失敗しない売り場プロモーション⑬(文=野島崇範/株式会社プラスアルファ専務取締役)
慎重に消費行動を選択する時代の情報発信とは!?
最新台を導入する前に、導入機種の大当り演出のイメージをお客様へ情報発信していますか?
所得が伸び悩む時代において所得が伸びる時代と比較するとお客様の1,000円の価値が高まっています。そのため、以前よりも1,000円を使用する時、慎重に消費行動を選択するようになりました。
では、この時代の情報発信のあるべき姿とはどのようなものでしょうか?
それはシン・エヴァンゲリオン劇場版や鬼滅の刃の映画の興業成績が示すように、お客様へ事前に情報公開するということです。大切な1,000円を使って失敗したくないという欲求を満たすために、どのような価値が提供されるのか、事前に強烈にイメージして頂くことが大切になりました。その解決策のひとつが本編を公開するという広告手法です。
例えば、シン・エヴァンゲリオン劇場版はAmazon Prime Videoで冒頭約12分の映像を公開直前から披露しました。映画の「鬼滅の刃 無限列車編」も原作と微差はありながらも基本ストーリーは漫画とほぼ同じまま進行しました。これまでのドラゴンボールやワンピースは漫画の原作とは大きく異なる映画を提供していました。鬼滅の刃はその路線から大きく方向転換した作品でした。
この流れは定石となりつつあります。2022年11月11日に公開された新海誠監督の最新作「すずめの戸締まり」が動員561万人、興行収入75億9,500万円を突破(2022年12月6日)。このすずめの戸締りも劇場版エヴァと同様に冒頭12分の映像を公開しております。
しかし、上記で話していることと矛盾する現象が起こりました。2022年12月3日に公開されたスラムダンクの劇場版アニメ「THE FIRST SLAM DUNK」は土日のたった2日間で約84万7,000人を動員して、興行収入が約12億9600万円でした。THE FIRST SLAM DUNKは公開までほぼ情報が公開されず、公開1ヶ月前に出演キャストやストーリーが明かされていない異例の事態だと言われました。ネット上では「山王戦やるのか?」「あらすじもだけど、キャストだけでも教えて!」などの声が続出。そして、声優の新キャストを発表した瞬間に大炎上しました。
ここ最近の定石である本編公開はなく、情報統制したにも関わらず、なぜ動員数や興業収入など初日 から好調だったのでしょうか?
それは単純な話で、過去から信用を熟成させ続けているからです。圧倒的な信用さえあれば、本編公開すら必要ないのです。重要なことはお客様の大切な1,000円を使う時に失敗するはずがないと信じてもらうことです。そのため、井上雄彦氏がTHE FIRST SLAM DUNKの原作・脚本・監督を務めることは十分に信用に値するからこそ、スラムダンクの根強いファン層を中心に集客できたのです。
宮崎駿監督のスタジオジブリの作品も同様に情報公開しなくても集客できるのは、宮崎駿監督の長年積み上げてきた信用があるからです。そろそろ新海誠監督も情報公開しなくても十分に集客できるはずです。なぜなら、2016年公開の『君の名は。』は歴史的な大ヒットで興業収入250億円超、2019年公開の『天気の子』は140億円超と驚異の数字を示して、今回のすずめの戸締りも100億円を超える推移であるため、信用を勝ち取ったと言えるのではないでしょうか。
パチンコ店側が情報公開を仕掛ける
では、話をパチンコに戻しますが、パチンコ店はお客様へ大当り後の映像を発信していますか? お客様自身が遊技機メーカーの発信している試打動画を見れば良いのではないかと言われることがありますが、これは正しい情報発信の在り方なのでしょうか?
確かにイノベーター層(情報感度の高いお客様)は自ら調べて視聴するかもしれません。しかし、多くのお客様に興味を持って頂くためには、イノベーター層以外のお客様へ大当り後の映像をパチンコ店側が意図的にご覧頂く仕掛けをする必要があると私は考えます。メーカーの提供している試打動画は長いため興味の薄いお客様は見ません。大当り後の映像を切り抜き提供する必要があります。
そのため、展示会など事前に遊技機が試打できる時にただ遊技して終わるのではなく、試打動画を撮影して、大当り中の演出をお客様へ事前に伝達する素材を集めることが必要不可欠な時代となりました。来年導入予定のスマスロ北斗の拳などエンドユーザーが期待している遊技機は、徹底的に情報公開することが大切です。
当社のデザイン定期便では7揃いの試打映像とスマスロのデザインを組み合わせたものを提供しています。ご参考にしてください。
【お知らせ】
お客様に刺さるちょっと変わったスマスロ広告のデザインが生まれる理由
https://www.youtube.com/watch?v=eQVzaEmL2x4
スマスロのデザインといえばデザイン定期便
https://www.uriba-design.com/
◆プロフィール
・野島崇範(のじま たかのり)
1983年三重県生まれ。北海道教育大学卒。全国のホールを年間1,000店舗以上調査し、その中から繁盛店に共通する法則を見つけ出し「伝達力」と定義。「伝達力」調査の分析に基づき、お客様立場の徹底と継続の重要性を、支援先ホールの全スタッフと共有する。また、売り場ランチェスター戦略の第一人者として、科学的に売り場の支援を実施。売り場の書籍「あなたの売り場、太っていませんか?」を発売。