4月1日からの原則屋内禁煙を控え、ダイナムはこのほど、全店舗で完全分煙を展開し、来店客に受動喫煙のない健康的なパチンコホールの提供を改めて発表した。
同社は3月現在、全国46都道府県で405店舗を展開。業界最多の店舗数を展開するリーディングカンパニーとして、ホールの分煙化を推進するため、先行して分煙を実施する店舗のデータや工事費用、臭気対策の結果を公開するなど、業界全体での分煙対策を呼び掛けている。
・業界全体での分煙対策も強調
ダイナムは1月15日に「2020完全分煙プロジェクト」の発表会を開き、藤本達司社長が「全店舗で分煙を展開し、受動喫煙のない健康的なホールを提供することを宣言する」と発表した。その上で、「改正健康増進法の趣旨は望まない受動喫煙をなくすことだ。一般社会と共存していく上で本法の趣旨をみたすため、ダイナムは全店舗の分煙を実施していく」と強調した。
加熱式たばこへの対応については、「安全性が現在もなお担保されていない以上、ダイナムでは加熱式たばこを含めて受動喫煙を不可とする」と説明。加熱式たばこを吸いながら遊技ができる加熱式たばこ専用喫煙室や専用フロアは設けない方針を示した。
さらに「パチンコユーザーの約半数が喫煙している現状から、ホールの禁煙化に不安を覚えるパチンコホールも多いと思う。しかし、喫煙率が減少を続けている中、喫煙可能という形態が多くの非喫煙者、見込み客を遠ざけている可能性もあるのではないか。何より社会からの要請が今回の改正健康増進法であり、パチンコ業界ではこれからも足並みを揃えて法改正の趣旨に沿った対策を取るべきだと考えている」と強調した。
・喫煙室の設置費用はミニマムで250万程度
また、2019年10月から《ダイナム宮城仙台新港店》、《栃木小山喜沢店》、《滋賀高島店》、《新小岩店》、《鳥取安長店》の5店舗で先行して分煙対策を実施しており、これらの実施店での状況や結果を踏まえて今後の方針などを公開した。
今後の同社の分煙対策の標準仕様は、①ホール喫煙室の設置、②バックヤードの従業員喫煙室の設置、③自動吸殻回収装置の蓋の改修、④喫煙室入口、店舗出入口へ喫煙種別看板の設置、の4点。
喫煙室の広さは、9人程度が利用できるスペースを標準仕様とし、店内に1ヵ所を設置する。喫煙室内に置く灰皿は「無水タイプ」でオペレーションの軽減化を図り、ヒップバーやテーブルなどは設けない。その他、店外にも各出入口の側に喫煙所を設置する。
設備・施設担当役員の川野創平取締役は喫煙室の設置費用について、「ミニマムでは250万円程度、稼働状況が良ければ少し面積を広げて、プラスアルファになると考えている」と説明。会社全体の分煙対策費の総額では約10億円を見込んでいると述べた。
・店外の喫煙スペースの利用は意外に多い
臭気対策では複数の清掃方法を先行分煙店で試し、実施前とその後の臭気を測定。何も対策をしなかった《滋賀高島店》でも、2ヵ月後には何のニオイか分かる程度の弱いニオイまで減少したとして、 川野取締役は「経費を掛けなくても、時間が経過すればお客様にとって不快のない状況になると考えている」と述べた。
店内、店外の喫煙状況について《滋賀高島店》で調査した結果、店内喫煙室が53.4%、店外喫煙スペースが46.6%と報告。「意外に店外の利用が多いことがわかった。そのため出入口付近に店外喫煙スペースを設けた際に、副流煙が店内に流入しないように注意したい。当店では出入口から3メートルほど離して店外喫煙スペースを設置していきたい」(川野取締役)と語った。
・分煙化で休眠層の掘り起こしに期待
一方、完全分煙化による遊技層の変化について、営業担当役員の松岡大成取締役が説明し、完全分煙の低レート業態の『信頼の森』と、喫煙可の低レート業態の『ゆったり館』の客層を比較したところ、完全分煙店舗のほうが、男女とも60代、70代が高くなっていると報告した。
また、先行5店舗で分煙切替時に行ったアンケート結果では、来店客の約10%が過去1年間に遊技をしていなかった客層だったとし、松岡取締役は、「分煙というキーワードは、少なからず休眠ユーザーを掘り起こす可能性は高いと考えている」と分析した。また、休眠ユーザーは低レートへ復帰する傾向にあると述べた。
先行5店舗での販促については、「ユーチューブやグーグル広告なども活用したが、来店の動機になったのはチラシの方が多かった。パチンコを知らないお客様に何を伝えるか、そうしたキーワードがこれから必要になると考える」と述べた。
今後の分煙化に伴う店舗オペレーションでは、分煙を知らない遊技客への対応用として全従業員による携帯灰皿の常時携行、喫煙用離席カードの準備、従業員が休憩中に喫煙した際のニオイ対策、休眠・新規ユーザーへの案内や初回向けブースの設置などを実施していく方針だ。