現メダル機の6.5号機は有利区間ゲーム数の上限が4,000ゲームに設定されています。今後こちらの有利区間ゲーム数の上限値が緩和されるとどういった機械が出てくるのか開発目線で解説したいと思います(文=ジェイさん@発信する遊技機クリエーター/J-BEAT合同会社代表)。
まず、結論から申し上げますと「射幸性は上がらない」という事です。
上記は直近の内規の緩和を簡易的にまとめたものですが、これまでは緩和=スペック性能アップ(射幸性アップ)という流れでした。
理論上は有利区間ゲーム数が伸びればスペック性能も高く設計する事が可能です。特に分かりやすい指標は出玉率と平均MY(スランプグラフの上下幅の平均値)です。最近のスマスロでは114.9%を公表する機種が多く登場し、高コイン単価で高MYの荒い機種が多くなっています。
当然これらからも分かるように、有利区間ゲーム数の上限を上げれば現行のメダル機よりスペック性能(射幸性)を高める事は可能です。
一方で有利区間ゲーム数だけでみた場合、無制限であるスマスロがもっとも高く設計できますので、有利区間ゲーム数の緩和は既に限界まで到達しています。つまり、今後ゲーム数の上限が上がった場合でもスペック性能ではスマスロを超える性能にはなり得ません。スペック性能(射幸性)の向上を目的に設計するのであればスマスロで設計するのが最も自然な形であるという事です。
最新のプレイヤー調査(日本遊技機関連事業協会)において、スマスロを打つ理由の最上位で「一撃の獲得枚数に期待ができる感じがした(65.4%)」と挙げられているように、現在のパチスロ市場において「射幸性」という部分では6号機初期と比べても格段に不満は少なくなっています。
メダル機は現在も有利区間ゲーム数の上限があるため、スマスロと同等の射幸性は出せないわけですが、打ち手の不満はそこにはありません。スマスロを打たない(今後遊ばない)と回答している打ち手の最たる理由の「ボーナス・AT中が面白くなかった(38.3%)」がスマスロの普及とともに上がっている事からも分かるように、ゲーム性を重視している打ち手も多くいて、今後求められるのはこちらの改善です。
よって、有利区間ゲーム数の上限が上がったからといって、射幸性を重視して機械設計をすれば現行の打ち手のニーズとかけ離れ、これによる射幸性の向上はおきないと考えています。つまり有利区間ゲーム数の上限が上がるメダル機に求められるのは射幸性ではなく、「ゲーム性の向上」だという事です。
現在遊技機市場においても多様なニーズに応える事が求められています。制限が緩和された事でよりさまざまなニーズに応えられる遊技機が登場する事に期待してください。各ホール様におかれましても、自店舗のニーズに合わせて機械選定していただければと思います。
◆プロフィール
・ジェイさん@発信する遊技機クリエーター
J-BEAT合同会社代表
発信するプロ遊技機クリエーター兼ライター。過去遊技機メーカー3社で勤務。在籍中に10数機種の遊技機開発に携わる。現在は法人を経営しつつ、フリーのクリエーターとして遊技機開発に従事。また、メーカー所属では出来ない発信、評論活動を行っている。
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