【おしえて亀山先生!人が辞めない処方箋 #3】「最近ちょっと疲れてて…」その一言、実は離職の予兆かも!?  「2週間ルール」で防ぐメンタル不調

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Q1:「最近疲れてる」と言っていた社員が、翌月突然休職。予兆はあったんでしょうか?

あったはずです。「疲れている」という言葉の裏に、多くの場合「眠れていない」という問題が隠れています。

京都大学病院の精神科への新規相談では、「不眠・せん妄」が全体の約6割を占めています。さらに、うつ病などの精神疾患では、「眠れない」が最初のサインとして出ることがわかっています。

つまり、「最近眠れない」という訴えは、メンタル不調の黄色信号。見逃すと、休職や離職につながってしまうのです。

うつ病リスクが2.3倍に上昇

Q2:「眠れない」とメンタル不調、そんなに関係あるんですか?

とても密接です。眠れない状態が続くと、うつ病リスクが2・3倍にも跳ね上がります。

1997年、企業倒産が相次いだ翌年、日本の自殺者数は前年の24391人から32863人へと約8500人も急増しました。調査の結果、自殺した人の約半数がうつ病だったこと、そして当時はうつ病患者の4人に1人しか精神科を受診していなかったことがわかりました。

そこで2010年、内閣府は「お父さん、眠れてる?」というポスターで自殺対策キャンペーンを実施。「眠れない」が2週間以上続いたら病院へと呼びかけたのです。

この「2週間ルール」は、“早めの相談につなげる合図”として職場でも活用できます。

Q3:「最近眠れない」と相談されたら、どう対応すればいいですか?

まず聞くべきは「いつ頃から?」です。2週間以上続いていたら、産業医面談を勧めましょう。

【今日から使える!3つの質問】
①「最近よく眠れていますか?」
②「それはいつ頃からですか?」
③2週間以上続いている場合→「一度、産業医に相談してみませんか?」

ポイントは、「産業医への相談内容は守秘義務で守られるので、上司に伝わることはありません」と添えること。これで心理的なハードルが下がります。

また、ストレスチェックの結果から相談を受けたときも、この3つの質問を使ってください。数字で「高ストレス」と出ていても、本人はピンと来ていないことがあります。でも「眠れていない」は自覚しやすく、行動につながりやすいのです。

【例外】
「死にたい」「極端な焦り」「連絡がつかない」のような場合は、2週間を待たず、すぐに医療機関につないでください。

Q4:本人が「眠れています」と言いますが、周囲から見ると明らかに疲れています。どう対応すべきですか?

「周囲が気づいている」ことは非常に重要なサインです。本人に「眠れているか」と直接聞くのではなく、「最近お疲れのようですが、何か困っていることはありませんか?」と声をかけてみてください。

静岡県の富士市医師会が、うつ病・自殺予防対策の一環として不眠に関する啓発キャンペーンとして作成したポスター。

また、同僚や家族から「様子がおかしい」と相談があった場合も、産業医面談を勧めてください。産業医には守秘義務があり、詳細を会社に伏せて対応できますので、安心して相談につないで頂ければと思います。

Q5:休職した社員が復職するとき、「睡眠」は産業医にとって重要な指標ですか?

はい。特に重視するのは「規則正しく眠れているか」です。

うつ病に限らず、休職中の方の中には昼夜逆転してしまう方もいます。また、眠れているからといって薬を自己判断でやめてしまう人もいます。産業医はこれらを総合的に判断し、「この人は業務ができる生活習慣になっているか」「疲れ具合はどのくらいか」などを、復職予定の職場の状況とあわせて、総合的に判断します。

復職支援で迷ったら、まず産業医に相談してください。本人・主治医・職場の三者で連携することが、再発を防ぐ鍵です。

今日の「処方箋」

「2週間ルール」を職場に取り入れよう」
これだけでも、“ミス”や“事故”を確実に減らす力があります。
ご安全に!

◆プロフィール
亀山 嘉志人(Yoshito Kameyama)
株式会社torchi 代表取締役社長
医師・産業医・労働衛生コンサルタント。「スタッフの突然の休職」「採用してもすぐ辞めてしまう」といった業界特有の「人の問題」を、産業医の視点から解決する専門家。経営者の悩みに寄り添い、従業員の健康管理を通じて「人が辞めない、強い組織」作りをサポートする。企業研修や顧問契約に関するご相談は下記まで。
【連絡先】info@torchi.net

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