えていく必要がある」と同氏は話す。
スペック別に考える
遊タイム活用法
これまでの内容を踏まえた上で、これからの遊タイム機の活用法を探っていきたい。
まずはミドルだ。ミドルは先述の通り、遊タイム非搭載機の比率が上がってくるため、多くのホールで遊タイム機の圧縮を図ると思われる。必然的に希少性が増すため、遊タイム機をアピールすることが必要になる。
しかし、ミドルの遊タイム機は、遊タイム発動までの規定回転数が遠く、夜の稼働が伸びない現状がある。
「夜稼働が伸びないのは、適性台数ではないことと、そもそも遊技するファンが少ないのが要因。そのため、ミドルの遊タイム機を上手く使うためには、“いかに導線をつくり遊技頻度を増やせるか”が重要になる。かといって、遊タイムコーナーを設けるのは現状を考えてもリスクが高い。新台コーナーに遊タイム機を織り交ぜることで、導線をつくり、ファンをつくっていくことを推奨したい」と中嶋氏は話す。
ライトミドルに関しては、2~3万円の投資で遊タイムが発動し、ミドルにも引けを取らない出玉性能を有している機種も多いことから、今後もシェア拡大を狙える部分ではあるが、少し飽和し始めている点がネックだ。よって、新台と既存機とを差し替えていくことも必要になってくるだろう。差し替えをしつつ、シェアを維持できるかどうかが重要だ。
そして中嶋氏は甘デジが今後の遊タイム機における一番の差別化ポイントになるとみている。
「『ぱちんこAKB48桜LIGHT』などは、パチスロユーザーやミドルユーザーが回遊する傾向が見られる。また、遊タイム発動までの規定回転数が少ないため、誰でも手を付けやすい。今後、コロナ禍が落ち着き高齢者が戻ってくることを想定しても、積極的に導入していくべきカテゴリだと思う。ミドルユーザーの回遊と、スリープユーザーの回帰の二軸でアプローチしていくべき」。
加えて、遊タイムが身近で手軽なものと認識させるために、1円パチンコなどへの導入も効果的と同氏は話す。
最後に上表を見てもらいたい。これは遊タイム搭載・非搭載の3機種の稼働率を時間帯別に表したものだ。下の表が3機種平均の数値だが、それによると、開店から11時までは遊タイム搭載機が、21時以降は非搭載機の方が稼働率で優位に立っている。
これからも様々な機種が登場してくるが、「朝一稼働上昇には遊タイム機」、「夜稼働上昇には遊タイム非搭載機」という機種選定指標が見えてきたことは、今後を考えても非常に大きいと言えそうだ。