昭和末期から平成初期にかけてのパチンコ店を懐かしむ声は多い。
《ゲームセンター タンポポ》(東京都福生市)は、そんなニーズに応える体験型博物館だ。
古き良き空気感を後世に
昭和28年創業の老舗パチンコ店《タンポポ》が今年2月29日、67年の歴史に幕を閉じた。
大衆娯楽の香りを色濃く残す同店をこのまま潰すのはあまりにも惜しい…、このように考え、《タンポポ》のオーナーに、施設の継続使用を願い出たのが、ユーチューブの人気チャンネル「パチンコ店を買い取ってみた」で有名なひげ紳士さんだ。
同氏の尽力もあり、同店は7月3日、《ゲームセンター タンポポ》として復活することとなる。
このあたりの経緯について同氏は「古き良きパチンコ店を再現するという構想は約3年前からあり実際、約1年前から物件を探していました。《タンポポ》さんが閉店すると聞き、閉店するその日になるのですが、オーナー様に、店舗の継続使用についてお願いしました。既にお店を解体するための業者さんの手配も済んでいたようですが、古いパチンコ店を残し、後世に伝えていきたいという趣旨と熱意を伝え、賛同して頂きました」と話す。
店内に足を踏み入れると、そこはまさに90年代前後のパチンコ店だ。遊技機は当然のことながら、遊技イス、島、呼出ランプ、照明、床、空調など、店内ほぼ全ての設備が“ザ・昭和”である。
遊技機はパチンコ69台、パチスロ18台を設置。遊技料金は1時間1000円の時間制となっており、3000円で終日打ち放題となっている。
「店内の空気に合ったパチンコ、パチスロ機を設置しています」と話す同氏。そのため、CR機は1台も存在せず、80年代~90年代半ばにかけて活躍した現金機の名機が顔を揃える。当時は現在に比べ、アナログ的なパチンコ機の比重が高かったことから、同店のラインナップにおいても、羽根モノ、一発台、一般電役といったジャンルのパチンコ機が主流を占めていた。
主な客層は、当時を知る「40代半ば~60代の方」が多いという。今の時代、例え高齢者でもスマホを駆使し、遠方から駆け付けてくれるようだ。ただし、一方で同氏は「若い世代にも昔のパチンコ台の楽しさを知ってほしい」と話す。
そのため、店内にある各パチンコ機の設置方法については、先の考えを反映した手法が採られている。具体的には、店内入り口から奥に向けて、各ジャンルの遊技機は、歴史の古い順に設置しているのだ。
「当時のパチンコ機のデザインは現在に比べ、とてもシンプルです。しかしよく見ると、機械の登場時期が新しくなるにつれ、少しずつですが、パチンコ機の枠にランプが付いたり、そのランプが大きくなったりと、他社のパチンコ機より、ちょっとでも目立たせようというメーカーさんの工夫が感じ取れます。形は違えど、今も昔もメーカーさんの考えや狙いというのは、それほど大きく変わらないんですね。こういった事も含めて、パチンコ機の歴史を若い世代にも知ってもらいたい」(ひげ紳士さん)。
同店が再現しているのは、遊技機や設備といったハード面に限らない。接客や営業方法といったソフト面も、昭和スタイルを再現した。ひげ紳士さんほか数名のスタッフは、カギをじゃらじゃら回して店内を巡回、懐かしのマイクパフォーマンスを披露する一方、玉箱の上げ下げや交換作業は客任せ、時として客との雑談に華を咲かせる。今のホールスタッフとは、良くも悪くも180度異なるオールドスタイルの接客だ。
地元ファンに再び
今後の店舗運営については「地元の人に、もっと来店してもらえるようにしていきたい」と課題を挙げる同氏。
「かつて、《タンポポ》も含めて数軒のパチンコ店がこの付近に存在していましたが、今はありません。しかし当時、パチンコを打っていたお客様は、今もこのあたりに住んでいます。こうした人たちに再び、タンポポで遊んで頂きたいのですが、懐かしいだけじゃ、なかなか遊んでくれません。地道に今後も提案を続けていきたいです」と話す。