【コラム】ボーナストリガー(BT)機の提案と実態のギャップ〜ノーマルタイプの“派生型”として捉える視点〜

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2024年8月、日電協より「ATとAタイプの中間を補完する第三のカテゴリ」として発表されたパチスロBT機の構想から約10か月を経て、2025年6月以降、実際に市場へBT機が投入されはじめました。

当初は“第3のパチスロ”という打ち出しに業界内でも大きな注目が集まりましたが、実際に設置された機械を見て感じるのは、むしろ既存ノーマルタイプに極めて近い遊技性と、よりシンプルなゲームフローであるという点です。

本稿では、BT機の実態とユーザー視点からの遊技性、そしてホールでの活かし方について、現場目線で考察していきます。(文=ジェイさん@発信する遊技機クリエーター/J-BEAT合同会社代表)。

BT機は“簡略化されたノーマル機”?

BT機最大の特徴は、「ボーナス終了後に遊技枚数がいずれかに固定される」という点にあります。これにより、従来のノーマルタイプでは当たり前であった、ボーナス察知後に1枚掛けでボーナスを揃えるといった手順が不要となり、BT機ではマックスベット遊技のままボーナスを揃えるという遊技性に変わりました。

従来のノーマルユーザーからは「遊技感が変わった」「損をしている感じがする」といった意見も聞かれる一方で、ライトユーザー層にとっては遊技の簡略化につながっています。

また、制度上BT機にはRTを搭載することができません。これまでノーマルタイプにスパイスとして加えられていたRT仕様が使えないことは、一見マイナス要素に感じますが、その分、純粋なボーナスだけで構成された設計となっており、ゲームフローはむしろ明快になったと言えるでしょう。

事前提案時こそ5つの遊技性が示されるなど、複雑なゲーム性が想像されていましたが、BT機の実態は極めてシンプルな構造であり、ノーマルタイプの“派生型”として捉えることができます。

“第3カテゴリ”としての押し出しと現場とのギャップ

BT機はATタイプとノーマルタイプの中間地を目指した第3のパチスロとされていますが、ホール現場で実際に扱うにあたっては、そのようなカテゴライズに強くこだわる必要はないと感じます。

というのも、射幸性の面ではほぼノーマルタイプ相当であり、ゲーム性においても、前述したRT非搭載などの影響からノーマル機以上にシンプルです。そのため、事前知識の少ないユーザーにとっても、負担の少ない遊技が可能です。これをあえて「新ジャンル」として特別視しすぎると、かえってユーザーにとっても店舗にとっても距離が生まれてしまう可能性があります。むしろホール運用上では、BT機=ノーマルタイプのバリエーションの一種として捉えるのが、最も現実的かつスムーズでしょう。

スマスロAT機とのゾーン分けが運用のポイントに

現在のパチスロの中心が荒波系スマスロAT機となっている状況においては、ノーマルタイプを中心とした射幸性を抑えたスペックの重要性が再認識されつつあります。BT機は、まさにその文脈に合致した存在であり、出玉性能を抑えた設計であることが制度的にも担保されています。

一方で、BT機は現状、スマスロ筐体で登場することが多いため、AT機と混在させて設置すると、ユーザーにとってスペックの違いが見えづらくなるという課題があります。

そのため、スマスロAT機とは明確にゾーンを分けつつ、ノーマルタイプの島や構成の一部として自然に組み込む運用が、理にかなっていると考えます。ジャグラーやハナビといった既存ノーマル機と並列に設置すれば、遊技性・射幸性の共通点からも、違和感のない配置が可能となるでしょう。

おわりに

BT機は制度上こそ新カテゴリでありながら、実態として現時点ではノーマル機のバリエーションの一種として捉えるのが最も実用的です。ホール現場では、BT機を過度に特別視することなく、Aタイプの補完勢力としてどう活かすかを冷静に見極めていくことが求められます。

ライト層にも安心して遊技していただけるわかりやすい機械が求められる今、BT機が持つシンプルさは、今後の台選びや運用設計において、確かな武器となる可能性を秘めているのではないでしょうか。

◆プロフィール
ジェイさん@発信する遊技機クリエーター
J-BEAT合同会社代表

発信するプロ遊技機クリエーター兼ライター。過去遊技機メーカー3社で勤務。在籍中に10数機種の遊技機開発に携わる。現在は法人を経営しつつ、フリーのクリエーターとして遊技機開発に従事。また、メーカー所属では出来ない発信、評論活動を行っている。
X(旧Twitter):https://twitter.com/jsan65536

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