【コラム】開発者が意図的にパチンコ(パチスロ)攻略法を仕込むことはあり得るのか?

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極稀な話ですが、回収騒ぎになるようなパチンコ(パチスロ)機が発売されることがあります。その度に「開発者が意図的に仕込んだ」等の根拠のない噂話が蔓延することがありますが、本日はそんな事象について一開発者の目線から言及したいと思います。

結論から言えば、ほぼ100%あり得ないと個人的には考えております。昔ならいざ知らず、現在ではしっかりとログを取った開発をしていることが殆どです。そのため、意図的に仕込んだのであれば、ほぼほぼその事実を特定することが可能だからです。

また、パチンコやパチスロの開発は機械全体の開発にかかわった人で言えば100人以上は珍しくもない話ですが、攻略法に係る部分(プログラム等)を担当する開発者は多くても数人、少なければ1名というのもあり得る話ですので、もし不正をしたのであればすぐに犯人にたどり着きます。

そこまでリスクを負った一方で、その攻略法で1日あたり稼げる金額はどの程度でしょうか。今の遊技機はコンプリート機能が搭載されていて上限にフタがされている上に、毎日そんなにバカ出しをしていたら相当怪しいですよね。今はホールの防犯カメラも非常に高性能なカメラが導入されているので、そんなことやれば証拠を簡単に残すことになります。

では、なぜそのようなことが少ないとは言え起こるのか?と申しますと、様々な理由が考えられるのですが、一番大きな要因としてはデバッグ(コンピュータプログラムや電気機器に存在するバグ(欠陥)を特定し、それを取り除いて仕様通りに動作させるための作業)不足だと思われます。

パチンコやパチスロは、保通協やGLIJapanのような各種指定機関の適合をもらった後、各都道府県公安委員会の検定を通過しなければ、ホールに設置することはできません。そのため、機械が完成した後も非常に時間がかかる仕組みとなっています。

メーカー側としては機械を売らなければ売上は0円ですので、販売計画というものが売上を立てるために非常に重要な要素となります。特に、それぞれの会社において売上が未達の場合、営業としては機械の販売スケジュールというのは少しでも前倒しして売り上げを少しでも上げたいと思うのは自然な考え方です。

その一方、開発としてはより良い機械をつくるためにギリギリまで開発に手を入れたくなるものです。特に市場の動向やユーザーの意向を盛り込むために、スペック調整等に関しては最後まで悩みぬくことも少なくありません。

そうした場合、ギリギリでの修正でプログラム等々にデグレ(システムの改修や機能追加、インフラ設定の変更などを行った結果、かえって品質が低下してしまうトラブル)が発生した場合、デバッグ期間が短く、全てのバグがとり切れないという事象が発生しやすくなってしまいます。

保通協やGLIJapanの各種指定機関は、現行規則と照らし合わせて遊技機として適合しているかどうか?を確認する機関であり、バグがあることによって適合、不適合に関して結果に影響はありません(勿論、規則に合致しないバグが発生した場合は不適合になりますが)。そのため、バグがあるから不適合になるということは一般的には無いのです。

私が過去に所属していた会社も、過去に大当たり超濃厚演出がハズれてしまうバグが保通協の適合後に見つかって、泣く泣くその型式をお蔵入りしたことがあります。

ゲームであれば致命的なバグが市場導入後に発生したとしても、緊急対応の修正パッチにて導入後でも修正対応をすることが可能だったりしますが、遊技機に関してはその対応が不可能ということも大事になる要因の1つだと考えます。

我々開発もそのようなことが万が一にも無いようにデバッグを入念に行いますが、どうしてもすり抜けてしまうミスが発生してしまうこともありますので、更に気を引き締めて開発を行っていきたいと思います。

◆プロフィール
荒井孝太
㈱チャンスメイト 代表取締役

パチンコメーカー営業、開発を歴任後、遊技機開発会社チャンスメイト(https://chancemate.jp/)を設立。パチンコ業界をより良く、もっと面白くするために、遊技機開発業務の傍ら、ホール向け勉強会や全国ホール団体等の講演会業務など広く引き受ける。

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