【コラム】サミーの「Withぱち」施策が示す遊技機業界の新たな視点

投稿日:2025年2月4日 更新日:

サミーが1月21日に発表した「Withぱち」は、社員に一定の金額を支給し、2人以上でホールに行き遊技をすることで、社員の遊技経験を増やし、業界の理解を深めることを目的とした取組みです。この施策を通じて、社員同士のコミュニケーションを活性化させるだけでなく、開発に必要な現場の視点を得ることができると期待されています(文=ジェイさん@発信する遊技機クリエーター/J-BEAT合同会社代表)。

このような施策は、遊技機メーカーにおいて決して新しいものではありません。実際、20年以上前から多くのメーカーで実施されており、サミーだけでなく他の遊技機メーカーやホールにおいても類似の施策が行われていました。

しかし、今回サミーがあらためてこの施策をプレスリリースとして発表した背景には、現代の遊技機市場における大きな変化と課題があると考えます。特に注目すべき点を二つ挙げます。

1. ノンユーザー・スリープユーザーへのアプローチ

近年、遊技人口の減少が続くなか、遊技機メーカーがまず手をつけるべきは、自社内のノンユーザーやスリープユーザーの掘り起こしです。「Withぱち」は、一定の金額を支給し、複数人でホールに行くという形を取ることで、普段、遊技機に触れない社員でも参加しやすくなっています。

遊技機開発に携わる人間は、当然、日頃からパチンコ・パチスロをプレイしていると思われがちですが、実際はそうとも限りません。特にバックオフィス部門の社員や、開発スケジュールに追われて市場調査の時間が取れない開発スタッフも少なくありません。加えて、近年の機種は高単価化が進み、開発スタッフでさえも気軽に遊技しづらくなっているのが現実です。

このような状況下で、企業が遊技を促進する施策を打つことは、社員自身の遊技意識を高めるだけでなく、結果的により良い遊技機開発につながる可能性があります。

2. ホール環境の変化を体感する機会

もう一つの重要なポイントは、ホール環境の変化を社員が直接体感できる点です。

ホールの禁煙化、スマートフォンの普及、さらにはスマート遊技機の登場など、ここ数年で遊技環境は大きく変化しました。こうした変化をリアルタイムで把握し、開発に活かすことができるのは、現場を経験した人間ならではの強みとなります。

例えば、スマートフォンを片手に遊技するユーザーの動向、スマート遊技機の操作性、さらにはホールのサービスの在り方など、実際に足を運ぶことで見えてくるものは多いです。これは開発者にとって今後の遊技機の設計に生かすヒントになるだけでなく、ホール関係者にとっても顧客対応や店舗運営の改善策を考える上で有益なフィードバックとなります。

業界全体への波及効果

今回の「Withぱち」は、単にサミー社内の取り組みに留まらず、業界全体への広がりを期待したい施策です。

「うちでもやっている」「うちも始めた」といった形で他メーカーやホール企業が追随し、遊技人口の増加や業界の活性化につながることが期待できます。遊技機メーカーが主体となり、自らの社員を市場へ送り込むことで、よりユーザー視点に立った遊技機開発が促進されます。さらには、メーカーとホールの双方で「現場の声を吸い上げる仕組み」が強化されることで、業界全体の成長につながるのではないでしょうか。

また、この施策が遊技機メーカーだけでなく、ホール関係者や遊技機関連会社にも広がることで、業界全体の連携が深まり、新たな市場創出につながる可能性もあります。例えば、実際開発に携わらない部門の人であっても遊技機開発者と直接意見を交換する場を設けることで、より現場に即した遊技機開発やサービス向上が可能となるでしょう。

さいごに

「Withぱち」は決して目新しい施策ではありませんが、遊技機業界における現状を踏まえると、あらためてその意義が再評価されるべき取組みです。

遊技機メーカーが、自社のノンユーザー・スリープユーザーに目を向けることで、市場理解を深めるとともに、新たな遊技機開発のヒントを得る機会を生み出します。加えて、ホール環境の変化を現場で体感することにより、メーカーとホール双方のサービス向上につながる可能性があります。

サミー社の「Withぱち」が業界全体へと波及し、遊技機メーカーだけでなく、ホール関係者や遊技機関連会社が一体となって業界の未来を築くきっかけとなることを期待します。

遊技するサミーの里見治紀代表取締役会長 CEO(左)

◆プロフィール
ジェイさん@発信する遊技機クリエーター
J-BEAT合同会社代表

発信するプロ遊技機クリエーター兼ライター。過去遊技機メーカー3社で勤務。在籍中に10数機種の遊技機開発に携わる。現在は法人を経営しつつ、フリーのクリエーターとして遊技機開発に従事。また、メーカー所属では出来ない発信、評論活動を行っている。
X(旧Twitter):https://twitter.com/jsan65536

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