上場している主な遊技機メーカーの第3四半期(2020年4月~12月)までの業績がこのほど出揃った。新規則施行後の2018年~19年を底に、やや持ち直しつつあった新台市場だが、新型コロナウイルスの感染拡大が、遊技機メーカーの業績にも冷や水を浴びせた格好だ。
旧規則機延長措置で
新台需要増が先送り
特定の個社に限らず、遊技機メーカー全体の業績にとって最大のマイナス要因は、新型コロナウイルスの感染拡大防止を目的として、昨年5月に施行された経過措置期間の延長だ。
本来であれば、旧規則機撤去の経過措置がほぼ満了する今年1月末に向け、大量の新台需要が生じることは確実視されていたが、経過措置期間延長の対象外となった旧規則高射幸性パチスロ機分を除き、それら需要の多くが先送りされている。
コロナ禍に加え、毎年必ず訪れる季節要因も、マイナス度合いに拍車をかけており、規則改正以降、パチスロ機では、新台需要が極端に低迷した2018年度以降、パチンコ機では2019年度を底に、緩やかに上昇基調にあった新台市場の回復も、ここにきて、やや厳しい状況に陥りつつある。
今回の四半期決算で、増収増益だった前年同期の業績から一転、黒字を確保しながらも、大幅な減収減益を余儀なくされたSANKYOは、昨年4月から年末までに、リユース機を除き、パチンコ5タイトル、パチスロ1タイトルを市場投入している。
第3四半期までの販売台数の年間計画達成率は、パチンコ機が通期予想15万台の57.5%となる86,266台、パチスロ機は、通期予想28,000台の14.8%となる4,145台に留まった。ただし同社では、10月から12月の販売実績が前年を上回る水準で推移していることから、「新台購入意欲は高まりつつある」と見ている。今後の市場についても、「新規則機への入れ替えを急ぐ必要性に迫られる段階」とし、需要の高まりが本格化していくことを想定。多種多様な新機種を投入することで、入替需要の取り込みを図っていきたい考えだ。
セガサミーHDおよび平和の遊技機部門は、コロナ禍によるマイナスの影響を受け、第3四半期までの業績で赤字を計上した。
このうち、前年同期に計上した約195億円の黒字から、約88億円の赤字に転落したセガサミーHDの遊技機部門は、ビッグタイトル最新作となるパチンコ機『P真 ・北斗無双第3章』を43,741台販売するなど、コロナ禍のなかにも関わらず好調に推移した。
しかし、全体の累計販売台数ではリリースされたタイトル数自体が少なかったこともあり、厳しい数字が並んだ。パチンコ機が、前年同期と比べ15,735台減となる59,359台、パチスロ機では、3タイトルで前年同期比93,373台減となる12,487台に留まっている。特にパチスロ機の落ち込みが目立ち、遊技機部門全体の業績に響いた格好だ。
平和も、販売台数が大きく減少した。同社では、下期から新台の販売を本格化したが、主力タイトルである『Pルパン三世~復活のマモー~』が16,040台、さらに『P戦国乙女6~暁の関ヶ原~』が14,564台に留まり、パチンコ全体でも、前年同期比25,514台減の37,867台と厳しかった。
一方のパチスロ機は、6号機に対する市場評価が芳しくないこともあり、前年同期に比べ56,021台減の4,746台と大幅に販売台数が減少。同社では、「経過措置期間延長に伴う入れ替え需要の分散化等により、販売台数が減った」と要因を分析している。
また、業績予想も修正した。市場環境の厳しさから、一部タイトルの発売を来期以降に見送るなどし、通期の販売台数は当初計画の13万台から84,000台(内訳はパチンコ4タイトルで49,000台、パチスロ6タイトルで35,000台)に見直している。
ヒット機種市場投入も
藤商事は赤字決算が継続
一方、コロナ禍以前から厳しい業績が続いているのは藤商事だ。2020年3月期の第1四半期で赤字に転落して以来、7四半期連続で赤字決算が継続している。
今回の四半期では、同社が新たな版権シリーズと位置づける『Pとある魔術の禁書目録(インデックス)』が、17,000台販売のヒットタイトルになったことで、中間期よりも赤字幅を縮小することにこぎ着けた。
しかし、ここまでの遊技機販売状況を前年同期比で見れば、パチンコ機販売は4,800台減の36,600台と微減、パチスロ機は前年同期に7,700台あった販売台数だが、今期はまだゼロのまま。前年同期比では、14億円以上赤字幅が拡大している。いまだ収束の気配がないコロナ禍による新台需要低迷も加わり、黒字回復までの道のりは、依然厳しい状況といえそうだ。
また、今回の四半期決算で唯一の増収増益となったのがオーイズミ。主力の機器事業では、周辺設備機器部門で「樹脂研磨式メダル自動補給システム」「多機能 IC・メダル貸機」の拡販に注力したものの、先行き不透明な状況からホール側の設備機器への投資スタンスが抑制的だったため、販売状況は厳しい結果となったという。
そのなかで、12月に市場投入した同社の人気パチスロシリーズの最新作となる『パチスロひぐらしのなく頃に祭2』が、市場において高評価を得たことにより、受注が好調に推移した。同社では、当初想定していた販売台数を上回り、業績に貢献したとしている。
以前は、ビッグタイトルの販売状況が、業績を大きく左右していた遊技機メーカーの業績だが、この数年の市場は、多品種少ロット化の傾向に拍車がかかっている。各メーカーとも、安定した収益構造を目指すため、その流れに対応する体制づくりに躍起だ。
いずれにせよ、全体的に縮小傾向が続く市場のなか、今回はコロナ禍が追い打ちをかけた格好となっている。今後は、これから本格化する新規則機への入替需要をどこまで獲得できるかが、業績浮上のカギになっていきそうだ。