【コラム】回らなさすぎる“ぱちんこ”は大問題なのか?

投稿日:2023年6月26日 更新日:

先日、㈱平和の公式Twitterにて遊技動向アンケートが公表されましたが、その結果を見て一部のSNSで意見が大いに交わされていましたので、一開発者の私の方からも言及をしたいと思います(文=荒井孝太/チャンスメイト代表取締役)。

“ぱちんこ”で不満を感じる部分「80%以上」の方が回らないと回答

有効回答者数が1,745名と、統計調査としては確からしい数字となりますが、およそ8割の人がぱちんこが回らないことに不満を感じているとのことです。確かに最近の機械はヘソ1個賞球が主流となったこともあり、1,000円で15回前後しか回らないことが普通になってきました。

それにスマートパチンコは大当たり確率が更に深くなったこともあり、回らないことによるストレスが近年で更に拡大していっているように感じます。

おそらく、アンケートに回答された方々も、このコラムを読んでいる方々も同様の感想を持つ方々が多いのではないでしょうか。かくいう私も、世間一般ではぱちんこを良く打つ方だとは思いますが、ここ最近は回らなさすぎて辟易しているのは事実です。

1,000円スタートが15回前後ですと、保留が溜まることは無く打ちっぱなしになる時間も長く、ここ最近のリーチ確率なども原因ではありますが、1万円の消化スピードがあまりにも早くて「もう1万円がなくなった…」とその時点で意気消沈していることも珍しくありません。

回れば良いのか?

では、回るぱちんこを出せばよいのか?と言われれば、それほど単純な話でもないような気がいたします。例えば直近でいっても通常時から電チューが開放し変動をアシストしてくれる『Pまわるん大海物語4スペシャルwithアグネスラム』(2021年8月導入開始)や、ヘソの広さが従来の約1.5倍もある超ドデカスタートと、通常時から保留を8個貯めることができるエイトチャンスシステム、7個以上の保留を高速消化する速ZONEを搭載した『P牙狼MUSEUM』(2022年9月導入開始)など、従来機よりもより「回る」を意識した機械が過去幾度となく出ていますが、ユーザーから支持が大きく集まることもありませんでした。

他にも、SANKYOがヘソ5個賞球に拘る「ANSHIN5」を宣言(2016年1月)したこともあり、こちらもベース値が高めで1,000円回転数に拘る機種開発を進めておりましたが、残念ながら定着しませんでした。

これはベース値が上がることで、確かに回転数はあがりますが、他方でスペックを比較した場合に出玉性能という部分で見劣りしてしまう部分が出てきます。これは投資金額(Bサ)に対して出玉(TY)はある程度決まっているため、投資金額が控えめになりやすい回るスペックと言うのは出玉性能面で劣ってしまうのは仕方がない部分ではあります。

それらが1つの要因として、回るぱちんこスペックが今まで大きく支持されることがなかったと思われますが、出玉性能や営業形態による射幸性にもある種の限界を迎えているような気もいたします。

可処分所得の低下や他の娯楽や余暇などの産業が大幅に増加したことなど、語られることが多い外的要因などもそうですが、パチスロにおいても一時は等価交換営業をするホールが多かったですが、今は5.5枚交換が主流となっています。これは当然、一物一価の問題もありますが、5枚交換ではあまりにも遊べない、設定を入れることができないといったスペックがキツくなりすぎるといった側面もあろうかと思います。

これは、ここ最近のぱちんこの回らない問題と根は同様で、あまりにも出玉性能を高めすぎた故の弊害が今噴出しているような気がいたします。また他方で、回りさえすればOKという考えで機種を開発しても良くないことは過去が証明しています。

「回らない」というのは不満であり、その不満を解消したからと言ってそれが「プラス」になるのではなく「ストレスが無くなるだけ」といったことは教訓として機種開発を行わないといけないということを自戒の意味も込めて書きたいと思います。

◆プロフィール
荒井孝太
㈱チャンスメイト 代表取締役

パチンコメーカー営業、開発を歴任後、遊技機開発会社チャンスメイト(https://chancemate.jp/)を設立。パチンコ業界をより良く、もっと面白くするために、遊技機開発業務の傍ら、ホール向け勉強会や全国ホール団体等の講演会業務など広く引き受ける。

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