
早いもので4回目の連載となりました。今回のテーマは、いま私たちが取り組んでいる「ホール業務の時短」です。ちょっとした「時短」が積み重なると、驚くほど大きな効果を生み出します。その可能性をお伝えします。
AIは非常に便利な技術であり、活用できる分野も多岐にわたります。ただし「便利さ」というのは、実は数字で測りにくい特性をもっています。
AI導入の最終目的は、「人が出す成果を、より短時間で、より高精度」に実現すること。そのうち、成果の「高精度化」は評価が難しい一方で、「短時間化」は効果が数字で見えやすい部分です。
たとえばホール管理者の日々の分析業務を見てみましょう。
・競合のアラート(なにかしらの動き)が3日に1回で5分析=月50分析
・新台が月2回で15分析=月30分析
・特定日が月3回で15分析=月45分析
・レイアウト変更が月1回で5分析=月 5分析
・営業分析が週1回で15分析=月60分析
合計すると、月間で190分析、年間では実に2,280分析にもなります。1分析を10分とすると、合計で380時間。実に丸16日分が「データ整理」に費やされている計算です。
これらの業務は、これまでAIによる自動提案や要点抽出がない中で、すべて人の手で行われてきました。「自分の頭で考える」ことはもちろん大切ですが、AIがその一部を肩代わりしてくれるだけでも、負担は大きく軽減されます。
「時短」を積み重ね
現場に余裕と創造力を
さらに、分析業務以外でもAIによる時短効果ははっきりと見えてきます。
たとえば、毎月の営業会議用の資料をまとめる作業では、これまで2時間ほどかかっていたものが、AIの支援で大幅に短縮できます。これを1年分に換算すると、約24時間の削減になります。
また、チャットボットを導入して接客の一部を自動化すれば、1日50件の問い合わせを想定した場合、年間にしておよそ304時間の時短につながります。さらに、お客様の声を整理・集約する業務も、AIのサポートで月1時間ほど短縮でき、年間では約12時間の削減効果が見込めます。これらを合計すると、分析以外の分野でも年間で約340時間もの業務時間を短縮できる計算になります。
料理に例えるなら、AIは「下ごしらえを手伝ってくれる助手」のような存在です。優れた料理人でも、野菜を切る、下味をつけるといった作業が短縮できれば、より創造的な料理に集中できます。AIの役割もまさにそこにあります。
AIというと「すごいことをやってくれる魔法の仕組み」と思われがちですが、私たちが注力しているのは、もっと地道で現実的な部分です。データ整理、資料作成、接客対応、顧客の声の吸い上げ―。
一つひとつの「小さな時短」が積み重なることで、現場に余裕と創造力が生まれます。そこにこそ、AI導入の本当の価値があると考えています。
◆プロフィール
髙橋和輝
株式会社ピーメディアジャパン代表取締役。大前研一ビジネススクール出身。18歳から現場一筋で、ホール企業勤務を経て、コンサルタントとして独立。業界初のホール企業向けサブスクサービスを12年運営。現在はパチンコ特化型BtoBプラットフォームを展開(2024年取引額約6.5億円)し、ホール営業×AIを開発中。



