お客様の声に応えることは、ホール経営における永遠のテーマです。そんななか、注目を集めるのが「バーチャル店長」と「チャットボット」。AIを活用した新しい接客の可能性を探っていきましょう。
令和時代のパチンコ業界における最大の課題は何でしょうか。それは「お客様のニーズが見えにくい」という点ではないでしょうか。実際、今夏グランドオープンした店舗では、次のような声が寄せられました。
・駐輪場の喫煙所廃止が分かりにくい。
・タバコ交換の終了が周知されていない。
・Wi-Fiがつながりにくく速度も遅い。
・キャリアの電波が弱い。
・自動販売機の飲料がぬるい。
・隣のお客様が座席を占有し、一般客が 利用できなかった。
・使い捨ておしぼりの設置を希望。
こうした細かな要望や不満に加え、営業時間や休憩方法、精算場所といった基本的な質問から、迷惑客への対応、空調の調整、トラブルの報告まで、現場では日々さまざまな声が寄せられています。これまではスタッフが一つひとつ応じてきましたが、人件費の高騰や収益環境の悪化により、従来のような人的対応を続けるのは難しくなっています。
AIを活用した
新しい「接客の窓口」
そこで注目されているのがAIサービスです。今回のテーマである「バーチャル店長」と「チャットボット」は、単なる流行語ではなく、今後のホール運営に欠かせない仕組みとなる可能性を秘めています。これらは24時間休まず、一定水準で感情に左右されずに応対できるのが強みです。特に若い世代は直接スタッフに苦情を伝えるより、SNSで発信する傾向が強いため、スマホやチャットで受け止める仕組みは新しい「接客の窓口」となり得ます。
一方、無人化の流れの中で長年のスタッフが「不要」とされるのは望ましいことではありません。むしろ経験や知見をAIに蓄積し、「バーチャル店長の中の人」として活躍いただくことで、教育ツールとしても機能させることができます。営業時間や店舗ルール、クレーム対応事例を記録すれば、アルバイトや社員が日常的に学べる教材として役立ちます。
そして、AIの活用は接客だけにとどまりません。お客様が遊技機を選ぶ仕組みにも新しい可能性をもたらします。従来は「はまり具合」や「出玉状況」といった直感的な判断が中心でしたが、AIを組み込んだチャットボットがあれば、「3日間大当たりが出ていない台は?」「1週間一度も出ていない台は?」「昨年7月7日に最も出ていた台は?」といった高度な問いかけにも即座に答えることができます。まさに会話の延長でデータと触れ合える世界が広がるのです。
人間にしかできない対応と、AIに任せられる領域を切り分けること。これがホール運営の最適化につながります。バーチャル店長やチャットボットは、そのための大きな一歩であり、業界の未来を支える可能性を秘めているのです。
◆プロフィール
髙橋和輝
株式会社ピーメディアジャパン代表取締役。大前研一ビジネススクール出身。18歳から現場一筋で、ホール企業勤務を経て、コンサルタントとして独立。業界初のホール企業向けサブスクサービスを12年運営。現在はパチンコ特化型BtoBプラットフォームを展開(2024年取引額約6.5億円)し、ホール営業×AIを開発中。