バランス型といわれる機種が稼働を牽引する中、同時に設定の入れ方も重要になっています。漠然と設定を入れるのではなく、稼働向上に繋がる論理的な設定投入手法について考察してみましょう(文=三木 貴史/エスサポート代表取締役)。
設定はお客様との駆け引き・心理戦
エスサポートでは創業以来15年以上、全国の様々なホール様の設定配分をチェックし、改善点を伝え、業績向上の支援をしてきました。各機種によって稼働向上のために使うべき設定配分は、その機種特性によってある程度決まっています。
しかし、各機種の設定配分が、複数店舗を持つチェーン店でも、全く共有・統一ができておらず、各店の設定担当者の裁量に任されていることが実は多いのではないでしょうか。
ノーマルAタイプ全盛期ならば、設定が上がれば各確率が段階的に軽くなり、出率も上がる単純なスペックだったため、出率に応じて設定を使い分けるだけで良く、各店によって設定配分はバラバラ。チェーン店でも設定配分を統一する必要もなかったでしょう。
しかし、今は、奇数示唆、偶数示唆、高設定示唆や、レア役の確率、G数解除テーブル、連チャンテーブルなど、設定1~6までそれぞれ特徴的な挙動が見て取れます。各機種に特有の効果的な設定配分があるので、機種特性を把握し効果的な設定を考えなければ、稼働はなかなか上がりません。
例えば『アイムジャグラーEX』の設定6は使用する必要がほとんどなかったり、『スマスロ北斗の拳』も設定5を使う必要があまり無かったりと、それぞれの機種には、それぞれ有効な設定があります。
解析情報を勉強し、実際に各店でその設定を使用して検証や分析を行えば、その法人の設定配分ノウハウとしてマニュアル化することは可能でしょう。実際に、各機種の設定配分がマニュアル化されている法人も年々、増えてきています。
しかし、どの台に高設定を投入して、どのタイミングで設定を下げるのか、ホールコンによる管理や数値管理だけでは、マニュアル化できない設定配分の上げ下げがあります。それは、お客様との日々の駆け引きや心理戦です。
設定上げ下げの論理的な根拠は?
『アイムEX』を例に、当日の結果からお客様心理を踏まえて、次の日の設定をどうするかを考えてみましょう。
例①/高設定でしっかりと出た台
(3200枚赤字 BIG36回、REG35回、設定5)
翌日に最も敬遠されがちですが、「しっかりと出た台」が翌日に稼働しないホールは厳しいといえます。このような台はできれば据え置きの設定5で、翌日につなげていくのが理想です。連日出すことで偶然ではなく、ホール側が出すつもりであることがはっきりとお客様に伝わります。
例②/高設定ではないけど出た台
(3200枚赤字 BIG36回、REG25回、設定3)
データだけ見ると、出てはいますが高設定とは確信できないようなBR比率です。この場合は、翌日は設定5に上げるべきです。翌日に高設定らしい出方をすれば「前日も高設定でそれを据え置いた」と思ってもらえる可能性が高まります。その結果、本当は設定3だった前日の設定が5に化けるイメージです。
例③/高設定と気付いているが出なかった台
(1000枚黒字 BIG20回、REG33回、設定5)
REGが先行して高設定っぽいのに勝てなかった良くあるパターンです。こういう台は、翌日狙ってくるお客様が多く、稼働する傾向にあります。狙われやすい台ですが、信用のために据え置くしかないでしょう。
前日に打っていたお客様とは別のお客様が着席する可能性も高いのですが、据え置いたその台がきっちり出て、前日に打っていたお客様がそれを見れば「やっぱり昨日も高設定だった、店は据え置いてくれた」と自店に対する好感度は上がるものです。
例④/高設定なのに稼働しなかった台
(300枚黒字 BIG5回、REG3回、設定5)
こういう台を据え置くホールが実は多いようです。しかし、この台はお客様から見れば「低設定台」か「稼働していない台」としか思われません。設定を下げてしまっても問題は特段ないでしょう。
では、「出た台を翌日も再度出す」ことは何日続ければいいのでしょうか? 出続ければ、ずっと高設定を投入するべきなのでしょうか? 基本的には、「2日連続」までで問題ないと思います。もちろん3日連続、4日連続で出すこともありますが、連続性にこだわりすぎると、どんどん高設定台が増えすぎてしまい、フォローすべき赤字台の設定を上げることができなくなってしまうため、基本的には2日連続までで大丈夫です。
機種計画に囚われすぎない
月間で機種計画をきっちり組んでいて、その順守を求められるホールでは、上述した「さらに出す」調整は難しいです。例えば、『アイムEX』の月間玉利が20銭と計画されていて、それを確実に守らなければならない場合を考えてみましょう。
こういう機種計画を厳守するホールでは、ここ2~3日予定以上に出過ぎて、進捗の現状が玉利10銭になってしまっているなら、明日から2~3日は利益重視の調整をせざるをえないでしょう。せっかく稼働が上がってきている状況でも、機種計画を順守するために設定を下げざるをえないからです。このように機種計画を順守する弊害は多いといえます。
事前の月間機種計画は、各機種の戦略を考えるうえで必要なことですが、その機種計画を守ることが目的ではなく、稼働向上が目的だということを忘れてはいけません。機種計画はあくまで目安で、パチスロ全体で、月間で稼働目標と利益目標を達成できていればOKという柔軟な考え方が必要で、それが許される社内環境を設定担当者のためにも用意することが求められるのではないでしょうか。
スマスロ比率は上がっていくのか?
スマスロの比率はどうなっていくのかという質問を多くいただきます。最近のスマスロは話題性ではなく、機種本来のゲーム性、スペックがより吟味されるようになりました。また、期待よりも稼働しない機種も増えてきました。年末までの販売予定機種を見ても、メインをはれる機種が中々見当たらないので、「しばらくはスマスロ比率を上げられない」というのが私の見立てです。
◆プロフィール
三木 貴史
㈱エスサポート代表取締役
1972年生まれ。97年中央大学商学部卒業後、パチスロ専門店(神奈川県42台)にて勤務。01年〜06年グループ4店舗を統括部長として指揮、在職中より他店舗のコンサルティングにも携わる。この期間、全ての店舗で稼働平均15,000枚を継続。07年に独立し、パチンコ・パチスロホール運営コンサルタントとしてエスサポートを設立。“ホールの知恵袋”として全国どこにでも出張中。社内外を問わず行うセミナーも好評。