失敗しない売り場プロモーション㊲(文=野島崇範/株式会社プラスアルファ専務取締役)
人は欲求のないものに無関心
あなたのお店では広告をどのように依頼または作成していますか?
広告は顧客欲求に適合しなければ伝わりません。人間は欲求のあるものには反応しますが、欲求のないものに対しては無関心です。
赤色のコートを着ていた人に何人出会いましたか? または赤色の自動車に何台出合いましたか? と質問してもほとんどの人が分からないはずです。欲求がなければ我々は反応せず、記憶にすら残らないのです。覚えている人は服装や自動車に強い興味があったり、または赤色が好きな方です。顧客欲求を無視した情報発信は、赤色のコートや自動車と同じ現象を引き起こします。
例えば、スマスロの『パチスロからくりサーカス』の広告を作成する時はどのような手順を踏めば良いのでしょうか? 毎回、同じようなデザインを量産していませんか? 現在、ほとんどのパチンコ店のデザインは若干の差異はありながらも、基本的なデザイン構造はスペック(大当り出玉・継続率・純増など)を中心に広告を作成しています。
本当に、その広告はお客様の欲求に適合しているのでしょうか?
まず広告作成において大切なことは「だれ」に伝えるのか、ということです。『パチスロからくりサーカス』の広告の反応を得るためには、基本的には『パチスロからくりサーカス』に興味のある人に向けて発信する必要があります。情報を受け取るべき対象が誰であるのかを明確にすることが、伝達力を高めるための基本です。
例えば、『パチスロからくりサーカス』に興味のある人は、どのキャラクターに興味があるのでしょうか? 顧客欲求は検索に現れます。調べるとフェイスレスが最も多いです(下の図1参照)。現在ほとんどのパチンコ店が主役を前面に打ち出して情報発信を行っています。顧客欲求と異なるから伝わらないのです。
『パチスロからくりサーカス』の筐体パネルを見るとメーカーの開発に関してはマーケティングがしっかり施されていることが見て取れます。
弊社の運営している「デザイン定期便」という遊技機のポスターのダウンロードサービスも顧客欲求を科学的に分析して制作しています。
キャラクター選択を疎かにしない
ただし、前回のコラムで解説したように、顧客欲求は変化します。
例えば、スマスロの『Re:ゼロ2』を伝える場合、どのキャラクターを選択すれば良いでしょうか? ご自身の好みで適当にキャラクターを選んではいけません。繰り返しますが、お客様の顧客欲求を刺激することが大切です。これまではレムというキャラクターが最も検索数が多かったため、リゼロ好きなお客様の顧客欲求を刺激するためにはレムというキャラクターを選択すべきでした。
しかし、直近10月以降の動きを見ると急激にエミリアというキャラクターの検索数が伸びています。だから、顧客欲求の変化に応じて選択するキャラクターに変更して情報発信を行うことをお勧めします。
お客様へ強化また育成機種を伝えるために、しっかり時間を掛けて広告のキャラクターを選定します。キャラクター選定を疎かにするかしないかだけでもお客様に伝わる度合いは大きく変わります。
営業戦略が悪かったと諦めるのではなく、その営業戦略がただお客様に伝わっていなかったのではないかと、まずは広告戦略や広告戦術を疑いませんか?
今回のコラムでは広告の内容まで語るための紙面が足りなかったため、割愛させて頂きます。広告の内容も顧客欲求を分析して、どの言葉を使用すれば良いのか選定します。広告はお客様へ店舗魅力を伝えることが目的であるため、顧客欲求や顧客感情に寄り添うことが重要です。
【お知らせ】
年始年末のデザインと言えばデザイン定期便
https://www.uriba-design.com/
◆プロフィール
・野島崇範(のじま たかのり)
1983年三重県生まれ。北海道教育大学卒。全国のホールを年間1,000店舗以上調査し、その中から繁盛店に共通する法則を見つけ出し「伝達力」と定義。「伝達力」調査の分析に基づき、お客様立場の徹底と継続の重要性を、支援先ホールの全スタッフと共有する。また、売り場ランチェスター戦略の第一人者として、科学的に売り場の支援を実施。売り場の書籍「あなたの売り場、太っていませんか?」を発売。