【コラム】なぜ広報担当は自分が気づかぬうちに「性的消費」に走るのか〜fromユキペディア

投稿日:2020年11月4日 更新日:

【永澤有希のユキペディア】
本誌「間違いだらけの女性活用」連載中、永澤有希氏の新連載がwebでスタート!組織人事コンサルタントとして「人がすぐ辞める企業を、優秀で強い組織に激変」させるなど多数の実績を持ち、予防医学指導士・メイクアーティストなどの資格も保持し「ホールスタッフを輝かせる事が私の使命」と語る永澤氏が縦横無尽に切り込みます!

こんにちは、ミチスケジャパン永澤有希です。

昨日、11月3日の文化の日、ネットが「性的消費」というキーワードでにわかに盛り上がったので
「なにごと?」
と思って見てみると、肌着メーカーA社が「11月2日はタイツの日、ラブタイツキャンペーン」と銘打ち、
「タイツをお題にして、脚を強調した女性の性的なイラストを、多数掲載した」
というツイッターにたどり着きました。

この画像は同社の通販サイト(引用元:https://www.atsugi-styleup.jp/shop/default.aspx)から。この画像は炎上対象ではありません

ちなみにタイツの日とは、大阪にあるM&M Socks(エムアンドエムソックス)が2009年に、11月2日を「タイツの日」と定め、認定されたことが始まりです。タイツが数字の11と似ていて、2つがペアであること、また、寒くなる11月は、女性がタイツでおしゃれをするベストシーズンであることが由来…ということです。

「脚を強調した女性のイラストを多数掲載した」という文言を見て「タイツと女性のイラストが性的消費につながるなんて大袈裟?」と思ったのですが、実際に見たそれらには、たしかに「エロ」も散見されました。

私が好きなコラムニストの小田嶋隆さんも、自身のTwitterに
「例のタイツの騒動、TL経由で概要を把握した気でいたオレは甘かった。削除済みの画像を見に行って驚愕した。自分の予断の甘さに落胆している。これは担当者の勇み足とかで説明のつく絵柄ではない。一目瞭然のアウト案件です。どうしてこんなものが掲載されてしまったのか。理解を超えている」
と書かれています。

イラストに罪はない

イラストの一例として、
メイド服で豊かなバストを強調した女子が、ミニスカートをめくって「好きなだけ見てもいいんですよ」と顔を赤らめ、黒タイツを見せる。
イラストとしては完成されているし、典型的なジャパニーズアートで可愛く仕上がっています。
ただ、それを見た「購買対象」である女性が「このイラスト可愛いから、私もA社の黒タイツを買おう!」と思うかといえば、答えは「NO」でしょう。

実際、イラスト女子と同年代の20代女子に、印象を聞いたところ、
「スカートをめくって男を誘惑するなんて、同じ女として気持ち悪い。イラストとはいえ、口が裂けても『好きなだけ見てもいいんですよ』なんて言ってほしくないですね、そういうのを見て、女性に慣れてない男性ほど勘違いするんですよ」
という答えが返ってきました。

A社では、膨大な数のイラストレーターさんに「タイツやストッキングを履いた女子」のイラストを依頼したようで、その表現方法は様々でした(現在、批判を受けてA社のTwitterからイラストは削除されています)。

例えば、二人の女子高生が雪の上に寝転んで、裏起毛の黒タイツを着用しているイラスト。それは
「うんうん、寒い地域でも、裏起毛のあったかいタイツがあれば安心よね」
と共感できます。

しかし夏の海辺を、めちゃくちゃ短いショートパンツで、サンダルにストッキングを履いている女子のイラストには
「浜辺でストッキングはいてサンダル履く女性なんて居ないでしょ、びしょびしょのストッキングが肌に張り付いて気持ち悪いし、砂が入るし…。海辺では素足にサンダルが鉄則!」
と、その非現実さに思わず突っ込んでしまうのです(男性だって、浜辺は素足にサンダルで歩きますよね?)。

ただ、消費者だって
「イラストはあくまでもイラストである」
そして
「可愛いイラストであり、イラストレーターさんに罪はない」
ということは、分かっているのです。

いけなかったのは、A社のTwitter担当者(よく、「中の人」と表現しますよね、Twitterの「あちらがわ」に居る、という意識でしょうか)が、
「様々なイラストレーターさんに、A社商品を着用した女の子を描いていただきました!朝・昼・夜のシチュエーションで女性の脚もとを彩るタイツ・ストッキングのイラストをお楽しみください!」
という意気込みでスタートしたこと。

この文言だけでも「女性のタイツをお楽しみください、って、どういうこと?」と、世の女子をカチンとさせたのですが、
「素敵なイラストばかりで、動悸がおさまらないA社、中の人」
と書いてしまったことで、
「中の人って男性!?動悸がおさまらないなんて、完全に性的な対象として『タイツと女性』を見てるじゃん。気持ち悪い!」
と相成り、炎上してしまったのです。

子供向け玩具メーカーでも「性的消費」

つい先月も、○○ちゃん人形で有名な玩具メーカーのTwitter担当者が
「#個人情報を勝手に暴露します。ある筋から入手した小学五年生の女の子の個人情報を暴露しちゃいますね!」

と言って、○○ちゃん人形が公称している誕生日や身長、体重を書いたり、
「久しぶりに電話したら、昨夜はクリームシチュー食べたって教えてくれました。こんなオジサンにも優しい○○ちゃん…」

とか
○○ちゃん人形の着せ替えである「かわいいパンツセット」の写真をアップして「ぱ!ん!つ! ぱ!ん!つ!」という文言とともに、昔流行った2ちゃんねるでおなじみのアスキーアート(AA)のモナーが「フレー!フレー!」と表現しているものを掲載したり。

一連のTwitterを批判されると、その返信として
「だってー!○○ちゃんのHPがー!ぼくじゃないもんー!」
と言ってみたり、誰が見ても気持ち悪さ全開のものでした。

可愛いお人形。同社通販サイト(引用元:https://licca.takaratomy.co.jp/products/doll/index.html)から

その後、玩具メーカーは
「表現に至らぬ点がございましたことを深くお詫びします」
と言って当該Twitterを削除しましたが、保護者たちからは
「表現が至らないんじゃなくて、子どもを性的に見ることをなんとも思わない企業姿勢が問題」
「子どもの性被害を軽視している」
と、手厳しく、かつ、的確な指摘を受けています。

しかも、この玩具メーカーは昨年の株主総会において、既にTwitterの危うさを指摘されていたのです。

「トランスフォーマーを『見る抗うつ剤』とツイートするなど危なっかしいところもあり、暴走してしまうのではと懸念している」
という株主からの質問に対し
「懸念が出たことは真摯に受け止める、ツイッターによる広報は重要で、これからも創意工夫していく」
と回答しています。

要するに「予兆はあったのに、社内で制止できなかった」のです。
結果、株主の指摘通り「暴走」し、世間から「子どもを性的消費している」と糾弾されました。

広報担当者の性的消費を防ぐために

今はどの業界も、インスタグラムやフェイスブックなどのSNSを広報手段として使っています。

それぞれのSNSには特徴があり、インスタグラムは主に「綺麗な写真」で女性ウケ(使っている人も女性が多い)がメインのようです。ですから、コスメや料理などの投稿が多いのも、うなずけます。

Twitterは、匿名性や投稿の簡便さもあり、「気軽に」「ノリノリで」といった側面があるようです。男性ユーザーが多いのも特徴です。

企業がノリノリの投稿をすると、消費者も面白がって「お堅いと思っていた企業が、こんなにくだけたツイートをしてくれるなんて!」とある種の感動を覚え、フォロワーが増えたり、リツイートで拡散されたりと、どんどん認知度が上がります。私見ですが、企業のTwitter投稿者が自身を「中の人」と表現するのは、心のどこかに「世間を操っている」という上目線があるように感じます。それがエスカレートすると、知らず識らずに「驕り」に繋がるのではないでしょうか。

「驕り」。

だから今回炎上したタイツメーカーのTwitter担当者も、企業を代表していることを忘れ、
「素敵なイラストばかりで、動悸がおさまらない中の人」などと、
「自身の感想」、を書いてしまうのです。

おそらく多くの男性は「女性をエロスの対象」として見ているはずで、男性として当然のことでしょう。

ただ、それはあくまで「プライベート」に限ったことで、公の場で「男の欲望」を出すことがNGなのは、分かりきったことです(昔在籍していたコンサル企業で男性講師が、ある企業様の研修中に、ホワイトボードに「部下への欲求」と板書すべきところを、うっかり「部下への欲望」と書いてしまい、同行していた講師がそっと修正するという一件がありましたが、それも知らず識らずに自分の願望が出てしまったようです、ご自分でも「僕、性欲強いの」と言っていたぐらいなので)。

気軽に投稿できるTwitterだからこそ、企業としては、各店舗のTwitter担当者に「企業を代表していることを忘れないでね!」という意識付けを行うことが重要です。
個人としての暴走を防ぐことが、最近勃発している「性的消費」を防ぐことに繋がるのでは、と感じます。

ちなみに「性的消費」という言葉は耳慣れないかもしれませんし、解釈も様々ですが、私は「性的に見ることで、対象者の心や精神を消耗させてしまうこと」だと思います。
もちろん、女性だけでなく、男性でも子どもでも、誰でも「性的消費」の対象になりえます。

ふー!昨日のことを一気に書いたので、ちょっと疲れました。

それではまた、ユキペディアでお会いしましょう♪

◆著者プロフィール
永澤有希(ながさわ ゆき)
㈱ミチスケジャパン 研修講師・組織人事コンサルタント
コンサル企業、パチンコ企業を経て現職。経営者の気持ちもスタッフ心理も理解できる唯一のコンサルタント。厚労省推進PA選出など、採用教育、組織作り全般で成果を上げ、評価の厳しい創業者からも「永澤くんのお陰で組織が変わった、貢献度は大きい」の言葉を貰う。業界特有のハラス問題も精通しハラスメント防止研修も多数担当。現場経験から「業界に必要」と感じるものはジャンル問わず勉強を欠かさず、メイクアーティストや予防医学指導士、防火防災士などの資格取得。企業および遊技業協同組合等の講演も多数担当。
研修(接遇・管理者研修・新人研修・新店研修・女性活用・ハラスメント研修ほか)および講演の問合せはMail info@michisuke.com
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