2025年6月、パチスロ業界に新たな波を起こすべく「ボーナストリガー(BT)機」の導入がスタートしました。私もさっそくこの新ジャンルがホールでどのように受け入れられているのか、その目で確かめるべくホールに足を運んできました。(文=ジェイさん@発信する遊技機クリエーター/J-BEAT合同会社代表)。
BT機はノーマルタイプに「プラスアルファの遊技性」を加えることで、これまでノーマル機を打ってきたユーザー層を中心に新たな刺激を提供する、いわば“スパイス”のような存在になるだろうと期待されています。実際に多くホールでBT機は、ノーマル機に近い機種説明でユーザーに提示されていました。
ユーザーの「分かりやすさ」とホールの「伝え方」のギャップ
機種説明のポップや台に添えられた説明書きは、総じてノーマル機を普段打つユーザーには親和性の高い表現が使われていたと感じます。特に、ボーナス単体での獲得枚数に焦点が当てられている点は、ノーマル機に慣れ親しんだ方々にとっては、直感的に理解しやすいと感じています。
しかし、今回注目したのは、その表記がBT機という新ジャンルの特性と必ずしも一致していないケースがあったことです。具体的には、ボーナス獲得枚数に関する以下の3つの表記パターンが混在しており、並べてみたときにユーザーにとって分かりづらい印象を与えかねないと感じました。
1.「BIG枚数 ●●●枚 REG枚数 ●●●枚」
この表記は、最もシンプルな「ボーナス単体それぞれの獲得枚数」を示すパターンです。ノーマル機であればこれで十分なのですが、BT機においては「ボーナスとBTの連動」が醍醐味です。ボーナス単体で見ると、ノーマル機よりも獲得枚数が低めに設定されている機種も少なくありません。例えば『LBジャックポット』がこの表記を採用した場合、「BIG 96枚 REG 96枚」という数字だけが目に入り、BTの仕様を知らないユーザーは「性能が低い台」という印象を持ってしまう可能性があります。これは、BT機が持つポテンシャルを正しく伝えきれていない、いわばミスマッチ運用の一種と言えるかもしれません。
2.「BIG枚数 ●●●枚以上 REG枚数 ●●●枚」
こちらは、「BT突入時の最低保証枚数」で表記をするパターンです。ノーマル機よりも獲得枚数が多いという点が明確に示されるため、ユーザーにとってBT機の「出玉性能の底上げ」が伝わりやすく表記されています。『LBプレミアムうまい棒』のように、BTのループ性能よりも2種類のボーナスをシームレスに繋げて獲得枚数をアップさせるタイプの機種であれば、「BIG 301枚 REG 96枚」といった表記は、現行ノーマル機との差別化を分かりやすく提示する有効な手段だと感じました。
3.「BIG枚数 ●●●枚+BT REG枚数 ●●●枚」
獲得枚数に加えて「BT突入」が明確に添えられた表記パターンです。獲得枚数はボーナス単体の数字となりますが、BTへの突入が明示されている点が非常に分かりやすいと感じました。
個人的に一番お勧めしたいのはこの表記で、BT機という新ジャンルに対して最も汎用性が高く、ユーザーへの伝わりやすさも兼ね備えていると強く感じます。
重要なのは、BT突入条件が明確に伝わることです。BT機ではAT機のように「ボーナスの50%でBT突入」といった抽せん形式は採用できません。BT機は、「Aのボーナスを引いたらBT突入、Bのボーナスを引いたらBT非突入」といったように、ボーナスとBTの関係性が明確にルール化されています。
『LB翔べ!ハーレムエース』が良い例で、この機種は複数のボーナスを搭載していますが、「HB 279枚+BT BB 239枚 RB 107枚」という表記一つで、HB(HAREM BONUS)がBT突入のトリガーであることが一目瞭然で、ユーザーはどのボーナスを引けば、その先の遊技性が広がるのかを瞬時に理解できます。
BT機の未来とホールへの提言
BT機は、短期的な「爆発力」を求めるAT機ユーザーとは異なり、ノーマル機を好むライト層や中高年層にとっての「遊びやすさ」と「程よい射幸性」を追求した新ジャンルです。このカテゴリを今後育成していくにあたりホール側がBT機の特性を正しく理解し、ユーザーに分かりやすい形で情報を提供していく努力が不可欠です。
機種説明のポップ一つとっても、その表現方法によってユーザーの機種に対する印象は大きく変わります。BT機の魅力を最大限に引き出すためにも、今後、各メーカーからリリースされるBT機が、どのような「顔」を持ってホールに並ぶのか、そしてホールがそれをどう「伝える」のか。引き続き、現場からの声と開発者としての視点を持って、この新ジャンルの動向を引き続き追っていきたいと思います。
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◆プロフィール
・ジェイさん@発信する遊技機クリエーター
J-BEAT合同会社代表
発信するプロ遊技機クリエーター兼ライター。過去遊技機メーカー3社で勤務。在籍中に10数機種の遊技機開発に携わる。現在は法人を経営しつつ、フリーのクリエーターとして遊技機開発に従事。また、メーカー所属では出来ない発信、評論活動を行っている。
X(旧Twitter):https://twitter.com/jsan65536